朝鮮、5年かけ8大都市インフラ開発へ | 朝鮮問題深掘りすると?

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朝鮮がピョンヤンと南浦、羅先、元山など8都市に5年間をかけて1200億ドル相当の資金を投入し、都市インフラを開発する計画に着手したといいます。朝鮮大豊国際開発グループのパク・チョルス総裁が16日、明らかにしました。


パク総裁はこの日、平壌で共同通信とノインタビューに応じ、このように明かすと共にこの開発プロジェクトは経済再建のための10年計画の一環だと発言しています。ここで言う経済再建とはひと言で強盛大国への進化を意味していると見た方が良いでしょう。


なぜなら朝鮮は2012年には強盛大国の扉を叩くという目標を掲げていますが、それはいわゆる経済再建の過程が終わることを意味すると思えるからです。管理人の予想では、強盛大国の扉を叩いた後の一定期間、緩衝期があると思えるのですが、この8大都市インフラ開発はこの緩衝期間に完全に終了すると見られます。


パク総裁は、この開発計画には韓国、日本の他に隣国の企業の投資を希望するとし、この計画は「東北アジア経済共同体の設立にも寄与すること」にその意義を見い出しています。彼は「日本とも密接な経済的協力関係を構築することを希望する」しながら「両国間の経済交流を阻止する日本の制裁を撤回すべき」だと主張しました。

また国連の制裁措置のために投資計画が困難にぶつかるのでは、との質問に対し「大豊グループの活動は(国連制裁)決議案に違反しない」としながら「国家が投資者の利益を法的に補償すれば、難関を突破する事ができるはずだ」と述べています。


この都市インフラ開発計画が適用される年は平壌、南浦、咸興、元山、金策、清津、新義州、羅先など主要8都市です。元山は日本との経済交流が再開するときを念頭に置いているのかも知れません。


現在朝鮮は食料、鉄道、道路、港湾、電力、エネルギーなど6分野で経済インフラ構築計画を立て,、その実現に邁進しています。またこれに従って平壌-元山-羅先、平壌-開城、恵山-金策を結ぶ鉄道と道路を画期的に改善し、これを土台に各地域の開発を同時に進めるという計画を立て、やはり駆動を開始しています。電力では5年と10年に段階を分け新たな電力生産基地と送電網を建設するとしていますが、8都市の都市インフラ開発はこの計画と繋がっていると思えます。



例えば鉄道、道路の「画期的改善」は鉄の都市(降仙=千里馬降仙製鋼連合企業所、金策=金策製鉄連合企業所、清津=清津製鋼連合企業所)と産業(平壌、南浦、恵山、咸興、新義州)、貿易都市(南浦、元山、羅先)を結び、日本とは違って都市が農村と深く結びついているので、全般的な地方の開発と直接つながると言うものです。


日本の植民地から解放された当時の朝鮮は、旧李朝時代の封建的残滓をそのまま抱き込んだままで歪でとても近代的とはいえないものでした。植民地権力であった日本総督府は、朝鮮を何よりも戦争の背後地、兵站基地としてので朝鮮の産業を「開拓」し、都市機能もそれに従属させてきました。そのため開放当時の朝鮮の都市は畸形的発展を余儀なくされ、ライフラインや都市インフラはまったくの手付かずといっても良いほどでした。本格的な都市開発は朝鮮戦争によって廃墟と化した都市を復興するのに集中せざるを得ませんでした。これを第一次開発だといっても良いでしょう。


そして引き続く軍事的緊張と絶え間ない戦争の危機は、都市インフラの整備よりも軍事力開発に力を集中させざるを得ない状況を作りました。そのためライフラインやインフラ整備は比較的におざなりにされた面は否めません。その後、1980年代に入って平壌や、咸興、元山、南浦、新義州などの都市開発が続きましたが、1990年代初頭の社会主義市場の崩壊と冷戦の終焉による孤立化の時期が続き、さらに経済制裁、相次ぐ自然災害などで経済が苦境に陥るなどして、地方都市などでは生産がストップするなど、とても都市インフラ開発に力を注ぐ余裕などありませんでした。


しかし先軍革命路線に従って苦境を乗り切り、いまや経済がほとんど回復し、2012年には強盛大国の扉を叩くとして経済建設に邁進してきました。8大都市のインフラ開発計画は、その経済建設がどの程度進み、どの時点におり、何を最終的目標としているのかを良く示しているとは言えないでしょうか。


つまり8大都市インフラ開発計画は都市インフラだけではなく地方都市開発=農業開発とも密接に繋がっており、民衆の生活を画期的に向上させるという現実的目標を目指している、全般的経済開発の重要な一環だと見ることが出来るわけです。そしてこれは10年に4000億ドルを投下すると言う野心的な国家開発戦略の一環だということも忘れてはならないでしょう。例えば8大都市インフラ開発計画とは別に、中国の長-吉-図開発戦略と繋がる羅先地帯の開発がありますが、8大都市インフラ開発計画はこれとも繋がっていることからもそうしたことが考えられます。


現在陸続きの朝鮮、中国、ロシアの経済的結びつきは急速に拡大しています。それは東アジア経済共同体へと向かう道のりでもありそうです。既にロシア-モンゴル-中国、中国-ロシア極東、そして朝鮮-中国、朝鮮-ロシア極東の経済的つながりは稼動しています。8大都市インフラ開発計画はこうした多国間循環的経済協力と決して無関係ではないでしょう。


日本のマスメディは相変わらずデノミ失敗→経済的苦境のみを喧伝していますが、仮に通貨交換で一次的混乱があったとしても、それが朝鮮の経済を規定しているわけではありません。事実最近朝鮮に言ってきた在日の方々に聞いてみると、今は完全に落ち着いており、生産と人々の生活は活気をおびていると言います。一時的現象にあたふたしてはならないでしょう。


また通貨交換によって損をしたと言う人々はいるでしょうが、多くの場合、それは彼らが不当な利益を得ていたことの裏返しですので、仕方のないことでしょう。その彼らの口から出る不満は逆恨みの類であり、それだけを持って朝鮮の人々の気持ちを判断するのはいかがなものでしょう。ある現象に直面した場合、それに対する解釈や感情、とりあえず取ることになる対応は地域や人それぞれであり、そのなかの一つだけを抜き出して総体を判断するのは危険なことです。しかし日本のマスメディアのほとんどがその愚を冒しているようです。


もっともそうした現象が無いと言っているわけではありません。大事なことはそうした現象が支配的であるのかどうか、それともそれとは違った現象があり、そちらの方が支配的であるのかどうかという、総体的な判断が求められると言うことです。そうでない場合、例えば北朝鮮経済が沈んでいるといった判断だけでは大豊グループの野心的計画(それは北朝鮮政府の計画でもありますが)など想像だに出来ないことになってしまいます。そしてそれは結局、北朝鮮の今後を予想することができなくします。


新聞やテレビのニュースの寿命は僅か一日弱に過ぎませんが、それによって焼きつけられた印象は比較的長く続きます。その間、人々の思考はその印象に支配されることになります。ここにマスメディアの怖さがあり、それこそメディアリテラシーが望まれる所以です。努々用心しましょう。


ところで大豊国際投資グループとは、国際金融機構、国際産業銀行などと取引をしており、国家政策による重要対象への投資業務を行う朝鮮国防委員会に所属する国家開発銀行の対外経済協力機関であり、この銀行に対する投資誘致及び資金源泉を保障する経済連合体です。今後もその動きを注視すべき対象だと思われます。



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