世界的マエストロ チョン・ミョンフン 平壌の管弦楽団をフランスに招待 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

朝鮮の「ウンハス(銀河)」管弦楽団とフランスの「ラジオ・フランス・フィルハーモニックが来たる3月にフランスのパリで合同演奏会を開くと言います。南北のオーケストラの合同コンサートを計画していた世界的なマエストロであるチョン・ミョンフン氏(ソウル市響総監督)が、その計画が残念にも霧散した替わりに、氏が音楽監督を勤めるラジオ・フランス・フィルハーモニックとの合同演奏会を計画し,それが実現することになったのです。


残念ながら多くの日本人は朝鮮に交響楽団があるとは思っていないようです。あってもせいぜいが日本の地方オーケストラ程度のレベルだと思っているようです。しかし、すばらしいオーケストラがある事は管理人もブログで書いたことがあります。私事で申し訳ありませんが管理人も若い頃にクラシック音楽の虜となり、マエストロになる夢を持ったこともあります。高校時代に学業をおろそかにしながらレッスンに明け暮れていました。その管理人が一度平壌国立交響楽団の演奏を聴いたことがあります。


西洋クラシックではワーグナーのタンホイザーとリストのハンガリアン狂詩曲第2番を偶然に聴くことが出来たのです。ハンガリアン狂詩曲第2番はオーケストら演奏用にに編曲したものですがミューラーの編曲とも違っていて誰の編曲かよく分かりませんでした。多分朝鮮の音楽家が編曲したものだと思いますが、ハンガリーの民族色豊かなものに出来上がっていました。実は案内してくれた方がクラシックにはとても疎い方で、演目を覚えていなかったので管理人も当日になってやっと分かった次第で,偶然と言ったのです。ところで演奏はすばらしく、私見ではNHK交響楽団と肩を並べるか若しくは少々上を行くといった感じでした。編曲の技術も文句なしです。


ところでマーラーやショスタコ-ビッチの全交響曲を演奏するなど、精力的な音楽活動を通じて日本のクラシック・フアンの間では知らない人がいないと言っても良いマエストロの井上道義さんが平壌交響楽団を指揮したと言います。つい最近のことです。昨年10月に訪朝し10月7日にコンサートをやりました。演目を見るとベートーベンのコリオラン序曲とメンデルスゾーンのバイオリンコンチェルト、そしてドボルザークの交響曲第9番「新世界から」、最後に「アリラン」でした。


井上氏はやはり著名な音楽評論家の丹羽正明氏から最初にこの話が伝えられたときには「朝鮮にも交響楽団があったのか」という感想を持ったと言います。
ところがコンサートホールとなったモランボン音楽堂の造形美もすばらしく音響設備などの設備は申し分なく、世界トップレベルだと絶賛しています。朝鮮の人々の暮らしも日本のテレビが伝えるように貧困だと思うような場面は一度も見たことがなく、人々の表情は希望に溢れており、日本のマスメディアが伝えているのとはまったく違うこの国の姿を見て、多くのことを考えるようになったと言います。


演奏については「演奏は誠実で統一されていた。技量面では良い部分もあったし欠陥もあった。日本の聴衆を満足させるだけの水準は十分にあった。とくに朝鮮の多くの楽団に融合している民族楽器の独特な旋律は私の心琴を響かせた。管弦楽アリランは短い曲を多様な変奏で奏でて広大な規模の楽曲に仕立てた編曲者の技術には感動した」とべた褒めしています。


これを聴いた管理人はさもありなんと思いました。同マエストロが朝日新聞12月7日付け「井上道義の未来だった今より」と言う連載コラムに平壌訪問について書いているので一読を進めたいと思います。マエストロ井上のHPに訪朝の記録や演奏会の模様が載っています。アドレスは(http://www.michiyoshi-inoue.com/ )です。


朝鮮の交響楽団のすばらしさは韓国のチョン・ミョンフン氏も絶賛しています。マエストロチョンはオケレン(オーケストラ練習)を行って「なんとしてもこの交響楽団を正式に指揮してみたい。南北のオーケストラが今年の12月にはベートーベンの交響曲第9番「合唱付き」を合同で演奏したい」との思いを強めたと言います。


平壌国立交響楽団の実力は数年前のニューヨーク・フィルの訪朝とローリン・マゼ-ルの指揮による演奏で立証済みです。そういえばローリン・マゼ-ル指揮するニューヨーク・フィルもドボルザークの交響曲第9番「新世界より」を演奏しました。管理人はそのときのDVDを持っていますので井上氏とのそれと聞き比べてみたりもしてみました。やはり趣が少しづつ違っていますが、どちらもすばらしい演奏だったと思っています。あえて言わせてもらえば管理人は個人的にはローリン・マぜールの方が気に入っていますが。


ところで閉塞状態の日本の対朝鮮政策ですが、こうした芸術の面から突破口を開くというしゃれた考えが日本の政治家からは生まれないのでしょうか。報道によれば日本の政治家60人あまりが平壌に招待されたと言います。もちろんブルーリボンをしつこく付けている政治家連中は体面上行くわけにはいかないだろうとは思いますが、せっかく与えられたチャンスです。


良いおりですのでアホな記者らを自分の宣伝のために連れて行くのではなく、マエストロ小澤征爾をお連れになってみたらいかがでしょう。私見ですが,小澤征爾であれば国賓級で迎えてくれると思います。朝鮮の音楽家や音楽愛好家の間でも小澤征爾はつとに有名ですので。朝鮮の人々の日本代表団を見る目が随分と和らぐのではないでしょうか。