W杯放映で恥をかいたクローリー国務次官補、恥をかくことになる池上彰氏 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

北朝鮮によるW杯「海賊放映」云々が、まったくのでっち上げであった事がはっきりしたことは、昨日のブログで伝えましたが、驚いたことにクローリー米国務次官補(広報担当)が15日の記者会見で、北朝鮮の朝鮮中央テレビがサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の試合を「海賊放映」したと報じられたことを、何の検証もなしにそのまま信用し、北朝鮮を誹謗しています
クローリー次官補は「これこそが北朝鮮の特徴だ」と断言。「周辺国と正常な関係を築いて、合法的な取引を始めることもできるのに、ワールドカップのテレビ信号を盗用しようとしている」と述べ、調べもしないまま北朝鮮を「犯罪国家」と非難する失態を演じました。これでは「天安艦」事件での北朝鮮非難も冷静な判断なしに、李明博政権の要請をそのまま受けて行ったと言われてしまうのではないでしょうか。


大国の国務次官補としては考えられない失態です。北朝鮮のことであればどんなことでも非難し、ダーティー・イメージさえ与えられればそれでよしという実に稚拙な、低次元な発想が生んだ失態でしょう。どう謝罪するのでしょうか。何の根拠も無いまま韓国のいち民間TV放送局が流した、無責任きわまるでっちあげをそのまま受けた結果だといっても、日本のマスメディアのように知らぬ存ぜぬ決め込むのはあまりにもプライドの無いずるいやり方です。また韓国の放送局に全責任を負わせ、責任を逃れようとするわけにも行かないでしょう。


管理人が指摘するまでもなく国家の外交を責任持つ国務省の次官補の公式の発言ですから、公式に謝罪するのが礼儀でありそれが外交担当者として取るべき義務です。


ところでクローリー次官補の失態は、いわれのない先入観に囚われていると事実、真実が見えてこなくなるといことのよい例です。


昨日のテレビ朝日の「池上彰の学べるニュース」もそうした間違いを見せてくれました。19時から始まったこの番組で池上氏は「天安艦」事件について「講義」しましたが、受講しているタレント諸氏の知的レベルに合わせたのでしょうか、大いに問題を含んでいました。池上氏の「講義」はものごとを単純化し、分かりやすく説明するので、一見それらしく聞こえるのですが、行き過ぎた単純化は返って害になるものです。「天安艦」事件の説明がまさにそうでした。


何よりも彼の講義は「天安艦」事件が「北の仕業」だということを前提にしたものでした。この事件については管理人も比較的詳しく書いてきたので読者の方々は、韓国民の多くが合同調査団の結論を疑惑の目で見ており、「謀略」と見ていることはお分かりだと思いますが、池上氏には韓国民の視線をまったく知らないままこの問題を扱っているようです。つまり「講義」に必要な、必ずすべき準備をしなかった無責任さが見られます。


安保理での中ロのスタンスについても第2次大戦後の大国間(中ロVS米)の対立と言う視点からだけで語り、中ロが合同調査団の結論をまったく納得していない、つまりその信憑性を疑っているという点にはまったく触れていません。「天安艦事件と直接に関連した中ロの態度を見る上で決定的な要素であるにも拘らずにです。


他にも韓国の言う「北方限界線」を軍事境界線と言っているのを見ると、これについてもまったく分かっていないようです。それよりも解説の全般が韓国政府の言い分を検証もせずにそのまま受け入れたものでした。

こうした視点はその後の、イスラエルによるガザ地区への国際救援船団への無差別攻撃に関する「講義」が比較的中立的(ややイスラエル寄りですが)に行われているのとは極めて対照的です。


何故このような現象が生まれるのでしょうか。管理人が思うに第1に池上氏がクローリー次官補が犯したのと同様な間違いを犯している、つまり北朝鮮に対するダーティーな先入観を払拭できないまま、あたまから北朝鮮の犯行と決め付けたうえで「講義」を行った、第2に良く知らない問題を知ったかぶりして「講義」した、第3に適当にやっても視聴者に叱られることはないと、はなから思っていた、のどれかに当てはまるのではないでしょうか。


しかし、問題はそれだけではないでしょう。番組の制作を担当したプロデューサーの程度が表れているとも言えるでしょう。ばかなプロデューサーが担当した番組は、やはりくだらない番組になるものです。そして池上氏の「講義」を聞いて納得しているタレントもまたそれに見合ったタレントなのでしょう。さらにその番組をテレビで見て納得している視聴者はなんといえばよいでしょうか。やはりここにも日本のマスメディアが病んでいる構図的問題が顔を出しています。


クローリー国務次官補は既に恥を書きましたが、池上氏はこれから、つまり「天安艦」事件の真相が明らかになったときに恥をかくことになるのではと気に掛かります。