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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
その石段、通るべからず
帰り道は楽だった。
高野台を降りるまでは、ほぼ下り坂だ。
雨粒に顔を叩かれながら、自転車を飛ばす。
次から次へと、水滴が目に入ってきた。拭っても拭っても、キリがない。
最初こそストレスだったが、パンツの中までビチャビチャになる頃には、もうどうでも良くなった。気分は、いっそハイになる。
後方の兼行や織田村も、同じ心境か。織田村は途中から、辺りを憚らず、狂ったように絶叫していた。
自転車のオートライトが頼もしく思えるほど、周囲は一気に暗くなる。
時折すれ違う車のヘッドライトで、強い雨が降っていることがわかった。
できるなら、このまま家に帰りたい。だが、各自、鞄を部室に置いたままだ。一度、学校へ戻るしかない。
校舎が建つ丘を上り、ほうほうの体で、ようやく正門に辿り着く。
中央棟脇の支柱時計を見ると、五時三十分。
校舎の一部や体育館には、まだ明々と明かりがついている。
矢儀、兼行、織田村の三人は、東棟の入り口で、靴も靴下も脱ぎ散らかした。髪から、制服から、水滴が滴り落ちる中、裸足で二階屋上テラスにある部室まで駆け上がる。
「もう、最悪! 尻の穴までビチャビチャですよ」
部室の明かりを点けるなり、織田村が吼える。
わざと下品な言葉を使うあたり、かなりご立腹らしい。
矢儀は、後輩の怒りを軽く背中で受け流して、部室の奥へ向かった。
スチール棚が並ぶおよそ十二畳分のスペースは、本来立ち入り禁止だ。バレたら、生徒会から大目玉を食らうだろう。
だが、今は緊急事態だ。とにかく、ずぶ濡れの身体を拭くタオルがほしい。
矢儀は、幾分寒気を感じながら、スチール棚を見て回る。
幸い、棚の下段に置かれたプラスティック製の籠の中に、タオルの山はあった。
すぐさま籠を引っ張り出す。山積みのタオル……らしき布を持てるだけ持って、矢儀は部室スペースへ戻った。
「ほらよ」と、兼行と織田村に一枚ずつ投げる。残りは、ひとまず机の上に置いた。
「僕には、雑巾に見えますが……」
ボロボロの布を鼻に近づけ、織田村は顔をしかめる。
「拭けたら、何でもええじゃろ」と言い返したものの、確かに少し臭う。さすがの矢儀も、顔と頭は、止めておいた。
もっとも、強者もいる。
兼行はムスッとしたまま、風呂上がりみたいに、ガシガシと顔や髪まで拭いていた。