寄付?いや「マネー・ロンダリングの新手法」? | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

反李明博を明確にした時局宣言が相次ぎ、李明博政権退陣闘争へと収斂していく傾向が強まっている中で、青瓦台(大統領府)は6日、李明博大統領が大統領選挙の際に票集めの手段として打ち出した財産献納公約を、財団設立と言う形で果たすと発表した。ソウル河南区の不動産を基本にした331億ウォンの資産で、自分の雅号「清渓」を付けた財団を設立するというのだ。韓国の三大紙は大きく取り上げ、李大統領の「美行」だと称えており、日本各誌でも報道された。純粋に財産を社会の役に立てたいという心情から出たものであるならばけちを付けるような問題ではない。


だが、具体的な内容を見ると、どうもがてんの行かないところが多く、韓国でも疑惑の視線で見られているようだ。

実際に財団の理事、理事長は李大統領自身が直接任命しているが、大統領の婿や大學の同級生、腹心などで埋められている。


理事長は大統領就任準見委員会の諮問委員であったもと法務長官。理事の陣営を見るとMB政権の初代大統領室長であったリュ・ウイックソウル大教授、李大統領の娘婿のイ・サンジュ弁護士、高麗大同窓で親友のキム・スンユハナ金融持ち株会長、大統領候補当時の政策諮問団の一員であったユ・ジャンフィ梨花女子大名誉教授、サービス産業先進化民官合同委員であったパブリシスウェルコムのムン・エラン代表、大統領選挙当時、李大統領支持者団体「フォーラム・グローバル・コリア」の顧問であったイ・ジェフ弁護士など。また監査には故郷の親友であるセイルENCのキム・チャンデ代表、サムジョンコンサルティングのチュ・ジョンジュン会長が就任する。

財団がこのように李大統領系の人物で占められており、「財団運営の透明性が保たれるのか」という疑惑が噴出しているのだ。

こうした疑惑について青瓦台のイ・ドングァンスポークスマンは「まったく問題ない」「最高指導者が在任中に財産の大部分を社会に寄付したのは世界政治史で類例の無いこと」としているが、疑惑の声は尽きない。


ネチズンの間では「国民に寄付したというが実際には子息に財産を残そうというもの」で「新概念のマネー・ロンダリング」との声をはじめ、「寄付と言う言葉を切り捨て、そのまま財団の設立と言え」「独裁時代には陸英(朴正熙の妻の名から取った)財団や、日海(全斗煥の雅号から取った)財団とか言っていたが、今度は清渓財団か」「寄付でなく財テクだ。腐敗した人脈を動員して管理し、財産をいっそう増殖させようとするのは寄付とは言わない」「右手から左手に移しながら社会還元?」「多くありすぎるのが財団なのに何故また作るのか?」などと、いった言葉が相次いだ。


このように疑惑を感じる人々が多いのにはいくつかの原因がある。まず、発表の時期だ。財団設立の発表までに時間がかかり過ぎた。大統領当選後ほとんど19ヶ月もかかっているのだ。その間に李MB政権の支持率は低空飛行を続けており、特にノ前大統領の自殺は、現MB政権の道徳性までまな板に乗せている。今では退陣を要求する時局宣言が相次いでおり、世論を形成しつつある。野党民主労働党と民主労総は退陣闘争を展開するといっており、韓国の政情は極めて不安定である。こうしたときに突然の財団設立の話だ。国民がダメだと決め付けつつあるときの、窮余の「名誉挽回策」として思いついたのではと疑われる素地はある。


さらに何よりも監査役のチュ・ジョンジュンが、「税風事件」と呼ばれる、97年の大統領選挙当時に国税庁調査局長にいながら、ハンナラ党のイ・フェチャン候補のために現代、SK,大宇などの大企業23社から166億3000万ウォンもの資金を不正に集めた大掛かりな不正選挙資金事件で首謀者的役割を果たし、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年、追徴金2500万ウォンの実刑を宣告された人物である。
そのような人物が監査役におさまることになるわけなので、「財産増殖、マネー・ロンダリングの新たな手法」といわれても仕方のないところだろう。


財団なんかを作らずに、公益団体に寄付をするとか、零細企業を対象にした金融支援に使うとか、不当に解雇された労働者の生活資金に回すとか、他にやりようがあったろうと思うが、公約を守りながら名前と財産を残すには、一番手っ取り早いやり方だと判断したのであろう。元来独裁者は姑息な手を使うと良く言われるが、李大統領も例に漏れないようである。はたして道徳的評価は上がるのであろうか?