私の愛読書に「ラズウェル細木のときめきJAZZタイム」と云う漫画があります。

Jazzファンならご存じだと思いますが、ジャズ批評に連載していたレコードコレクターのお話です。この漫画の中で主人公がサキコロ(Sonny Rollins の Saxophone Colossus を買うときにあまりにもベタな名盤なので、恥ずかしさのあまり「いや-っ もう3枚も聞きつぶしちゃってこれで4枚目だよ」と言いながら購入する場面があります。

 

昔読んだときは「いやぁ解るな」と思い、Cool Struttin' や Kind of Blue も同じだよなと思ったものでした。おそらく多くの読者も同じだったのではないでしょうか。

 

では今はどう思っているのかといえば、まったく恥ずかしくありません。

なぜか?

昔はLPしかフォーマットがなく、国内盤か輸入盤かオリジナル盤の区別だけだったので、オリジナル盤以外を買うと「こいつ初心者か」と思われたくなかったと思います。

漫画の主人公も同じでしょう。

 

では今はどうか

今はいろいろなフォーマットで次々に再発されています。

LPでも45回転や、片面プレス盤、ハーフカット盤、ピュアヴァイナル盤などの高音質を謳ったレコードが次々に発売されるようになりました。

おそらくこれを買うのはオーディオファンが中心でしょうが、オリジナル盤を持っているような年季の入ったファンも新たな感動があるかもしれないと購入しているのではないでしょうか。

 

またCDの時代になり、未発表曲や別テイクがカップリングされるようになり、同じように昔からのファンも購入するようになりました。

また、LP CD以外でもDVDA、SACD、BlueRayAudioなど次から次と発売されると、一度買い始めた重複買いが止まらなくなります。こうなるとBlueSpecやプラチナCDなど普通の装置では大して変わらないような音でも買う羽目になります。

 

これを繰り返すうちに、昔思っていたような恥ずかしいと云う感情はどこかに消え去り、また買ってしまうことになってしまうのではないでしょうか。

 

裏を返すと、新譜で聞きたくなるようなものが無いのも現実です。

私も一時、いろいろなレコード屋が新譜でヨーロッパのピアノトリオばかり推薦するので最初は買っていましたが、金太郎飴のようなものばかりで飽きてしまい、いつしか新譜を買わなくなりました。

 

レコード屋のPOPも信じられなくなると、新譜の案内文も読まなくなります。

超名盤を買うのは他に聞きたくなるCDがないのです。

 

これはレコード屋の問題でしょうか?JAZZがいき詰まっているからでしょうか?