大好きなミュージシャンは何人かいますが、全ての録音が好きな人は限られています。

そのうちの一人がレスター・ヤングです。

 

もともとはスタン・ゲッツやブリュー・ムーアから後追いで好きになりました。

テナーは好きな人が多く、ベン・ウエブスターやチュ・ベリーのようなホーク派やアーチー・シェップやコルトレーンもたくさん聞きました。

しかし吐出していたのは希代のメロディーメーカーであるゲッツでした。

そんなゲッツを深く聞くうちにレスター・ヤングを聞かないとこの先に進めないなと思うようになりました。

そんな時にキングがコモドアのレスターやビリー・ホリディーの組物を相次いで発売したので、いい機会だと思い買いました。

ですから最初に聞いたのはコモドアセッションです。

「あぁ ゲッツのフレージングだ」「なんてモダンな音なんだ」と思ったのが最初の感想です。

そのうちにもっと聞きたいと思うようになり、アラジンセッションとキーノートセッションを聞きました。

評論家に言わせると、このころのレスターは兵役中の虐待で精神状態が不安定で衰えが目立つといった評価が多かったと思います。

でも聞けば聞くほどレスターの真骨頂はこの時代以降にあるのではないかと思えるほど私には名演奏ばかりです。

ですから当時の音を当時のレコードで聞きたくてSPを探すようにもなりました。

(音はこのキングの復刻がかなりいいものなので満足できるのですが)

今でもよく聞くのはキーノートセッションのCDなんですが、一番好きなアルバムと云うと

このLaughin' to from cryin’です。

Mercury Cref Norgran Verve と続く晩年の録音は痛々しくて聞けないという人が多いと思います。

たしかにミストーンがあったり、もたついたりしている演奏も多くあります。

私も最初は苦手ででした。

しかしこのアルバムを買って聞き始めてから考えが変わりました。

 

まずこのジャケットを見てください。

LesterとRoy Eldridge が楽しそうに話しています。

どう見てもまじめな話ではなく、昔の艶っぽい話かなんかでしょう。

これだけで聞きたくなるジャケットです。

 

演奏はレスターがたどたどしいフレーズを出す箇所が多いのですが、バックのロイとハリー・エディソン、ハンク・ジョーンズ、ハーヴ・エリスが完璧なサポートをしています。

これを最初に聞いたときに、レスターはみんなに好かれ尊敬されていたんだなぁと感じました。

ノーマン・グランツのレコードはいっちょ上がり的なものが多く、優れたプレーヤーがジャムセッション的ないい意味での手抜きが多いのですが、このレコードではみんなが力を込めてレスターを盛り立てているように感じます。

 

レスターのテナーはボロボロなのに出てくる音は素晴らしいといった逸話がありますが、私の買ったレコードもWater Damege のジャケットでVG- 程度ですが、この演奏にぴったりだなと思い手放せません。

 

とにかくレスターの残した演奏はすべて好きです。