★2018年3月で引退するキハ183特急「北斗」の前面展望を試す

【列車番号】22D(北斗22号)
【時刻】札幌(01)18:08→函館(H75)21:56
【車両】先頭1号車指定席の17番A席、キハ183-9560(他に7両連結)
【停車駅】新札幌、南千歳、苫小牧、登別、東室蘭、伊達紋別、洞爺、長万部、八雲、森、新函館北斗、五稜郭

JR北海道は2018年3月のダイヤ改正で特急「北斗」からキハ183を引退させる方針だ。2015年前後にエンジンを新しく載せ替えたり、座席を新しくしているため、すぐに廃車にはせずに「オホーツク」等の石北線特急に転用すると私は思っている。
函館系統の特急は全て「スーパー北斗」と名乗るようになり、単なる「北斗」は消滅する事になる。消滅前に乗りたいと思っていたので、2018年1月2日の夜間に札幌から函館へ向かう「北斗」に乗った。

きっぷは「えきねっとトクだ値」で用意した。JR北海道でも「えきねっと」受取が可能になり、自社でも積極的に展開。指定席の利用者層にも少しずつ浸透してきており、私が聴いた話では札幌~帯広では約4割が「トクだ値」利用との事。
「えきねっと」のホームページを見ていると、1月2日夜間の札幌→函館の特急指定席はどれも空席であったが、割引率はなぜかJR型車両で運行する「スーパー北斗」の方が高くこちらは定価から30%引き(6,100円)、それに対して国鉄型の「北斗」の方が低く定価から15%引き(7,500円)と、”逆転現象”が発生していた。多くは逆で、「北斗」の方が30%引きで、「スーパー北斗」の方が15%引きになるはずだ。



↑「北斗22号」となる車両は「北斗13号」(札幌17:41着)の折り返し運転。両数は8両で車掌も2人乗務。しかし、雪の影響により約11分遅れでの到着であった。掃除等を行い乗車出来るようになったのは18:07であった。その間にもキハ183「北斗」を撮影する人がそれなりに目立つ。

JR北海道キハ261系1000番台(トマム行き臨時特急)

↑キハ183の指定席の座席もキハ261の指定席と同じタイプのマクラ付きの座り心地の良いタイプに変わっていた。自由席では国鉄時代からの旧型の座席が残っているので、指定席との格差は大きい。
車内の撮影は忘れたので、全て文章で説明する。

今回は「1号車の17番A席」を”指名買い”した。「トクだ値」でも”指名買い”は可能で、シートマップから好きな座席を選べばいい。
最後のキハ183「北斗」なので、前面展望を楽しもうとした。昨年5月に乗ったJR九州の783系でも夜間に前面展望を楽しむ事が出来たが、キハ183では多少勝手が異なった。
783系では客室との仕切りガラスにスモーク(黒いフィルム)が貼られてあるので室内灯に邪魔される事がないが、キハ183にはそんなものはない。
運転席は完全に壁で囲まれた「個室」になっているので、カーテンをいちいち設置する必要もないし、運転士の姿さえも見えない。
そのため照明が反射するので遠くをハッキリと見る事が出来ない。それでも一応は前面の様子を伺う事は出来るので、問題なしとした。

座席の前に台。テーブルの代わりになると言って良い。
函館線(旭川方面行き)と並走する白石までは、街の灯りがあってそれなりに明るいが、それが終わると札幌市内であっても真っ暗。信号と踏切以外に灯りと言うものが存在しない。
千歳線は北海道内では本数が多い路線であるにもかかわらず、すれ違う列車が少ない。たまにある程度。

南千歳からは各車両10人程度乗車。新千歳空港からヒコーキで北海道入りして道南を目指すお客が主体だ。
私の近くには中国人の集団(6人位)が乗ってきた。JR北海道では外国人旅客に対応するため、自動放送にも英語・中国語を追加。韓国語は対応していない。キハ183であっても例外なく放送される。
2017年3月に廃止された美々を通過。LED照明が光っており、今や信号場として活用されているのだろう。

外は本当に真っ暗なので前方注視しないと何も見えない。車内の照明が邪魔になって仕方ない。再び外から光が見えてくると苫小牧。
雪のためゆっくりと走った影響により4分遅れ。冬の北海道では雪により速度を落とす事が当たり前で、5~10分程度の遅れは頻繁に発生する。「時刻表通り進まないのが冬の北海道」と言う事を覚えておきたい。
キハ183-9560は新しいエンジンのため、国鉄型に見られる「重々しい動き」は見られず、「軽快な動き」になっている。速度を落としているのでキハ183にとっては「物足りない」所が伝わってきた。

登別では誰もホームに居ない。暗いので車窓にも変化がなく、17番A席は暖房器具が足元にあるため、暑くて眠くなる。ここが踏ん張り時だ。
東室蘭では札幌からの運転士が交代。函館所属の運転士が終着まで乗務する。外はとんでもなく寒い。交代した札幌所属の運転士はフード付きのコートを頭まで丸被りした。本州ではまず見る事がない制服の着こなし方だ。函館駅の立ち番氏も同様の着方。とてもでないが、そのように着ないと寒さに耐えられない。

★反対列車とすれ違う回数が極端に少ない

この列車には車内販売、飲料水の自動販売機は用意されていない。
私が以前乗った「北斗」では車内販売はあったが、この日の「北斗22号」ではない。函館系統の特急は全てに車内販売があるのではなく、一部列車限定である。この辺の事はJR北海道のホームページや駅頭にある特急列車を案内したパンフレット等に書いてある。

伊達紋別では札幌行きの「スーパー北斗19号」と交換。キハ261であった。久しぶりに見た反対列車だ。室蘭線・函館線のこの区間は物流の大動脈で貨物列車が多いはずであるが、正月期間中は年間でも最も荷物の量が減る時期。そのため運休した貨物列車も多かったらしく、函館到着まで1本も貨物列車を見かける事がなかった。
残ったのは旅客列車。時刻表を見ると空きスペースが多く、特急が1本/時程度あるが、普通はもっと少ない。
伊達紋別発車してしばらくして、雪が減少した事に気づく。道南が近づいてきている証拠だ。道南は道内の中でも雪が少ない。

長万部発車後、車掌は雪による徐行のため遅れている事を放送。この時点で約8分遅れ。確かに思うように速度が出ない。雪によるものだからこれは仕方ない。
次の八雲でもお客の動きがない。車内を歩いてみると、ビックリする事に札幌発車時点で顔ぶれが全く変わらない。ほぼ全員のお客が札幌→函館市内へ”通し”利用であった。途中駅のホームを見ると、確かに「北斗22号」から乗降する人は少なかった。

デッキとの仕切りドア付近には、平成27年(2015年)に改造した旨が書いてあった。繰り返しになるが、キハ183の7500・8500・9500番台は同時期に新車同然に改造しているので、いくらなんでも廃車はありえない。他車への移籍と言う可能性も否定は出来ないが、現実としては石北線への移籍が妥当である。それ以外にも道内各地の臨時特急としても十分活用出来るので、バブル期に出た気動車ジョイフルトレインが次々と姿を消す中で、これから10年くらいはキハ183の2015年改造車でしのぐ事も出来る。

再び座席に戻り、前面展望を見る。森の手前で反対側から列車がやってきた。895Dの長万部行きキハ40であった。お客はそんなに乗っていなかったように見えた。
もし仮に札幌→函館を特急ではなく、普通列車の乗継ならば、どんな乗り方が出来たのか?どんなドラマがあったのか?・・・とついつい思ってしまう。特急では約3時間半であるが、普通の乗継ではざっと約8時間程度かかるだろう。途中での接続が良好でないこと、函館~長万部の本数が極端に少ないため、乗車出来る時間帯は限定されるだろう。

すると、JR東日本の4点式特急チャイムが聴こえてきた。中央東線の「あずさ」等で使われているものだ。一瞬JR東日本かと誤解しかけたが、内容は新函館北斗からの北海道新幹線の案内。乗り換え改札口では乗車券+北斗の特急券+新幹線の特急券を投入しないといけないようだ。私は在来線特急券を改札機に投入した事がないので、無事に改札突破できるか自信がない。
新函館北斗には8分遅れて21:48に着く。新幹線は21:59発の新青森行きの「はやて100号」(各駅停車)のみ。北海道で「はやて」と言う名前を聴くのはなんとも抵抗がある。もっと北海道らしい名前で良かったと思う。

・・・キハ183「北斗」は今が”引き際”なんだろうと思った。JR北海道の問題の象徴とも言える特急気動車から火を噴く事故と言うのは、ほとんどがキハ183であった。今はエンジンを新しく載せ替えて新型のキハ261と同じタイプにしているので、そのリスクは以前よりも低くなっているが、同じ特急でも車両の古い・新しいで所要時間が異なるのは、サービス面からも良くない。「スーパー」ならば概ね3時間半前後だが、”単なる北斗”だと4時間近くかかる。最大で30分程度長いため、出来ればどの列車も同じ時間で走れるようにするのが理想だ。

今後はキハ183は繰り返しになるが、まだまだ使える車両で廃車にするのがもったいないくらい。今後は石北線に舞台を移して「オホーツク」「大雪」で元気な姿を見せてほしい。