李政権は民主主義に「無賃乗車」 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

韓国での「民主主義回復闘争」が引き続き拡大している。たたかいは各界各層の時局宣言の発表、民主労総による労働運動の拡大という二つの流れを形成しながら、野党民主労働党と民主労総の打ち出した李明博政権退陣実現闘争に収斂していく様相を帯び始めている。


2日には、絵本作家、翻訳家、作家、評論家ら264人が参加している「より良い世の中を夢見る児童作家の集い」が、時局宣言を発表した。時局宣言参加者らは「子供たちに正しい世の中を見せ、間違ったことが起きた場合には、それと正面からたたかわなければならないということを見せたかった」と心境を語っている。
時局宣言は国政運営を間違えた李明博大統領の謝罪、ハンナラ党が推進しようとしている非正規職法、メディア法など悪法の即刻中断、時局宣言を出した全教祖教員に対する懲戒撤回と集会の自由の保障、解雇労働者・非正規労働者との疎通、4大河を殺す事業と智異山ダム建設計画全面中断などを要求した。


 また同日人気漫画家236人が、漫画で書いた時局宣言を発表している。時局宣言は「2009年夏、大韓民国の民主主義は何処に向かっているのですか」と題しており、「李明博政府が登場してから、われわれは築き上げてきた民主主義が嘘のように瓦解していく現実を、頭でなく体で感じている」と李政権を叱咤している。
彼らは「われわれはこの暗澹たる中で逆説的に民主主義の大切さを再び体感している」「これからはもう二度と民主主義を軽く考たりしないであろう」と指摘しつつ、「民主主義に無賃乗車した李明博政府は国を統治するといった傲慢さを捨て、謙虚に民主主義の専門家である国民の言葉を聞くべきだ」と一喝した。
彼らはオフ・ラインでの別途の活動はせず、個人作家のブログやホーム・ページ、漫画関連カフェ、協会団体ホームページなどを利用して時局宣言闘争を拡散、流布していく計画を立てている。漫画ストーリー作家、漫画評論家、漫画教育者らもこうした動きを支持しており、宣言署名も引き続き受け付けるという。


一方、警察当局は3日、時局宣言を出したことで当局の矢面にたった全教組の本部事務所に対し、時局宣言を理由に家宅捜索を強行した。、
こうした弾圧に対して全教組は「同じ公務員である国公立大学教授らによる時局宣言は問題にせず、全教組だけを弾圧するのはまさしく「魔女狩り」であるとし5日、ソウル駅広場で「表現の自由と時局宣言弾圧中止、競争教育反対全国分会長決議大会」を開き、全面抗争の姿勢をはっきりと見せている。


全国16の市、道9千余分会から上京した1500余人の代表が参加したこの決議大会でチョン・ジンフ委員長は「ただ一つ。死ぬことはあっても捨てることの出来ないわれわれの良心、正しいことは正しいと、間違ったことは間違ったと言わなければならないこの地の教師として、われわれの良心だけは決して捨て去ることは出来ない」とし「これが国民がわれらに与えた義務であり、全教組の歴史である。これだけは絶対に守り通す」と強調した。
大会に参加した「正しい教育のための全国学父母会」のチャン・ウンスック会長は「全教組草創期の『全教祖教師鑑別方』と同じように今も『学生の人権を尊重する教師』『時局宣言教師』『競争教育に反対する教師』など『全教組教師鑑別方』が、公文として出ているのを見るとあきれて物が言えない」「民主主義を叫ぶ時局宣言の声を聞かずに弾圧しているのに、われわれが闘士となり、力を合わせて正面から立ち向かわなければならない」と訴えた。
大会は7月15日まで「民主主義守護教師時局宣言」のための、署名運動を展開することを決めた。第2の時局宣言と言うわけだが、すでに草案が出来て全教祖の各分会での検討が始まっている。

他方労働運動を見ると、民主労総は4日、全国からの代表者1万余人を結集した全国労働者大会を、ソウルの産業銀行前で開催し、非正規職法およびメディア法の改悪阻止、双龍自動車集団解雇撤回を要求した。
大会では特に政府と国会が、「施行猶予」を骨子とした非正規職法改悪案を、国会本会議に上程した場合、即刻ゼネストに突入する方針を決定している。同時に双龍自動車平澤工場に公権力が投入された場合にもゼネストで打って出るとしている。
韓国では非正規職労働者として2年務めれば、正規職員として雇うことを会社側に義務付けている非正規職法が、07年に制定され今年7月1日から施行されることになっていたが(つまり、07年から2年間非正規職で我慢してきた労働者は今年7月1日から正規職になるはずだった)、この非正規職期間を延長するか、法そのものの「施行猶予期間」を設定する方向で法を改悪しようとしている。


またメディア法は新聞財閥(東亜、中央、朝鮮新聞)のTV株所有枠制限を取っ払うことで、マスメディアの独寡占を許そうというもの。これが通れば上記3者のメディア支配率は実に70%近くに上ると見込まれている。
民主勢力はメディア法は、政府の意向に沿った世論つくりにメディアを動員し易くするところに狙いがあり、まさに言論民主主義の破壊であるとして強く反対している。そのためメディア法に対して言論社が行った全ての世論調査はハンナラ党のメディア法案に強く反対しており、放送学界の学者,、現職の記者、PDの圧倒的多数が反対している。つまり国民、専門家のほとんどが一致して反対している悪法だ。

そのため当ブログでも紹介してきた各界各層の時局宣言でも、共通して非正規職法案の改悪とメディア法の制定を民主主義と国民のいきる権利を剥奪するものだと指摘している。


日本の労働界、言論界や民主勢力が、韓国でのこうした民主主義守護闘争を全幅的に支持し、支援運動を展開するのもやはり、良心の問題であろうか。少なくとも「派遣村」現象を見れば、非正規雇用の問題は日韓に共通しており、共闘も可能だと思うのだが、なぜか日本の労働界は韓国での労働運動に極めて疎い。それも歴史的に。これでよいのだろうか。日本の労働運動はやはり死滅したと思わなければならないのか。