★日本で唯一の「ゴムタイヤ地下鉄」札幌市

札幌市の鉄道網はJR北海道の函館本線、千歳線、学園都市線に加えて、札幌市交通局が運行する札幌市営地下鉄である。
札幌駅(さっぽろ駅)、大通駅を中心に札幌市の郊外に3路線運行。JRがカバーしない札幌市内のタテの交通を主に担う。JRはヨコの交通で、地下鉄東西線(T)は函館線・千歳線と並走する形だが、東西線は7両に対してJRは3~6両と輸送力としても大きいのが特徴。

札幌市営地下鉄の最大の特徴は車輪がゴムタイヤである事。車体中央部に太い1本のレールが案内軌条となる。すなわち、この案内軌条に従うように進路を構成し、実際に転がる物体は鉄でできた車輪ではなく、クルマと同じゴム製のタイヤである。
鉄道の定義として、転がる物体が必ずしも鉄でできた車輪でなくても良くて、札幌市のようにゴムタイヤでも良いし、車輪やタイヤもないモノレールも鉄道の仲間として解釈されるのが一般的だ。

「地下鉄(高速電車)の概要」(札幌市交通局ホームページ)

↑こちらを参照されたい。台車は鉄道そのものであるが、転がる部分はゴムタイヤがはめ込まれている写真が掲載。
タイヤの種類は、チューブレスの特殊スチールラジアルでタイヤの溝が波型の変わった形状である。
「ゴムタイヤ車両は、粘着性が高いため加速・減速性能が良く、駅間が短い地下鉄車両では有利で、起伏の激しい地形でも走行出来ることが特徴」と交通局は説明する。
メリットとしては、走行音が静かで、乗り心地が良く、保線の必要も少ない。

一方でデメリットは、タイヤなので摩耗しやすく維持費が高額になりがちで、力行運転も多いため消費電力も多いので電気料金も高い。
どういう事か?と言うと、鉄道では一定の速度に達するとノッチオフをして定速運転に切り替える。力行(アクセル)を入れなくても速度維持出来る理由は外部からの抵抗が少ないためであるが、逆にゴムタイヤだとノッチオフするとどんどん速度が落ちてしまう。これはクルマでアクセルオフ(アクセルペダルを踏まない)でいるとどんどん速度が落ちるのと同じで、ゴムタイヤ鉄道でもずっと力行(アクセル)を扱う事になる。当然これを使えば使うほど消費する電気の量も増えるわけだ。
また、JR北海道をはじめほとんどの鉄道は鉄の車輪による形状のため、物理的に他社との直通運転が出来ないのもデメリットだ。

札幌の地下鉄は「市営地下鉄」と称するように、札幌市役所が運営する「公営鉄道」である。実質的な運営は札幌市交通局(地方公営企業)が行っており、従業員は全員公務員である。公営企業の側面もあるため、市役所からの税金投入は皆無のはずで、JR北海道とは対照的に黒字経営で年間約400億円の収入、約100億円の黒字である。
駅頭には「ST」と言うカラフルなロゴマークが特徴的。これは「SapporoCityTransportationBureau」の略である。
路線は3つあって、札幌市の”タテの交通”である南北線(N、緑の車両)、東豊線(とうほうせん、H、水色の車両)と”ヨコの交通”である東西線(T、黄色の車両)。

JR北海道 721系3202編成

↑予備知識を基に新千歳空港から乗った「快速エアポート」。札幌で下車して最初は東豊線の駅へ。
しかし、JR札幌駅から東豊線さっぽろ駅まではとにかく遠い。JRの改札口を出て、札幌駅構内の商業施設や通称「チカホ」を通り抜けて、やっと着いた。約10分ほどかかっただろうか。
券売機で札幌市営地下鉄全線が乗り放題になる「ドニチカきっぷ」(520円)を買う。これは土日祝日や年末年始期間に使える企画きっぷで、直接改札機に投入する。初乗り運賃が200円で、最大でも370円であるが何回も乗り降りできるフリーきっぷの方が大幅に安くする事が可能。この日だけで定価ならば約2,000円分は乗った事になると後になって気付いた。

札幌市営地下鉄南北線 さっぽろ駅

↑東豊線ホームの駅名表。札幌駅の地下鉄側の正式な表記は「さっぽろ」(H07)。これは東西線の新さっぽろ(T19)も同様。交通局のホームページでもひらがな表記の「さっぽろ」が目立つ。
ホームドア完備で、最近できた?と思われる新しい雰囲気の駅であった。

2回目に続く