いよいよ明日、第51回衆議院議員総選挙の投開票日となっております。
ちなみに私は、期日前投票を初日に済ませて来ました♪

各党が政策を掲げている訳ですが、先の第27回参議院議員通常選挙で躍進されました参政党の公約で、目を引きましたのがこちらです。

相変わらず、「オーガニック推し」という事が記されております。
何故、参政党がここまで“オーガニック推し”なのかと申しますと、その答えがこちらになります。

いやあ、ブッ飛んでおりますな(笑)
すると、この様なレスポンスがございました。
という事で、当該論文を見てみましょう。
◎目的
農薬残留の多い果物・野菜をどれだけ食べるかと、男性の精液の質(総精子数・形状など)との関連を調べるというものです。
◎対象
- 不妊治療クリニックに来院した155名の男性
- 合計338の精液検査データを解析
◎食事評価
食事アンケートを用いまして、摂取した果物・野菜を
に分類しました。
農薬の多い・少ないは、米国農務省(USDA)のPesticide Data Program のデータに基づいています。
②主な結果(重要ポイント)
◎全体の果物・野菜の摂取量
総摂取量自体は、精液の質に有意な関係は見られなかった
◎高残留農薬果物・野菜の摂取
多く摂取する人は次の様に 精液の質が低い傾向が有った
- 総精子数が平均約49%低い
- 正常形態の精子の割合が約32%低い
◎ 低〜中等残留農薬果物・野菜
逆に、低〜中等残留のものを多く食べている人では、正常形態の精子割合が高い傾向が観察されました。
③解釈上のポイント(科学的に重要)
◎観察研究である
- この研究は観察データの解析なので、「因果関係(農薬残留そのものが精液を悪くした)」とは断定出来ない。
- 他の食生活・生活習慣が影響している可能性もあります。
④どこがこの研究の新しさ?
この研究が注目されましたのは、
「食事に含まれる農薬残留の多さが、男性の精液の質と関連するか?」
という問いを、疫学的に初めて系統的に検討した点です。
それまでの研究は、
が中心でしたが、この研究は
日常の食事を通じた曝露を対象にしています。
⑤論文自体の限界(参考にすべき点)
農薬測定は食品カテゴリーに対する一般データに基づいておりますので、個々の参加者の体内の農薬量の評価ではありません。
つまり、
- 参加者の体内の農薬濃度を直接測ったものではない
- USDAの統計データ(米国の残留データ)が基礎になっている
という点から、推定の精度には限界がございます。
⑥この論文が示しているもの
この論文は、日常的な食事を通じた農薬残留への曝露と男性の精液の質との関係を観察データで初めて示した疫学研究である
という点で価値があります。
ただし、
- 結果は 因果関係を証明するものではない
- 米国の食品・農薬事情に基づいている
- 実際の農薬濃度の体内測定ではない
という限界もあります。
では、この論文を日本に当て嵌める事が出来るのでしょうか?
①そもそも「高濃度残留農薬」とは具体的に何か?
この論文では、個々の作物を次のように分類しています。
◎残留農薬評価の指標
農薬残留物データに基づいて、Pesticide Residue Burden Score(PRBS)という指標を作成しております。
そしてこのスコアをもとに、
- PRBS ≥ 4 → High pesticide residue foods(高残留)
- PRBS < 4 → Low-to-moderate pesticide residue foods(低〜中等残留)
としています。
(※PRBS は「複数の検査指標における残留農薬の高さ」を合算した尺度で、数字が大きいほど高残留の可能性が高い事を示します。)
つまり、この研究でいう「高濃度残留農薬」とは、単一の農薬が法律の基準値を超えるような状態ではなく、USDA のモニタリングデータ上で「検出頻度が高い」「複数種類の農薬が検出されやすい」食品として分類されたグループを指します。
②「高濃度残留農薬」と日本の基準値(MRL)との比較
日本におけます農薬の残留基準値(MRL: Maximum Residue Limit)は次の様に定められます。
◎日本の農薬残留基準(MRL)
したがいまして、
論文で高残留とされた食品が必ず日本の基準値(MRL)を超えるという意味ではございません。
むしろ、
- USDA データで比較的検出される農薬量が多い食品群を指す
- 日本の基準値MRLはその農薬ごとの法的上限という別の尺度を比較する必要があります。
③どの程度違うのか?(具体例)
残念ながら論文自体には、個々の農薬濃度(mg/kg)が記載されておらず、具体的な濃度値で「日本基準と比較」する事はできません。
論文では、残留量をカテゴリ(高 VS 低)で評価しているため、具体的な濃度値は評価対象としていません。
ただし
- 論文の「高濃度残留農薬」…USDAデータで比較的多く農薬が検出される食品群(PRBS ≥4)
- 日本のMRL…一つ一つの農薬について法令で定められた最大許容量
- 比較の可否…論文だけでは日本のMRLとの定量比較はできない
つまり、この論文で「高濃度」とされた食品は、必ずしも日本の法律で禁止されるレベル(MRL超過)ではない可能性が高い訳です。
飽く迄も「相対的に残留が多い食品群」の定義であり、日本の基準値との直接比較には別途、実際の濃度データが必要になります。
つまり、この論文をそのまま日本に当て嵌める事は出来ない訳ですね。
その辺りを、整理してみましょう。
①農薬評価の前提が「米国専用」
両論文で使われている農薬評価は、
- USDA(米国農務省)のPesticide Data Program
- 米国で許可・使用されている農薬
- 米国の使用量・散布回数・収穫前日数
です。
◎日本とは何が違うか
- 使用農薬の種類が違う
- 散布設計が違う
- PHI(収穫前日数)が厳しい
- 結果として残留濃度の分布が違う
同じ作物名でも、残留の「意味」が変わります
②「高残留農薬」という言葉の誤解
論文中の high pesticide residue は、
米国内の作物同士を相対比較したカテゴリー、つまり「米国の中で、比較的残留が多い作物群」という統計上のラベルです。
日本のMRL・ADI体系とは評価軸が別物という訳ですね。
③日本ではPRBSの「差」が成立しにくい
この二つの論文の肝はPRBS(相対残留スコア)ですが、日本で同じ事をやりますと、
- 検出率…高い
- 種類数…多い
- 濃度…非常に低い
- 作物間の差…小さい
となりまして、
高群 vs 低群のコントラストが弱くなります。
疫学的に申しますと、
exposure contrast が不足する=差があっても検出できない
という事になる訳です。
④被験者が「日本一般男性」ではない
- 不妊治療クリニック来院者
- 精液所見に既存の偏りあり
これは、
- 日本の一般集団にそのまま外挿不可
- 日本人男性全体の話にはならない
となります。
⑤何が使えて、何が使えないのか?
◎日本に当てはめてはいけない主張
- 日本の野菜は危険!
- 基準値内でも精子が減る
- オーガニックでないと有害
- この論文が日本の安全基準を否定している
全部、論文の逸脱・誤用です。
◎日本でも「参考にできる」点
以下に限定されます。
- 農薬をゼロ/非ゼロでなく「相対量」で見る視点
- 食事パターンによる推定暴露差を疫学的に扱う方法
- 職業曝露ではなく日常食事に焦点を当てた設計
考え方・方法論の参考としてでしたら、有用です。
つまり、
- 直接適用…不可
- 方法論の参考…可
- 日本の安全性否定…不可
- 基準値内有害性の証明…不可
ここまで整理が出来ておりましたら、 この二つの論文を使った
過剰な主張や扇動には釣られる事は無いでしょう。