「天安艦」事件の真相、「北の仕業」の嘘-その2 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

李明博政権が公表した最終的調査報告は様々な点で疑惑をいっそう深めただけでした。もちろん日本のマスコミはこぞって李政権の嘘に乗せられていますが。実際合同調査報告が発表された21日の主要紙の社説を見ると次のように評価していました。「状況証拠に依存しているものの十分な説得力があり、妥当」(毎日)、「客観的で説得力がある」(読売)、「科学的で客観的な調査」、「信頼に値する報告書」(日経)、「報告書は具体的事実を網羅し、信頼に足る内容」(産経)。産経は一歩踏み出して「昨年11月の大青海戦への報復」であり、「断固たる制裁を発動すべし」だとまで言っています。産経の主張はまさに韓国の極右勢力が言っていることと同じです。思考のレベルまで同じようです。


しかしこうした日本マスゴミの評価がまったくのでたらめである事が、冷静な科学者らによって立証されています。


まず最初に、韓国当局が北による魚雷攻撃があった決定的な証拠だと言っている魚雷の残骸についてです。


魚雷と関連して提起される問題は2つあります。最初にはたして魚雷が爆発したのかということであり、つぎにその魚雷は北朝鮮産であるのかと言う問題です。第1点目から見ていきましょう。魚雷が爆発したのかどうかは、魚雷そのものの状態と爆発の際の現象が確認されているのかと言う問題を検討すればよいわけですが、魚雷の状態についてみるととても250キロもの火薬が爆発したとは思えないほど残骸がその形態を残しておりとても爆発が起きたとは思えません。しかしそれは様々な条件がうまくかさり合った結果として「ありうること」であり、したがって爆発が起きたかどうかはバブルジェット現象が果たして起きたのかと言う一点に掛かってきます。


バブルジェット現象が起きたかどうかを見分ける一番簡単な方法は高さ100㍍、はば20~30㍍に及ぶ水柱が立ったのかと言う点です。この水柱こそバブルジェットがともなうもっとも特徴的な現象だからです。これと関連した韓国当局の説明は二点、三点しています。


4月9日、国防部スポークスマンは「爆発」時に操舵室の両脇にある監視台に立って監視任務に従事していた2人の監視兵が水柱を見なかったと陳述していると明かしましたが、5月20日に調査結果を発表するときには顔に水滴を浴びたとの監視兵の陳述から見て中型魚雷が爆発したのは確かだと言葉を変えています。目撃者の陳述が180度変わったわけです。


しかしこの発表は疑惑をいっそう濃くしました。①調査報告のように幅20㍍以上高さ100㍍の水柱が2,3秒間も続いたとしたら監視兵が見なかったわけはないからです。②それに例えば高さ50㍍程度のナイアガラの滝ででさえ20~30㍍近くまで近づけば水浸しになるのですから「顔に水滴を浴びた」どころではないでしょう。③しかもバブルジェットがおきれば船体は逆V字型に大きく上に持ち上げられ、その後再び海にたたきつけられるわけですから、高い観測台に立っていた監視兵がその衝撃にも拘らず無事にその場に立っていられるわけはなく、海中に放り出されたはずです。③監視兵だけではなく乗船していた兵士全員が空中に投げ出されて壁や天井に頭や体をぶつけ酷い骨折やひいては頭を強く打ち志望することも考えられますが、監視兵はその場に倒れただけであり、救助された兵士を診察した首都病院長によれば救助された58人の内、酷く骨折した者は一人もおらず、大腿部骨折と靭帯破裂により手術したもの2人、脊髄八白骨折により補歩機が必要な患者が4人、軽い打撲傷が数人いただけです。④二人いた監視兵を含む生存者の誰も水を浴びていません。その場に倒れたという監視兵が滝のように落ちてくる海水を浴びないわけはないのですが、水柱に関する唯一の証言は「水滴を顔に浴びた」というものです。


韓国当局は「バブルジェット現象は垂直にではなく水平に起こることもある」などと言い逃れようとして再び追及を受けてからは、合同調査報告書を発表する一日前になって突然、白玲翎島で勤務していた兵士が「高さ100程度の白い閃光のようなものを見た」と証言しており、それが水柱であったと勝手に決め付けましたが、水柱に対する疑問が強まっていたことに対する焦りが作り上げた「証言」でしょう。


水柱の話はこれ位にしておきましょう。この問題はとくに科学的検証の必要もない単純明快な問題です。ここから出てくる答えは水柱はなかったということでしかありません。


つぎにより本筋の問題です。韓国当局は「爆発」した魚雷の残骸に「1番」と書いてあることを持って北の犯行の決定的な証拠だといっています。この問題は果たして爆発があったのかと言う問題と直接関係があるので見逃すことは出来ません。


この点を厳密な科学的根拠を持って論じた科学者がいます。
アメリカのバージニア大学のイ・スンホン物理学教授がジョン・ホプキンス大のソ・ジェチョル国際政治学教授との共同名義で京郷新聞に寄稿した文書に依れば250キロの爆薬が生むエネルギー量に根拠して計算した場合爆発直後の魚雷の推進後部温度は350度から1000度以上に及ぶと言います。


ところが魚雷に書かれているという「1番」とかいた青色の油性インク(韓国当局発表です)の成分であるクシレン、トルエン、アルコールの沸騰点はトルエンが110.6度C、アルコールが78.4度Cで最も高い沸騰点はクシレンの135度です。つまり魚雷が爆発しプロペラ部分の温度が最低150度以上になった時点で既に油性インクは燃えて消えていなければならないというわけです。


イ教授は魚雷が海中で爆発したということを前提にして海水の温度を4度Cとしして魚雷の爆発によって温度が150度以上に上がるために必要な熱を計算した所250キロの火薬が海中で爆発場合に発生する熱の13%だけが伝達されたとしてもその温度は150C以上に上がり、油性インクは燃えて消えるという結論を得ています。


しかも魚雷の腐食ははなはだしいのは表面に塗っていたペイントが燃えたまま長い間海中に沈んでいたためだと指摘して今す。魚雷のように腐食しやすい兵器をペイントでカバーするのは常識であり、実際韓国当局が証拠として提出した北朝鮮産といわれる魚雷も鮮やかな緑と赤でペイントされています。ところで推進体が腐食しているのは外部のペイントが爆発によって燃え、そのまま海中に沈んでいたために起きたものであるのは確実です。


ここで問題が起きます。外部のペイントが燃えてプロペラ部分に書かれた「1番」と言う文字が燃えていないのであれば、それを書いたインクの沸騰点が一番高いということになります。


ところで現在知られているペイントの中でもっとも沸騰点が高いのはシリコン、セラミック系列のペイントですが、その沸点は760度C程度で通常の油性ペイントの沸点は325度~500度Cだと言います。250キロの火薬が爆発した場合の温度は325度~1000度Cなので爆発したのであるならば外部ペイントは燃えてしまったと言うことになります。ところで腐食はもっとも後ろでもっとも外部にある操舵翼にまで至っているのでペイントを燃やした熱がそこまで至っていたと言うことになります。つまりプロペラ部分までが325度C以上にあがっていたことになります。となると沸騰点の高いペイントが燃えて消え去り沸騰点がより低い油性インクが残っていると言う、ありえない現象が起きたということになります。


この矛盾をとく唯一の事実は爆発はなかったと言うこの一点に尽きます。と同時にこうした科学的検証は魚雷が「北朝鮮産」であるという韓国当局の発表が嘘であることを示しています。提示された「残骸」は別の方法で手に入れた別のものだと見た方が言いでしょう。


そこで問題がまた起きます。では合同調査団はこうした科学的検証をしなかったのかと言うことです。答えは一つ、しなかったのです。では何のための合同調査団なのかと言う問題が出てきます。それは連載の後半部分で扱うことになるでしょう。(つづく)