昨今ウォール街とワシントン周辺のアメリカ権力エリートにとっての最大問題は、現在彼等がその歴史上で最大の金融危機にあるという事実です。この危機は全世界に拡大し、グローバリズムに飛び込んだ世界は、自分自身の生存を前提にジャングルの争いを生き抜こうと必死です。
アメリカのパワー・エリートは連中のマスコミ組織によって、「グローバライゼーション」と呼ばれる、自分たちのグローバルな寄生帝国支配を維持しようと益々必死になっています。しかしこの支配を維持するには、将来のアメリカ単独の超大国支配に対して、挑戦しうるユーラシアの二大国、ロシアと組んだ中国の経済、エネルギーあるいは軍事領域での何らかの協力が浮上するのを、彼等が阻止することができることが必要不可欠なのです。
中国は様々な問題を抱えながらも世界で最も堅固な経済と、膨大な、若く活力に満ち教育を受けた労働力、そしてロシアに次ぐ軍事力をもっています。ロシアはエリツィン時代の粗野な略奪から経済こそ回復してはいないものの、依然、アメリカにとって協力の為に必要不可欠な資産を保持しています。また他方でロシアの核攻撃力とロシア軍は、たとえそれがほとんど冷戦の残滓であっても、今日の世界でアメリカ軍支配に対する唯一の脅威となっています。
ロシアはまた、中国にとって魅力のある世界最大の天然ガス埋蔵量と、膨大な石油埋蔵量を持っています。そして中ロ二大国は、彼等が2001年に作り出した上海協力機構(SCO)として知られている新組織を通して、益々一つにまとまりつつあります。SCO機構は中国とロシアに加え、中央アジア最大の国家カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンとウズベキスタンまでも含んでいます。
F.W.Engdahlはアメリカのタリバンとアルカイダに対する戦争とされるものの目的は、実際はこの新興SCOという、中央アジアにおける地政学的空間のど真ん中に、軍事攻撃部隊を直接置くことなのだとし、イランは陽動作戦で、本当の狙い標的はロシアと中国だと指摘しています。
もちろんワシントンは、公式的には2002年以来、アフガニスタン国内駐留軍を作り上げたのは、"脆弱な"アフガニスタンのデモクラシーを守るためだと主張しています。2004年12月のカブール訪問時、アメリカ国防長官ドナルド・ラムズフェルドはアフガニスタン占領後、2001-2002年冬に既に建設されていた三大アメリカ軍基地に加え、新たに9の新基地を建設するという計画をまとめたことがあります。そしてまず3つの基地を建設しました。アメリカの主要兵站基地であるカブール北部のバグラム飛行場。南部アフガニスタンのカンダハル飛行場。そして、西部の州ヘラートにあるシンダンド飛行場です。アフガニスタン最大の米軍基地シンダンドは、イラン国境からわずか100キロ、ロシアも中国も攻撃可能距離内にある場所に建設されました。
アフガニスタンは、歴史的に19世紀と、二十世紀初期における中央アジア支配の闘争、イギリス-ロシア間のグレート・ゲームにおける中心地でした。当時のイギリスの戦略は、いかなる犠牲を払っても、ロシアがアフガニスタンを支配することを防ぎ、それにより、イギリス帝国の重要資産であるインドを脅かすのを防ぐことにありました。
アフガニスタンは、ペンタゴンの立案者達によっても、同様に、極めて重要な戦略的要衛だと見なされています。アフガニスタンは、そこからアメリカ軍勢力がロシアと中国を、更にはイランや石油が豊富な他の中東諸国を直接脅かす事ができる足場なのです。アフガニスタンの重要性は一世紀以上の戦争を経ても、地政学的にはほとんど変わっていないのです。
アフガニスタンは、南アジア、中央アジア、そして中東にまたがる極めて重要な位置にあります。アフガニスタンはまた、アメリカの石油会社ユノカルが、エンロンとチェイニーのハリバートンと共に提案した、天然ガスをトルクメニスタンからアフガニスタンとパキスタンを越え、ムンバイ近くのダブホルにあるエンロンの巨大天然ガス発電所へと運ぶ独占パイプラインの権利を獲得するためにも獲得する必要がありました。またアフガニスタンは、防御すべきカスピ海油田からインド洋へ向かう石油パイプライン経路沿いに位置しています。アメリカの傀儡大統領になる前は、カルザイはユノカルのロビイストでした。
このような事情からアメリカはアルカイーダの弱体化をひたすら隠し続け,米軍駐留の必要性を強調し続けたのです。
作家エリック・マーゴリスによると、2001年9月11日の攻撃以前に、アメリカ諜報機関はタリバンとアルカイーダの両方に資金と援助を与えていました。「CIAは、オサマ・ビン・ラーディンのアルカイダを、イスラム教徒のウイグル族に中国支配への反対を、タリバンに中央アジアのロシア同盟諸国への反対を焚きつけるのに利用することを計画していた。」と、マーゴリスは主張しています。
アメリカは、イスラム教徒ウイグル族を反北京に焚きつけるために、世界ウイグル議会を支援したりもしました。アルカイダの"脅威"は、オバマのアメリカがアフガニスタン戦争の強化を正当化するための根幹であり続けてきたのです。
しかしながら、今やオバマ大統領の国家安全保障顧問である元海兵隊の大将、ジェームズ・ジョーンズは、アフガニスタンにおける現在のアルカイーダの危険性の規模推定について、議会に、「アルカイーダの存在は非常に減少している。最大推計で、アフガニスタンで活動しているのは100人以下で、基地もなく、我々に対しても、同盟諸国にも、攻撃をしかける能力はない。」と語っています。
つまり、あらゆる現実的目的としてのアルカイーダは、アフガニスタンに存在していないというのです。そもそもアルカイーダが存在したのは、赤軍を惨敗させ、究極的にはソ連崩壊をもたらすべく、ソ連のための"新ベトナム"を作り出すという、レーガン時代のCIA長官ビル・ケーシーらが作り上げた戦略の一部として、アフガニスタンのロシア軍に対し戦争を遂行するため、1980年代にCIAが過激なイスラム教徒を、全イスラム世界から採用し訓練して生み出したものでした。
アメリカのアフガニスタン侵攻から10年目にしてアメリカはオサマ・ビン・ラディンを殺害したことで勝利を叫びたいところでしょう。
しかし、アフガニスタン侵攻の元来の目的は未だに達成されていません。アメリカは引き続きアフガニスタンに居残り、元来の目標を達成するために行動するでしょう。それはアフガニスタンの政治を安定させ、中ロをにらんだ軍事基地網を完成させ、中央アジアの資源と資源の回廊を掌握するための万全の準備を整えることに全力を傾けることでしょう。しかし、抵抗が止むことはまずあり得ません。たとえアルカイーダが弱体化したとしてもイスラム世界の強い怒りを買うはめになりました。中ロもいっそう強く警戒する事になるでしょう。
分けてもアフガニスタンの現状は極めて深刻です。アメリカの侵略以来、平均寿命は43歳にまでおちました。少なくとも国民の40パーセントは失業しており、42パーセントが一日一ドル以下で暮らしています。子供の五人に一人は五歳前に亡くなり、50件中1件の出産で母親が死亡しています。それは世界でも最も高い比率です。アフガニスタンの成人のうち、三分の二は読み書きができません。
2001年10月以来、約360億ドルもの外国からの援助がアフガニスタンに送られているのに、そのほとんどはアメリカがしつらえた傀儡大統領ハミド・カルザイが率いる盗賊政治家の私腹に流れ込んで、状態は着実に悪化していくばかりです。
果たしてアメリカが占領地アフガニスタンのこの悲惨な現状を是正することができるでしょうか。仮にアメリカがそのために努力したとしてもイラクの例に見るように不可能なことです。ましてもはやアメリカにそんな余裕はありません。残る可能性はただ一つ、いっそう広範な反米闘争(反米テロ,大衆闘争)が起きることです。これだけが唯一考えられる事ではないでしょうか