2023年度東海道線静岡地区の大きな変化

東海道線静岡地区(東海道本線の熱海~豊橋)の2023年度(ここでいう2023年度とは2023年3月18日~2024年3月15日までの間を示す)は意外と変化が大きな1年であった。簡単にではあるが項目ごとにピックアップする。

 

【7月頃までは実は大きな変化が無かった】

 

↑2023年5月21日に行われたJR東海静岡車両区の一般公開。これはグランシップトレインフェスタとの連動企画で名目上は「さわやかウォーキング」の一環であるが、実際にはウォーキング参加者でなくても自由に入場出来た。この時並んだのは左側から、313系8000番台S1編成、373系F4編成・211系LL12編成であった。もちろん人気の場所となったのは言うまでもない。

 

↑2023年7月16日に撮影した211系SS編成。昼間は3両トイレ無しと言う列車が多数残っている状態であった。これは2024年度最初の段階では残っているが、年度後半以降は315系の新造導入や大垣や神領からの313系転属車に真っ先に置き換わるだろうから、「トイレ無し列車」が消えるのは時間の問題となっている。

 

 

↑313系2500番台T17編成による3両。これについては2023年度通じて大きな変化は全くなかった。2024年度(2024年3月16日以降を示す)に入り211系との併結運用はほぼ消滅。313系T・N編成だけの併結運用が目立つようになった。2024年度も昼間の一部列車で3両による列車は多数あり、「大運転」と称したくなる熱海~浜松のロングラン列車にも充当されている。

 

・・・とここまでは特に変化が無かった。

 

【211系車内から車番プレート撤去】

 

↑2023年7月29日に211系に乗車すると、車内から車番プレートが消えていた。

 

 

↑車外には「クハ210-5053」(2両GG5編成)とあったので、これで車番を知る事は出来るが、乗ってしまうとわからなくなる。その情報が欲しいのは鉄道マニアだけの話で、一般客の99%は「あってもなくてもいい」ものである。

 

↑車内については特に変わっていない。

 

 

↑外から見た顔(前面)も変わっていない。

これには理由があった。「クハ210-5053」と言う車番プレートが欲しい鉄道マニアは一定数居る。専門店何かに行けばウン万円で取引される事も珍しくない。引退が近い車両から車番プレートや行き先幕が盗難に遭う被害は昔からある。今ではそれがSNSで一気に広がり大騒動になる。

これとは多少話が異なるが、3年ほど前に島田駅に夜間留置中の車両備品の一部が盗難被害に遭った。以後JR東海は「防犯カメラ監視中」の札を運転席に設置して夜間留置している。これが鉄道マニアによる犯行か、窃盗団(鉄道が好きと言うわけではない)による犯行なのかは不明だが、どんな事情にしろ「車内備品紛失・盗難」は何が何でも避けたい。

過去事例からして鉄道マニアが車内備品を盗む(俗に「盗り鉄」とも言う)事件が起きていた事から、「ならばそうなる前に全部外してしまえ!」とJR東海は考えたようだ。そのため静岡地区の211系、名古屋地区の311系、飯田線の213系からは同時期に全て車内の車番プレートが消えた。保存してあるのか、廃棄したのかはわからない。

 

【車両用信号炎管の廃止】

 

 

↑「車両用信号炎管」とは鉄道車両向けの発煙筒と考えてもらって良い。自動車には人が持つ「携帯用」だけの義務付けだが、鉄道に関してはそれに加えて車両本体に直接取り付ける「車両用」も存在する。なお新幹線では「車両用」は最初から存在しない(それについて説明すると長くなるので省略する)。

どんな時に使うか?と言うと、触車・衝突等の事故や何らかの事情で緊急停車した時に「火と煙を出す」。これにより遠くからでも「異常がある」と認識させるのである。そのため車両用信号炎管使用時は車両から火事が起きているように見えるので、「電車から火事が起きた!」と大騒ぎするが実際にはそうではないのだ。実際の使用例についてはYouTube辺りで検索すればわかるだろう。

しかし、JR東海は2023年11月頃から車両用信号炎管の使用停止に踏み切った。211系の場合は天井にあるレバーを下に引く事で発火するが、313系の場合はマスコンハンドルの横にある「×印」のボダンを強く押すだけで良い。いずれも「使用停止」の札が貼られ使えなくなっている。

 

車両用信号炎管は車外(屋根)に突き出ている。使用時はここから「火と煙を出す」。「沼津」と書いた「沼の上あたり」にある出っ張ったものがそれであるが、撤去はされていない。単に使わなくなっただけである。

車両用信号炎管の廃止は他社でも同様で、JR東日本も使用停止している。E235系1000番台(横須賀線・総武快速線の新型車両・通称スカレンジ)の最近の新造車は車両用信号炎管そのものを省略した形で納車されている。俗に「ケチレンジ」とも言うが、315系3000番台のC103編成以降(神領所属)同じく車両用信号炎管は省略となっている。

車両用信号炎管を使用しなくなった理由として、異常時でも他の信号システムで安全確保や他列車に知らせる事が出来るようになったと思われる。この辺についてはいろいろ勉強が必要なので、今の所詳細は書かない事になる。

なお線路を共用するJR貨物の貨物列車については、どうなっているのか?わからない。機関車には当然車両用信号炎管は設置されているが、JR東海管内を走行する場合は使用禁止になったのか?どうか?はわからない。

 

【「静シス」の表記が消える】

 

 

↑国鉄・JRの車両は「静シス」と言う表記が必ずあった。すなわち「JR東海静岡支社(静)・静岡車両区(シス)」の意味である。

 

↑しかし、2024年1月26日に211系LL16編成クハ210-5039から「静シス」の表記が消えていた。正確には消されていた。写真を見るとわかるがしっかりと跡が残っている。

315系3000番台C103編成以降納車分(2023年10月以降)でも所属表記は消している(と言うか最初から書いていない)。基本的には名古屋工場入場の検査を受けた車両から徐々に消して行くようだが、この車両は最近入場した形跡がない。どうやら静岡車両区で消したらしい。

もはや「国鉄の遺物」となっている車両表記は意味をなさくなっているのが実態だ。

JR東海はその典型だが、車両は1両ずつ管理していない。編成管理である。HC85系は1両ずつバラして運用する事はなく、電車と同じく2両・4両と言う単位(これを「編成」と言う)で増結や切り離しを行う。編成単位であれば走行距離数も同じになるし、消耗品の消耗具合(個体差はあるんだろうけど)も同じとなる。「編成番号」さえわかってしまえばすぐにどの車両なのかすぐにわかるし、ネットで「(静シス・静岡)LL16編成」と検索すればすぐに車番どころか車歴さえもわかってしまうご時世だ。

そのため1両ずつに「静シス」と書く意味はなくなり、「クハ210-5039」と言う車番だけあれば十分である。

JR東日本も一部所属表記を削除している車両も出てきているが、こちらはやや事情が異なり、2022年10月の組織改正で、車両の管理は各支社から「首都圏本部」(旧東京支社の流れを汲む・関東各支社と長野支社)と「東北本部」(旧仙台支社の流れを汲む・東北地方各支社)が管理に変わり、前者は「都」、後者は「北」と表記する必要が出てきた。しかし、書き換える両数が軽く1万両以上はあるので容易では無いし、金もかかる。そこで書き換えずに消してしまった方が手っ取り早いので、そうしてしまったようである。

話が他社の話題になったが、今後静岡地区に入る315系は最初から「車両用信号炎管無し・所属表記無し」で納車の見込みだ。

 

【211系は2024年度中に全廃】

 

1月25日付けの「交通新聞」に「JR東海211系は2024年度中に全廃」と言う記事が出た。これについて裏付け取材を行うとこの話は本当であった。具体的な時期は未定ながらも(315系の納車状況による)遅くても2025年3月末日までには全て211系が消えてしまう事が確定となった。最後の1年、静岡の顔でもあった211系をたくさん記録(乗車と撮影)したいと思う。