中国が米中韓非公開政府系国際会議で対北「制裁」解除を主張 | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

昨日のブログで日本が、北朝鮮のいわゆる「緊急事態」の収拾過程に参加する権利が有るという、馬鹿げた主張を繰り返した米日韓の協議(半官半民のシンクタンクによる会議)について書きましたが、それに続いて翌日午前に開かれた継続会議(米中韓の非公開会議)で、中国が米日韓を驚かせる発言をしていたと言う貴重な情報が入ってきました。


やはり自由アジア放送(RFA)がインタビューに応じたアメリカ側参加者からで聞き出したもので、4日に放送されました。


RFAによるとその参加者は、中国側参加者が「中国側は予想よりも強硬な態度を見せた」としながら次のように述べたと言います。


「対北制裁を解除し、北朝鮮を事実上の核兵器所有国家として見なければならない」
「平和体制の論議の過程で、駐韓米軍を含む韓米同盟問題も扱わなければならない」
「(平和協定締結後にも駐韓米軍が)引き続いて駐屯するようになれば、海外駐屯米軍の戦略的柔軟性の概念に基づき、中国を的にするのではないのか検討しなければならないと言うのが中国の立場」だ。


またインタビューに応じた専門家は、「中国側が朝鮮半島平和体制論議の際に、1990年代後半の4者会談当時よりもより積極的な姿勢を見せながら、東北アジアの新しい安保秩序を中国側にいっそう有利なものにしようと努力するだろう」と語ったとも伝えています。


さらにRFAは中国側が平和協定を巡る協商の開始時期について、「6者会談に先立って平和協定問題から論議を始めようと言う北朝鮮の主張に同調しないまでも、「6者会談開催と同時に平和体制問題の論議をはじめよう」との立場を取ったとも言っています。


中国側のこの主張は、討論に先立つ基調演説で、対北朝鮮問題特別代表のボズワースが北朝鮮がまず6者会談に復帰し、非核化に対する誠意を見せれば平和体制問題をはじめ他の問題を北朝鮮と論議することが出来ると」アメリカ側の既存の主張を繰り返した後に、なされたものでした。


つまり、中国側の発言者はボズワースの言ったアメリカの基本的主張を否定し、その変更を求めたものだと言っても良いでしょう。


米韓両国の参加者らは驚いたでしょう。中国側が例え政府発言ではないにしても、3国の半官半民オシンクタンクによる非公開国際会議での発言です。当然政府の姿勢が反映されていると見るべきでしょう。つまり中国政府の口に出さない思いがここに現れていると言うべきでしょう。


ところで「朝鮮半島平和体制問題」に関する中国の立場をここまで明け透けに言うのは珍しいことです。実は中国のこうした姿勢は、すでに2008年5月27日に中国外交部の秦剛代弁人が、それをにおわすような発言をしていいます。彼は米韓同盟について政府の見解を求めた記者に対して「冷戦時代の軍事同盟をもって当面の安保問題を処理するのは不可能だ」とし米韓同盟を「歴史が残した産物」だと発言していたのです。この発言はまさに韓国の李明博大統領が訪中したその日に報道されました。中国の姿勢はすでにはっきりしていたのです。問題があるとすれば、中国外交部代弁人の発言を軽く流した方にあると言うべきです。


ところで中国側の主張は、ほとんど北朝鮮の主張に近いものでした。北朝鮮はすでに「先平和体制問題、後6者会議復帰」の主張を譲歩し、6者会議開催と同時に平和体制論議(従って朝米平和協定締結問題の論議)が開始するのならと、言葉を変えてきています。アメリカに対して譲歩の構えがあるということです。これは3国会談に参加した中国側の発言と通じるものがあります。


中国側がこのように強硬に出ているのは、アメリカ政府の台湾への武器供与決定に対する反応のひとつとも受け取れますが、中国が現状打開に向けて積極的に動き始めたと言うことを示すものだともいえるでしょう。こう見ると、早ければ6日にも可能性があるといわれている中国共産党の王家瑞対外連絡部長の訪朝についても再度考え直す必要がありそうです。


日本のマスコミは一斉に北朝鮮の6者会談復帰が「まじか」のような印象を与えていますが、逆に平和協定―平和体制問題での朝中の意見調整と共同対処の問題で協議する可能性も生まれてきます。


北朝鮮社会に対する理解度、他国に比べ圧倒的な北朝鮮情報量に基づく中国の立ち位置と、独自情報がまったくなく不完全で、信用のおけない風聞に頼るしかない日本政府の判断の開きの大きさが、国際会議での発言の差に表れていると言うことでしょう。


日本のマスメディアはここまで読むことが出来ないようです。