ネズミ20に化けた?G20頂上会議 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

ソウルG20が閉幕しました。しかし成績は中の下、もしくは下の上だと言う評価が多いようです。「時にはホームランではなく安打を打つこともある」(オバマ)「英雄的な成果は無かったが肯定的な進展があった」(ケメロン)「ソウル合意の結果は、合意ができないよりはましだ」(サルコジ)。各国の頂上らはソウルG20での合意について肯定的な表現を使おうと最善を尽くしているようです。しかし参加した主要国の首脳でさえそれを認めざるを得なかったということでしょう。


実は経済に詳しくは無いので、具体的なことについて指摘することはできませんが、争点であった問題は何一つ解決策を見出せず、かえって世界経済に対するアメリカの指導力がほとんどうせてしまったことを見せ付けた会議だったようです。ニューヨーク・タイムズは「G20合意安は経常収支に制限を加えようとしたアメリカの要求を反映していない」と書いたのに続いて「合意文は人民元の急激な評価きり上げに対して成功裏に抵抗してきた中国や、グローバル不均衡は貿易だけでなく財政、金融など他の部門とともに論議されなければならないと主張してきたドイツの立場が反映された」と書いています。つまりG20がアメリカの要求を拒否したということです。


AP通信は「G20が中国の人民元きり上げを要求するアメリカを支援することを拒否した」との表題の記事で、「G20国家が人民元切り上げを狙うアメリカの圧力を推認するのを拒否した。グローバル貿易戦争という亡霊を呼ぶ紛争が続くだろう」と報道しています。


実際、G20合意文に「市場決定的為替率」を明記したのも「中国を狙ったものではあるがきわめて曖昧であり、特別な時限も無いので中国としても相当な解釈の余地を残している」と分析しています。

実はオバマ大統領は80分もの長い時間、中国国家主席と会談し人民元評価切り上げを要求しましたが、まったく進展を見られませんでしたし、ドイツ総理はオバマ大統領との会談ではアメリカの経常収支制限要求に対してまったく退かなかったと言います。ロイターやガーディアンなどもG20の成果についてきわめて厳しい評価を与えています。

総論的に言えばソウルG20は打ち上げ花火で終わったと言うことでしょう。残したものがないということです。ロンドンのマニュメント投資証券の首席エコノミストであるスティーブン・ルイスはAP通信のインタビューに「今回のG20頂上会談の唯一の具体的成果は、各国が問題を解決するために何かをするというよりも、引き続き問題の重大さを測ることに合意したこと」だと答えています。


もちろん相対的にIMFの力が増したと言えるので、IMFの力を借りたアメリカの強権発動という道が残ってはいますが、IMF出資比率による持分に依存しているので、その力が可変的なものに代わりはありません。状況によって左右されると言うことです。


韓国の80余の市民団体が結成したG20対応民衆行動と、世界各国から集まったNGO代表らは12日午後、G20の閉幕とソウル合意文の発表にあわせて決算記者会見を行い、G20を「アンコのないアンパン」だと酷評し、G20は「持続可能な世界経済のための代案にはなれないと言う事実を確認させた」とこき下ろしました。


今後1930年代当時の保護貿易政策による世界大恐慌を復活させることになるかも知れないというAP通信の警告に耳を貸す必要があるかもしれません。


ところでG20期間の韓国の状況はどうでしたでしょうか?韓国はネズミブームで会期中が沸きました。ネズミのハングル読みはチュイでGのハングル読みと同じです。そこで朴某氏という大学講師がG20のポスターにG20のロゴマークを手に下げたネズミの絵を描き加えて、逮捕される(すぐに釈放されましたが)と言う笑えない事件が置きました。それ以来ネズミがG20を象徴することになったのですが、さまざまな出来事がそれを立証して見せてくれました。

G20 홍보물에 쥐 그림을 그려 영장 발부받은 박 모씨의 작품

そうした出来事のひとつをご紹介します。

ラジオのLBSボーイの「文化レシピ」という番組で、G20特集音楽プロを流したのですが、そこで放送する音楽の共通点を当てるクイズを行いました。もちろん懸賞つきです。流された音楽はヒップ・アップミュージシャンのマイティー・マウスが歌う「出動」、7人の少女が歌う童謡「ネズミ100匹」、女性コーラスユニット少女時代の「チュイ」、チュイー・ドラゴンの「ザ・リーダース」、ポーリーの「ネズミの夢」、イム・ハリョンの「スージー・キュウ」、GDOのヒット曲「道」、海外バンドではライドの「マウス・トラップ」、バンドCSSの「ラット・イズ・ダイ」、それに「ミッキーマウス行進曲」などでした。もちろんこれだけではありません。ネズミを主題、あるいは素材にした曲やミュージシャンの名前にチュイ登場する曲が2時間近くも流されたのですから。


ところが視聴者らはわずか3曲目ぐらいで「チュイ」「チュイ××」と正解を当てたのです。

この××には特定の人物を示すMやB、あるいは両文字がまれたりします。また「チュイ」をつけずに直接MやB、あるいは両文字をつなげた回答もありましたが、ラジオのDJはこの固有名詞は正解とはしませんでした。「チュイ」が特定の人物を示すものではないと言う「法的正当性」を確保するためだということのようです。ちなみにMBとは李明博大統領のことです。


ところで回答者すべてが正解を当てたので先着順に従うほか無かったわけですが、ただ夜通し「チュイ」の歌だけを聞きながら遊べたと言う共感帯が生まれたと言う点で特異な番組でした。そして番組の最大の目的は「われらはなぜチュイを憎悪するのか」という問題意識を与えることでしたが、それには成功したようです。


放送時間帯にソウル駅広場ではデモが起き、G20会場周辺の道端で必死にプロポーズをしていた男性がデモに勧誘しているとして連行され、50代の女性が焼身自殺未遂を起こしています。会場の周辺には金網のフェンスが立てられ会場はまるでネズミ捕りのわなの中に閉じ込められたような形です。会期中、匂いが出てはたまらぬと一切の糞尿処理車の運行が止められ、周辺の交通網はすべて遮断され地下鉄は駅に止まらず通過し、会議が始まる数日前から会場の裏山(丘)にあるポンウン寺(李明博政権が住職を変えようと必死になっている寺)周辺から丘一体に8000以上のネズミ捕獲器を仕掛け、会場へのネズミの侵入を防ぐための処置が取られました。涙ぐましいさを越えてまさにパロディーです。

G20 경찰

金網で塞いだG20会場内から外に向かって警戒する警察特攻隊の特殊装甲車両


しかしG20会議で得たものは一体なんだったのでしょうか。李明博政権はG20で韓国の「国格」が問われているとして、さまざまなことをしでかしました。しかし「国格」は何十にも張り巡らせた警戒網によってではなく、自国を誇らしく思う国民の自覚から生まれるものだと管理人は思います。


国民と敵対し、国民を弾圧し統治する国に、「国格」を云々する資格はありません。

文化評論家のチェ・ヨンイル氏は次のように指摘しています。「もちろんチュイ20行事後、さまざまな成果報告を自賛し、莫大な収益を上げたとの損益計算書を出すだろう。しかし頼むから国格があがったという言葉だけはしないでほしい。『人格』が他人の認める以前に自ら感じるべき自尊心の問題であるように、私の住む国の『国格』は外国人が見てくれる前に、われわれ自身が内から尊重されているという自覚を持つことから生まれるきわめて人間的なものである」。管理人もそう思います。