米では否定的評価が上、日本は「梯子を外された」? | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

今日は、書くことが二つある。

一つ目はこれだ。

MSN産経 ニュース国際(2009.3.25 23:56)は、2001年までミサイルなどの兵器実験評価の責任者だったコイル元国防次官補とのインタビュー記事を載せている。それによると
①日米のイージス艦に配備されている海上配備型迎撃ミサイル(SM3)で迎撃する可能性は「(成功するとは) 想像できない。イージス艦による迎撃の問題点はミサイルの速度が遅いことだ」

②キーティング司令官は実験の成果を強調したが、 「このシステムはもともとイージス艦自身やその周辺を防御するために開発されており、迎撃可能範囲は狭い。実験ではよい確率を残しているが、標的にあたるよう『台本』が設定されていた。迎撃するには、飛行するミサイルの近くにいないといけない」

③ミサイルが軌道を外れ、日本の領土に落下してきた場合については 「2001年初頭、発射に失敗し、回転しているミサイルの一部を迎撃する実験が計画されたが、いまだに実現されていない

④アラスカ州とカリフォルニア州に配備されている地上配備型迎撃ミサイルが、迎撃する可能性は 「これまで14回迎撃実験を行い7回成功した。成功の確率は5割といえるかもしれないが、過去5年間でみると、6回の実験で4回は事実上失敗だった」

⑤キーティング司令官らは迎撃に自信を示したが、 「20回以上実験に成功しなければ、MDが効果的ということにはならない」

 コイル元国防次官補は2月下旬の米上院軍事委聴聞会でも悲観的意見を述べている。

この発言に従うと、政府の「迎撃」騒ぎが、何を目論んでのものなのか気になってくる。不可能なものを「出来る」と言って強行しようとする理由は何か?しかも失敗して落下するのを撃ち落す実験などしたこともないといっているが、自衛隊は落下速度が遅いので命中させることが出来るという。

はっきりしているのは、開発した国でも専門家や軍人、開発に直接参加した者の多くが疑問視しているものを何故、「出来る」と強弁するのか。

なぜ産経は、一方ではコイル元国防次官補のインタビューを載せながら、他方では北ミサイル迎撃 技術・法制面からは撃墜可能」などといった矛盾した記事を平気で書けるのか。

コイル元国防次官補の発言は当然、外務省や自衛隊にも伝わっていよう。

だとしたら、当然「迎撃」ではなく、別の対処法も考えておくべきであったのではなかろうか?

だが、首相、防衛相、外相は初めから「迎撃」で固まっていた。自ら選択肢を捨てたのである。

理由があるのであろう。こうした選択が、巷で言われているような不人気からの脱出、総選挙に向けたパフォーマンスだとしたらなんとも稚拙すぎる。

米国の判断はいまや北朝鮮の衛星発射は「成功する」の方向に傾きつつあり、最大の関心は成功した場合、対面が傷つかないように安保理でどう対処するかに移っている。

日本はどうなのか。またもやアメリカに従い、その場しのぎの苦しい言い逃れで終始するつもりなのか。


二つめだが、産経新聞のトンチンカンな記事を一つ。

29日、午前7時44分の配信でヤフーニュースに載ったもの。内容は北朝鮮が衛星ロケットとは別に複数の短・中距離ミサイルの発射準備を進めていることが、複数の政府関係者の話でわかったというもの。

事実かどうかは一民間人に答えられるはずがなく、なんとも言えないが、笑えるのはコメントの中で「(これは)「衛星」打ち上げとの北朝鮮の主張が矛盾に満ちていることを示している」と、トンチンカンなことを強気で言っていることだ。


もっとそれらしい想像はできないものか。例えば北朝鮮は「迎撃」等には、実力で報復するといっているが、その準備ではないのか?日本は「迎撃」すると息巻いてきたのだから、向こうが報復の準備をするのは当然であり、もっとも実効性があり、短期間に終わらせる報復攻撃といえば、すぐに頭に浮かぶのが短・中距離」ミサイルによるイージス艦や、PAC3を配備した軍事基地などに対する攻撃であろう。

こう考えるのがより現実的であり、論理的である。

衛星発射と短・中距離ミサイルの発射準備は別物である。かりに短・中距離ミサイルの発射準備が行われているという話が本当ならば、いよいよ政府は覚悟を決めるべきであろう。

アメリカは早々とミサイル迎撃はないと姿勢を変えた。ヤフーニュースによれば、時事通信は30日0時5分の配信記事で、ゲーツ米国防長官は29日、FOXテレビの番組で、北朝鮮が発射を予告した弾道ミサイルとみられる「人工衛星」について、「ハワイに向かって来るようなら(迎撃を)検討するが、現時点でそのような計画があるとは思わない」と述べ、米国の領域を標的としたものでない限り、米軍がミサイル防衛(MD)で迎撃することはないとの見解を示した、と伝えている。

日本は、また梯子を外されたのであろうか。