携帯電話販売100万台突破が意味すること | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

2日、エジプトの移動通信会社オラスコムが株式市場への公示を通じて朝鮮での携帯電話の普及が100万台を突破したことを明かしました。


アメリカのVOA(アメリカの声)放送が、昨年末現在で80万9千台に達し、現在100万台を超える携帯電話が販売されたと伝えています。


オラスコム・テレコムは合弁の相手であるコリョ・リンクが9月末で453局の基地局を設置し、平壌と14の主要都市、86中小都市、22の主要道路などで携帯電話が使用可能であり、それは朝鮮全住民の94%がすむ地域で携帯電話網を利用できると事を意味するといいます。


またオラスコム・テレコムの昨年の第3分期の売り上げが4千150万ドルで前年比125%を越え、マージン率も80%で税引き前の偉業利益が3320万ドルに達したと言います。


管理人は200お年10月2日の記事でオラスコム・テレコムが「携帯電話の加入者数を今後5年内に数百万人に拡大すると明かした」とのイギリスのファイナンシャル・タイムズの記事を引用していますが、携帯電話の普及速度が想像以上に急激であることがはっきりしました。


当時ファイナンシャル・タイムズは、「携帯電話の本体価格だけでも140ユーロであり、大部分の人々はこれを所有することが難しい」と書いていますが、単なる杞憂に過ぎなかったようです。もちろん一般の住民にとって140ユーロの買い物は簡単に出来るものではありません。そのため日本では高級官僚か労働党の幹部、そして実務上どうしても必要な官吏らしか持てないという勝手な憶測が広く流れましたが(マスコミを通じて広く流布されました)、すでにそうしたいい加減な朝鮮を卑下するようなコメントは、この事実(携帯販売台数が100万台を越えた)を前にしても、できるものかマスコミ当事者らに聴いてみたいものです。


ところで労働者の平均賃金を考えた場合、この比較的高い買い物がなぜ出来るのかという疑問は残ります。その疑問を解き明かす事実をお知らせしたいと思います。


朝鮮では国家が住民の面倒を見ている福祉(事業)が住民の一ヶ月の生活費の何パーセントを賄っているかご存じでしょうか。約60%に達します。医療費タダ,教育費タダ(日本の小中高、大学は有料だが、奨学金が支給される),住宅費タダ,水道・ガス・電気も殆どタダです。これら全部が国民負担だとしたら,どれくらいの額になるでしょう。


今,万寿台通りに建設している高層住宅(アパート)は平均で80平方メートル,広いところで120平方メートルあります。東京で言えば"億ション"ですが、そんなところにもタダ同然の住宅使用料だけで住めます。だから,住宅ローンで苦しむなんて事はありません。朝鮮が国民にタダで保障しているものを全部,日本と同じように売買しているものとして考えたら,GDP(国内総生産)がどのくらい上がるでしょうか。


その上に共和国では,日本で言えば祝日に当たるんですが,「名節」の日に,国が国民にプレゼントをします。「名節」の日に国から配給されるものにはどんなものがあるかと言うと、女性で言えば,まず下着,パンティからブラジャーまで全部入っています。それから(パンティ)ストッキングやブラウス,靴ですね。


男性で言えば,ワイシャツ,靴,それから下着,靴下です。そんなものを全部タダでもらえるのです。もちろん,子どもたちにも全部です。共和国では「名節」の日がない月は3月と11月だけで,後は全部あります。だから,贈り物は3月と11月だけ除いて,毎月届くのですが,それを全部,国が負担しているんわけです。


それ以外にも子どもが入学する時には通学用の制服,カバン,バッグなど,全部タダで、プレゼントしてくれます。他に企業別の創立記念日にはテレビ(今は大型液晶テレビが主流ですが)、冷凍冷蔵庫、洗濯機などを企業がプレゼントします。日本でこれをしたら一ヶ月で音を上げるでしょう。


ですからお金を使うところがほとんど無いわけです。管理人が平壌のホテルのコーヒーショップでウェートレスに聴いたところによれば、賃金は全て母親に渡すとのことです。小遣いはどうするのか聴いたところ、買う物が特にないので、という返事でした。その都度もらっているということです。


ところが携帯電話や冬の綿入りのジャケットやコートは配給にはないので母親に「貯金」した金でそれを買うと言うことです。彼女は携帯電話を2台持っていました。一台は旧型で妹にあげると言います。配給がある商品はチケットを持ってデパートに行けば国定価格(ほとんど市場価格の20%前後)で、お気に入りを買う事が出来ます。これは消費財生産が増えるほどに市場が縮小するほか無いと言う事を物語っています。


こういうわけですから朝鮮では、賃金水準がそのまま生活レベルを表すものではありません。それを高名な学者先生や評論家、ジャーナリスト(とてもこう呼ぶことの出来ない人々ですが)が知らないわけです。高額な携帯電話がなぜ飛ぶように売れるのか少しはおわかりになったと思います。


携帯電話の普及がオラスコム社の予想よりも遙かに早いスピードで拡大し、早くも100万台を越えたという事実は朝鮮の経済が「強盛大国」に向けて着実に伸びていることを示すいま一つの証だと行って良いでしょう。


ところでそのオラスコム・テレコムの会長が2月1日から3日まで平壌を訪れ、キム・ジョンイル国防委員長の逝去について「朝鮮人民は偉大な領首を失った。わたしもまた最も親しい方を失った」と哀悼の意を丁重に捧げています。そして昨年1月に国防委員長と接見した時を顧みながら、「その栄光の日を永遠に忘れることは出来ない」「偉大な将軍の接見を受けながら彼の人間味に完全に魅了された」と語っています。日本の反朝鮮勢力のもっとも聞きたくない言葉だとは思いますが、ご紹介だけはしておきます。