満開の梅の花を吹き飛ばすように、風が強かった。

 

午前中、いつもの珈琲店に行く。

斜め前のテーブルで、若い女性がひとりでクリームソーダのクリームをスプーンで掬っている。

 

コーヒーを飲みながら新聞を読んでいたら、戦争中に防空壕に入らなくて命拾いした人の投稿が載っていた。

そういえば、私が子どものころには、まだいくつかの防空壕が残っていた。

 

岸田劉生の「道路と土手と塀(切通之写生)」という作品がある。

あの絵のような切通しの斜面に、防空壕が掘ってあった。

私たち子どもは、かくれんぼの場所として防空壕の跡で遊んだ。

 

遠い日の光景を思い出していると、斜め前の女性がサンドイッチを食べはじめた。

絞った音量で流れる音楽、静穏とした安心・・・平和。

 

不意に、テレビに映る爆撃された瓦礫の街が脳裏をよぎった。