生きものたちの部屋
宮本輝
新潮文庫
大晦日の書斎
母の喉のあたりがゆっくり波打っていて、いくら呼んでも目をあけなかった。医者は、その場で出来るかぎりのことをした。
私は子供たちを呼ぶように言った。学校から帰宅するのに一時間かかる長男はまにあわなくても、走れば三分で帰ってこられる次男はまにあうかもしれない…。
妻は、十数年、私の家で働いてくれて、身内のように母の世話をしつづけているお手伝いさんにも電話をかけた。自転車で二、三分のところに住んでいるのだった。
生きものたちの部屋
宮本輝
新潮文庫
大晦日の書斎
母の喉のあたりがゆっくり波打っていて、いくら呼んでも目をあけなかった。医者は、その場で出来るかぎりのことをした。
私は子供たちを呼ぶように言った。学校から帰宅するのに一時間かかる長男はまにあわなくても、走れば三分で帰ってこられる次男はまにあうかもしれない…。
妻は、十数年、私の家で働いてくれて、身内のように母の世話をしつづけているお手伝いさんにも電話をかけた。自転車で二、三分のところに住んでいるのだった。