決してこれまでの読書量が多い人間ではないことは重々承知の上で述べるが、
少なくとも、私がこれまで出会ったことのない切り口の小説であったように思う。
ジャンルでいえば、恋愛小説。
だが、「翼」は一冊を通じて「愛すること」とは?という問いを登場する人物が様々な視点から切り開いていく。
大方の恋愛小説というのは、「愛すること」は至極真っ当な話で、その大前提を踏まえた上から
男女を愛し、その想いを紆余曲折を得て成就させていく。あるいはそれがバッドエンドを迎えようとも、
序章ではわかりえなかった何かしらの「答え」を見つけ出していくものだ。(と思う)
哲学的な側面も持った小説。
この本を読むならば一気読みしかない。
作中に打たれた、心へのジャブの痛みが癒えぬ内に読まなければ、読後のこの爽快感は得られない。
適切な表現かはわからないが、「ノルウェイの森」を読み終えた瞬間の感覚に近い。
終わってみれば、不倫、離婚、自殺。具体的な描写こそ薄いものの、人間間に生まれる生臭い一面は随所に散りばめられつつそれらを含めた究極の恋愛観を見ていくことになる。
そんな一冊でありながらも読み終えた瞬間には、誰もが経験するような、虚無感にも感じる切なさを胸に感じる事なるだろう。