夫が再発して悪化した記事はこちら ↓

 

 

「歩けない」「車椅子」が重い石となって身体を埋め尽くしていたが、

家に帰り着いて少しクールダウンした頭は、フル回転を始めた。

 

今の、この家には、もう住めない。

 

南側に200坪もの庭があるのに、

玄関前にはスロープを作るスペースがない。

 

たった5段の階段すら降りられない車椅子の夫が、

帰ってきても一歩も家に入れない。

 

引っ越すしかないではないか!

 

庭は大事にしていたし、

一区画は30本のバラを植えたプチ薔薇園で、

薔薇園の先の、敷地の端にある6畳の離れは、

入居前にトイレを備え付け、人工芝を敷き詰めた、私の仕事場。

 

 

しかし、私が花の手入れをする横で、

雑草を刈り、除虫に精を出してくれた夫が、

もうそんなことは不可能になってしまった。

 

庭の手入れの合間に、冷暖房も整えた私の離れで、

のんびりとお茶をしながら、

 

 

「次はここにあれを植えて、こんな風にしよう」

「池がいい」「いや、デッキがいい」

などと盛り上がったが、

200坪の庭など無用の長物になってしまった。

 

引っ越す決意をしたが、

土地を探して新築する、という選択肢はない。

 

今すぐではなさそうだが、夫がリハビリ棟に移ったら、

その日からリハビリ入院の日数制限「150日」の

カウントダウンが始まってしまうから。

 

それ以上、転院してまで入院生活を送って欲しくないから。

 

早急に条件の合う「平屋」を見つけ、

早急にバリアフリーへのリフォームに取り掛からなければ。

 

それに、高齢化率の高い我が街には、

分譲型のケアマンションもたくさんあるが、

マンションという選択肢もない。

猫が6匹もいるから。

この子たちを手放してマンションに移るなんて、

夫の病状を悪化させてしまう。

 

 

 

そして、その夜のうちに、素晴らしい物件を見つけてしまった。

・接道面からフルフラットで玄関に入れる

・今の家の上下階を足したより広い建物面積の平屋

・鉄筋造

 

何より、同じ町内。

もちろんよく知っている。

 

あそこ、売りに出されてたのか!!

 

せっかく近くに越して来た私の両親とは、

余り離れない所が良いと思ったが、むしろ近くなる。

 

ここしかない!!

 

それから数時間もしないうちに、リフォームのイメージが

むくむくと湧き上がり、どこに依頼するかまで妄想は膨らんだ。

夫のためとは言いながら、私のためのリフォームでもあって、

いずれ一人になった時にも住み続けたいと思える家にしないと。

 

夫のお金で。

 

 

 

一晩で引っ越しの決意をし、物件の目星までつけた私は、

翌日、今の家を買った不動産屋の担当に電話をし、

「買い替え」の相談をすることにした。

 

つづく。