橋下知事またも妄言 蔑視発言続く(下) | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

ニューマンライツ・ナウとは法律家、研究者、ジャーナリスト、NGO関係者などが主体となって、国内外の開発・平和・人権NGOと共同し、主にアジア地域での人権分野における国際協力・国際貢献活動、国連など国際社会の場における人権活動、国内での国際人権基準の啓発・実現のための活動を行ている団体です。


ヒューマンライツ・ナウは、2日、高校授業料無償化からの朝鮮学校除外に反対する見解を発表しました。市民社会フォーラムのブログに掲載されたものをそのまま紹介します。首相、関係閣僚、全政党に対しこれを送付し、国会議員への要請を行う予定です。ヒューマンライツ・ナウの見解は政府に対する要請書という形で公開されましたが、市民社会フォーラムブログに全文が掲載されています。
http://civilesociety.jugem.jp/?eid=3599


ヒューマンライツ・ナウの要請書は「2.朝鮮学校排除は、明らかな憲法・人権条約違反」の項で「ところが、現在、政府部内で、朝鮮学校のみを無償化の対象から除外するという案が浮上しています。公立、私立、そして様々な外国人学校を含む各種学校が全て無償化されるなか、朝鮮学校のみを排除することは、明らかに合理性のない恣意かつ重大な差別であり、日本国憲法の平等原則に抵触し、日本が批准した各種国際人権条約にも明白に違反」していると指摘しています。そしてその根拠として


1)経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(社会権規約)
社会権規約13条2項Cは、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」と定め、国籍等による差別を認めていません。


また、社会権規約第2条2項は、「この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する」とする無差別原則を宣言しており、社会権を漸進的に実現する場合も無差別が貫かなければならないことは締約国の義務として明らかです。


2) 憲法、子どもの権利条約その他の国際人権条約
日本国に在住する者は、その国籍や民族を問わず、いかなる不合理な差別的取り扱いも受けない権利を有し(憲法第14条、自由権規約第26条)、特に民族的少数者の子どもたちは、母国語による民族教育を等しく受ける権利が保障されなければならない(憲法第26条、自由権規約第27条)。


子どもの権利条約は、28条1(C)は、高等教育に関する均等な利用の機会の保障を締約国に義務付け、また「文化的同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民的価値観」(同29条)、「自己の文化を享有し」「自己の言語を使用する権利」(同30条)の保障を義務付けており、朝鮮学校の教育内容を理由に均等な教育機会保障において差別取り扱いをすることは許されない。


3)あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)
人種差別撤廃条約第2条は、「各締約国は、個人、集団又は団体に対する人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並びに国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する(第2条第1項(a))と定め、同5条は、「第2条に定める基本的義務に従い、締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族 的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。」とし、


その対象には(e)経済的、社会的及び文化的権利、特に、(v)教育及び訓練についての権利が含まれることを明記している(人種差別撤廃条約第5条第(e)項(ⅴ))。 朝鮮学校のみを無償化の対象外とすることは、人権の享有にあたり特定の人種を差別する措置にほかならず、明らかに人種差別撤廃条約に違反するものだ。2月25日に開催された国連人種差別撤廃委員会でも、朝鮮学校の除外について専門家の間で懸念が相次いでいます。
と指摘しています。


橋下知事がこれを知っていたとは思えません。いくら弁護士でも民事専門で「社会的正義」や人権などといった問題とは程遠い、「商売としての弁護士活動」に励んできた方らしいので、管理人がそこまで要求するのは酷でしょう。しかし問題が発生したら、弁護士として最小限の調べはすべきでした。まだ調べていないとしたら、いまや公人なのですから己の発言の重さを自覚し、研究の後に答えるのが当然でしょう。あまりにも偏向的で軽々しいと言う非難は否めないでしょう。


橋下知事とは正反対の主張をする識者らの声を紹介します。鳩山政権が高校授業料無償化の対象に朝鮮学校を含めない検討をしていることについて、京都ゆかりの識者や宗教家らが2日、「国際的視点からも、法の下の平等原則からいっても許されるべきではない」とする要望書をまとめ、鳩山由紀夫首相と川端達夫文部科学相あてに送付しています。


著名な哲学者の鶴見俊輔さん、臨済宗相国寺派管長の有馬頼底(らいてい)さん、国際日本文化研究センター名誉教授の山折哲雄さんら13人の連名で、朝鮮学校のカリキュラムは学習指導要領に準拠し、行政や市民の見学も実施されて公開性に問題はないと指摘市ながら、拉致問題と関連づけるような意見は「外交・政治問題と教育問題を短絡させたものだ」と批判しています。


記者会見した京都大名誉教授の上田正昭さんは「政治によって日本の教育の未来が左右されることは望ましくない。事態を憂う人はたくさんいると思う」と話し、今後も賛同者を募る考えを示しました。


橋下知事の発言とは論理性、人権意識、国際法認識、平等意識のいずれにおいてもはるかにレベルが違います。幼稚な2チャンネル書きこみ人並と言えばいいのでしょうか。


TV向けの短絡的な刺激的発言が人気を呼ぶとそれにしがみ付く、タレント性豊富な「知事」にはこうした冷静な声は届かないのでしょうか。人権意識、平等意識が希薄な橋本知事が大阪府民の生活を果たしてどれだけ守ることが出来るのか心配です。大阪の国際化はとても望めないようです。