携帯電話今後5年で数百万台普及も | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

北朝鮮での携帯電話の普及が急速に拡大しているようです。韓国の連合ニュースが3日、「北朝鮮で携帯電話事業を行っているエジプトの通信会社オラスコム・テレコムが携帯電話の加入者数を今後5年内に数百万人に拡大すると明かした」と伝えています。イギリスのファイナンシャル・タイムズの記事を引用してものです。


それによるとファイナンシャル・タイムズは3日付け記事で、「北朝鮮の携帯電話化入社が初年度に10万人を越えた」とし、このような事業拡大計画(今後5年間で数百万が加入)は、北朝鮮が2012年までに強盛大国になるために(ファイナンシャル・タイムズの記事がこのように書いているのか、連合ニュースが勝手に解釈しているのか良く分かりませんが、いずれにせよこの用言は間違っています。北朝鮮は2012年に強盛大国の扉を叩くと入っていますが、「強盛大国になる」とは言っていません)、外国人投資誘致努力を強化する過程で生まれたものだと解釈していると連合ニュースは伝えています。


ファイナンシャル・タイムズによると、オラスコムのカレド・ビチャラ会長は「われわれは経済復興のための極めて巨大な計画があると判断している」としながら、「北朝鮮は本当に2012年までに遥かにより強力な経済を願っており、携帯電話と国際通信がその一環になると見ている」と語ったと言います。


このオラスコムは持分75%の資金を投入し、自社であるコリョ・リンクを通じて2008年12月から3G方式の携帯電話事業を開始しました。


ビチャラ会長は「ピョンヤンと南浦でネットワークを拡張するために北朝鮮が光ケーブルを敷いている」としながら、具体的な数値は提示しないまま「今年、野心に満ちた加入者数を確保すると言う目標を立てている」と強調したと言います。


また移動通信が軍隊や、共産党(北朝鮮に共産党はありません)のエリートに限定されていると言う主張は、加入者数を見れば間違った推測であることがわかるとも言っています。


またビチャラ会長は「現在北朝鮮では音声電話および文字メッセージサービスが提供されているが、設置中のネットワークが優秀なので国際電話やロミング・サービスをはじめるのも簡単だ」と指摘しています。

ファイナンシャル・タイムズは、「携帯電話の本体価格だけでも140ユーロであり、大部分の人々はこれを所有することが難しい」と書いていますが、やはり北朝鮮の国民生活についてよく知らないようです。実際、オラスコムがそんな初歩的なことも知らないで携帯電話事業を行っているとは思えません。需要があり、購買力が有るからこそそうした野心的計画を立てていると思うべきでしょう。そうでなければ撤収を考えているはずです。ファイナンシャル・タイムズの「心配」は杞憂であり、無知の露呈でしかありません。


ちなみにオラスコム社は観光、金融、交通分野にも投資しています。管理人の記憶ではピョンヤンに進出してすでに4、5年ほど経過しているはずです。

ファイナンシャル・タイムズの記事は、北朝鮮の経済が紙幣交換後に混乱に陥り、人民生活が急速に疲弊しているといったセンセーショナルな記事とは、まったく相反する内容です。140ユーロもする携帯電話が急速に普及しており、今後5年間でそれが数百万台にまで(従って地方にまで)拡大するといったオラスコム社の展望とはまったく相容れないのです。現地で事業を展開している当事者の言質を信じるか、手前勝手な判断に基づく風聞に乗せられて書かれている記事を信じるか、答えは自ずとはっきりしているでしょう。


蛇足ですが、実はオラスコム社はサンウォンセメント連合企業所にも投資していたのですが、2年前に世界最大のセメント会社であるフランスのラファージュセメントにその持ち株を譲渡してます。そう、麻生元首相の麻生・ラファージュセメントのラファージュです。経済制裁の対象にならなくて良かったですね。もし、そうなったら麻生元首相はどうしたでしょうか。ラファージュのほうで腹を立てて資本を引き抜くことにでもなったら大変だったでしょうに。