郊外にある平屋の古民家を買ったのは、ネコ、夏との生活、親の遺産、いろんな要因が自然にそうさせた結果だった。
とはいえ、遺産が大金のわけもなく、空き家を買ってスッカラカンな彼らはリフォームを自らする羽目になった。しかし、それもまた楽しかった。
彼のバイト、彼女のパート、いずれは会社勤めをして、結婚するのだろうな。
漠然とした、しかし確信的な思いがあった。
なのに…。
突然の事故だった。夏も彼を置いて逝ってしまった。
潤伍には、目付きの悪いトラ猫だけが残された。
拾いたての頃は可愛かった子猫も、1年も経つと目付きの鋭い立派なボス猫風になっていた。
「ハギ?」
「おはぎみたいな色してるから」
それってきな粉じゃないのか?と聞いた彼に、きな粉だと女の子みたいだから、という理由で名付けたのは夏だった。
彼女の亡骸に擦り寄るハギに怒鳴ったりもした。
「何で…何でお前だけが残った!夏が居なきゃ意味ないだろ!」
ぶつけ所のない悲しみは怒りとなって猫を部屋の隅へと追いやった。
夏が思い出されて辛かった時期は、罪悪感と戦いながら公園に捨てに行った事もあった。しかし、翌朝になると喧嘩の後だろうか、傷や血で汚れたトラ柄の身体を丸めて玄関前で待っているのだ。
なついてる訳でもないくせに、彼から離れることはなかった。
後悔の念は今でも潤伍の胸を刺す。
経験したことのない盛り上がりを見せた何十年ぶりかの母国でのオリンピックも、彼にはどこか儚い蜃気楼のように感じた。
そして11月2日。
彼はいつものように仏壇に水を置き、今は亡き3人を想う。その後に猫と自分に餌を与える。
今日は午後からの講義だ。なんとなく窓に目をやると、空が歪んだ。
二度見して、両目を擦ってまた見る。
空が歪んで、グラデーションの赤と緑が空全体を揺らめいていた。
「…オーロラ…?」
何度かテレビで観ていた光景だ。陽がある分いくらか色は薄い。しかし、あれはオーロラ以外に何なのか。
1859年に起きたキャリントン・フレアでは、ハワイやキューバでもオーロラが確認出来たという。
潤伍はまた目を擦って窓に駆け寄り、外に出ようとしたとたん、点けていたテレビが突然切れた。
~停電か?
スーパーフレアの発生。
それが世界の終わり、いや、地獄の始まりだった。
とはいえ、遺産が大金のわけもなく、空き家を買ってスッカラカンな彼らはリフォームを自らする羽目になった。しかし、それもまた楽しかった。
彼のバイト、彼女のパート、いずれは会社勤めをして、結婚するのだろうな。
漠然とした、しかし確信的な思いがあった。
なのに…。
突然の事故だった。夏も彼を置いて逝ってしまった。
潤伍には、目付きの悪いトラ猫だけが残された。
拾いたての頃は可愛かった子猫も、1年も経つと目付きの鋭い立派なボス猫風になっていた。
「ハギ?」
「おはぎみたいな色してるから」
それってきな粉じゃないのか?と聞いた彼に、きな粉だと女の子みたいだから、という理由で名付けたのは夏だった。
彼女の亡骸に擦り寄るハギに怒鳴ったりもした。
「何で…何でお前だけが残った!夏が居なきゃ意味ないだろ!」
ぶつけ所のない悲しみは怒りとなって猫を部屋の隅へと追いやった。
夏が思い出されて辛かった時期は、罪悪感と戦いながら公園に捨てに行った事もあった。しかし、翌朝になると喧嘩の後だろうか、傷や血で汚れたトラ柄の身体を丸めて玄関前で待っているのだ。
なついてる訳でもないくせに、彼から離れることはなかった。
後悔の念は今でも潤伍の胸を刺す。
経験したことのない盛り上がりを見せた何十年ぶりかの母国でのオリンピックも、彼にはどこか儚い蜃気楼のように感じた。
そして11月2日。
彼はいつものように仏壇に水を置き、今は亡き3人を想う。その後に猫と自分に餌を与える。
今日は午後からの講義だ。なんとなく窓に目をやると、空が歪んだ。
二度見して、両目を擦ってまた見る。
空が歪んで、グラデーションの赤と緑が空全体を揺らめいていた。
「…オーロラ…?」
何度かテレビで観ていた光景だ。陽がある分いくらか色は薄い。しかし、あれはオーロラ以外に何なのか。
1859年に起きたキャリントン・フレアでは、ハワイやキューバでもオーロラが確認出来たという。
潤伍はまた目を擦って窓に駆け寄り、外に出ようとしたとたん、点けていたテレビが突然切れた。
~停電か?
スーパーフレアの発生。
それが世界の終わり、いや、地獄の始まりだった。