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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
その石段、通るべからず
「しかも、田舎の人って、線引きされた側も、あまり抗わないですよね。上の人たちも、諦めて、受け入れていたのか。でも、だから長い間、差別が続いたんだと思います」
織田村は、今年の春まで、東京で暮らしていた都会っ子だ。田舎独特の雰囲気には、思うところがあるのだろう。
(ここまでが前回)
「なかなか的を射た見解じゃの」
同時に、胸に応える言葉だった。だが、矢儀は、沈む己の気持ちからは目を背け、平静な声で続ける。
「たぶん、未遠じゃあ、上に対する線引きは、常識なんじゃろ。じゃけぇ、上へ通じる石段は、禁忌になったのかもしれん」
再び、部室内に物憂い沈黙が落ちる。
雨音に混ざって、運動部の威勢の良い掛け声が聞こえて来た。体育館の中は、ずいぶんと賑わっているようだ。
「祟りがある故の、禁忌ではなかった、と?」
織田村が、眉根を寄せて訝る。
「祟りは、人が作るものだ」と、矢儀は答えた。
織田村は、ますます難しい顔になる。
矢儀は、しめたとばかりに、ほくそ笑んだ。
「もっと、知りたくなったじゃろ?」と、密かな勝利感を持って織田村に問う。イエスの返答を前提に、矢儀は、さっさと話を進める。
「んじゃ、明日は臨時の部活動日にするけぇ。風邪引くなよ」
織田村が、悔しそうに唇を噛む。が、反論はない。
兼行は唖然と口を半開きにしたまま、冷めた目をくれるだけだ。
矢儀は、謎解きの興奮と、怯えに近い不安に、心が浮き立つ。
どうやら、相当に気が動転しているらしい。
気がつくと、矢儀は、雑巾でゴシゴシと頭を拭いていた。