JR各社は2018年3月に実施するダイヤ改正の内容を公表した。
JR全体で見ると、規模としては小規模。一部で特急列車名の変更が行われるが、それ以外は新車の導入による多少の速度向上や修正程度で、利用が減少している路線では大きく減便する点も目立つ内容になった。
当ブログでは、どこよりも詳しく・わかりやすく・”よその人が書かない”「独自分析の最新情勢」も入れながら説明する。
掲載する順番は、私の中で注目度の高い会社からとする。1回目は、JR九州とする。
なお、
ダイヤ改正日は2018年(平成30年)3月17日(土)である。

★JR九州は「ダイヤ改正」ではなく、「ダイヤ見直し」としているワケとは?九州7県が「減便ダイヤ撤回」を要求する前代未聞の事に!

「平成30年3月のダイヤを見直します(鹿児島地区」(JR九州ホームページ)

「平成30年3月のダイヤを見直します(福岡地区・新幹線・特急)」(JR九州ホームページ)

↑詳細はこちらを参照されたい。

結論から言うと、2018年春実施のJR九州の新しいダイヤは「減便の嵐」である。
同社全体で1日あたり定期列車を117本も減便する。

2016年3月のJR北海道ダイヤ改正では同社全体で79本も減便した。今回のJR九州の新ダイヤはJR北海道よりも多く減便すると言うのは、ある意味ではJR北海道よりも鉄道事業が深刻である事を示すだろう。
「ダイヤ改正」とは、お客にとってメリットを受ける事が出来る場合に限り使われる表現だ。
しかし、お客にとってデメリットになる事、例えば減便、廃止、運賃アップ等があれば、もっと別の表現で広く世間に公表される。実績としては、2014年11月にJR北海道が特急列車の減便や速度を落とすダイヤを公表した際には、「ダイヤ変更」と称した。

それに対して2018年3月のJR九州におけるダイヤを変更する際には、「ダイヤ見直し」と称している。
「見直し」と言うのは、デメリットの意味を持つ事が多い。
JR九州の視点で見て、収支が良くない列車は廃止して、お客が使う列車だけ運行する事で、同社の鉄道事業全体の生産性を向上させて、念願の同事業黒字化を狙う事が大きな目的だ。そのため、客のメリットを優先させていない事が特徴で、むしろJR九州のメリットを優先させていると言って良い。

これに対して、九州各地の自体は猛反発した。九州7県が共同でJR九州に対して、「撤回」を要望する前代未聞の事に発展している。
今の所、JR九州が「撤回」する方針がなくて、2018年新ダイヤの概要を細かく関係自治体に説明している。
青柳社長は「これがベスト」と発言しており、私も社長と同意見である。
では、具体的にどのように減便するのか?なんで「これがベスト」なのか?

減便対象①利用の少ない普通・快速列車は九州全域で容赦なく減便

・・・JR九州に限った事ではないが、在来線の普通・快速と言ったローカル列車は極端に利用が少ない事が少なくない。
当ブログの乗車記でも「車内はガラガラ」とか「途中駅からお客が増えない」と書いている事が多い。東京のE電区間(電車特定区間)ならばそうなる事はあまりないが、それ以外の地方ではそうなる事が多く、JRも今や株式会社なので「列車1本あたりの採算性」がシビアになっている。
そもそも、「車内はガラガラ」の状態で列車を動かしたくないのが、本音で、「儲からない列車」はリストラしたいのだ。

近年ではJR西日本がその傾向で、列車1本あたりの利用者数を細かく調査し、同社の基準に満たない利用者数の列車は、運行区間や時間帯問わずに容赦なく減便している。一方で利用者が多く今後も増える見込みがある場合は増便しており、車両数や要員数を増やすと言う、「選択と集中」をしっかりと行っている。
この事はJR九州も例外ではなく、むしろこれからは同社も同じ事をしないと生き残って行けない。生き残れないと路線廃止や同社の倒産と言う最悪の結果を招く。そうならないためには、お客の利便やサービス低下にはなるが、それは納得してもらうしかないのだ。

実態を見たい。地元の人に言わせても、「近くに鉄道がある事は知っているけど、何十年も使った事がない。近隣の大きな街に行くには鉄道よりもクルマの方が速くて便利」と答えるほどなので、これでは使ってもらえない。使ってもらうようにJR九州は努力するべきであろうが、田舎に行けばいくほど、クルマから鉄道にシフトさせると言うのは相当大変(と言うか不可能)で、クルマにないメリット(費用や時間等)を鉄道が訴求出来るとは言い難い。
 
JR九州 吉松駅

↑肥薩線の吉松駅に着いた人吉からの列車。私が乗ったのは17:09発の1253Dで、折り返し八代行きの1254Dで吉松→人吉に関してはこの日の最終である。1254Dの車内を見ると、お客は皆無に等しかった。この日は5月のゴールデンウィーク中だ。お客がいてもおかしくない時期なのに、これだ。普通の平日であれば通学利用が見込めるかもしれないが、それでも過度な期待は出来なそうだ。
JR九州はこの事をしっかりとダイヤに反映。2018年3月以降は1254Dが消える事になった。さらに1255D(人吉19:47発)も消える事になった。
そのため、人吉~吉松では最終列車の時刻はかなり早くなる事になるようだ。

これはほんの一例で、他にも全区間が運行取り止め、一部区間だけが運行取り止めとなっている。いずれも利用が少ないので運行を取り止めるのである。
全てを掲載する事は出来ないため、詳しくは上記リンクブログや2018年3月以降の「時刻表」で現行ダイヤ(2018年2月まで)と比較されたい。

ここで一つ苦言を申し上げたい。
自治体は「列車本数を減らすな」と陳情している点。JR九州に陳情する前提条件として、そもそも自治体側は日常的にJR九州の列車、それも新幹線や特急、D&S列車はもちろん、普通・快速と言ったローカル列車を積極的に使っていて言っているんだろうな?
通勤時、出張時、日常の買い物時にはもちろん使っていて、「本数減らすな」と言っているわけでしょ?

・・・・・・・それが事実ならば、スジが通る陳情で、陳情する権利もあると思うが、それは事実ではない。
すなわち、普段の通勤時、出張時等はJR九州の列車自体を使っていないのだ。
では、自治体の人たちはどうやって移動しているのか?と言うと公用車と称するクルマ。
会議等が博多(福岡)で開催される事も多いだろうから長距離移動する際にもJR九州は一切使わず、クルマ。良くて高速バス。
なのに、「列車本数を減らすな」と言う事を陳情するのは、おかしい。
自分たちが使ってもいないのに、「不便を被る住民が居るので、”移動する権利”の侵害」と考えて、陳情しているように思える。

いわゆる「JR北海道問題」で、JR北海道に対して「普段鉄道は使っていない。路線は廃止しないでくれ。でも支援はしないし、JR北海道との会議の際には列車は使わずにマイカーで来る」と言っているのと同じで、自分たちはJR九州を使っていないのに、JR九州の経営判断で減便をしたら「ダメ」と言うのか?
スジが通っていない。

だったら、自治体側は首長や議員、職員の通勤や出張等では、積極的にJR九州の列車で移動させて、住民に対して「JR九州の普通列車を年間に○回乗りましょう。そうすれば鉄道は残ります」、「乗った時に撮影した写真を来年のわが街のカレンダーに使います」、「JR九州の普通列車に乗らないと参加できない特別なお祭りを開催」(JR東海のさわやかウォーキングで一部このような企画がある)・・・と言うような事をやるべきで、「やってもいないのに反対するな!」と言う事である。自治体が漠然と反対したに過ぎないと思っている。
私がJR九州に言いたいのが、今回の「ダイヤ見直し」を撤回する必要はない。

減便対象②「ソニック」「かもめ」等の”看板特急”も対象

減便対象は利用者の多い特急や新幹線も対象。
新幹線については利用者の少ない「さくら」「つばめ」の一部便を削減する事にしているが、それでも6本/日に留まった。

JR九州 883系(Fo4編成)

↑日豊線の「ソニック」については、一部佐伯まで延長運転している便が、この一部便が消える。大分までに短縮されるが、救済処置(普通列車が新設?)があるか?公式発表から読み取る事は出来ない。
JR九州全体的には列車本数を削減しているため、救済処置がある事は期待出来ない。
さらに、現行ダイヤで柳ヶ浦行きだったのが門司港行きに短縮、大分行きだったのが中津行きに短縮と言った変更も見られる。前者については「ソニック」とは名乗れず、「きらめき」になってしまうのが注意点だ。

JR九州 787系(BM編成の6両)東都農にて

↑東都農を通過する宮崎空港行きの「にちりん」(787系DXグリーン車連結)
宮崎県内の「にちりん」については、同県内での利用は多いが、大分との県境付近はどうしても利用が減少する。県境付近の夜間は減便して「ひゅうが」に置き換える。そのため、宮崎→大分・小倉・博多への最終便は「にちりんシーガイア24号」(宮崎17:31発)になるので、注意が必要だ。
俗に「宗太郎越え」と言うが、この区間の普通列車は3往復/日→1往復/日(重岡→延岡。延岡→重岡・佐伯は2往復/日)に大幅減便になるため、「18キッパー」泣かせの区間に”磨き”がかかってしまった格好だ。


JR佐世保線 上有田駅(特急と交換)

↑長崎線・佐世保線系統の特急も減便対象。
「かもめ」については基本的に2~3本/時の本数は保たれるが、利用状況に応じて毎日運転→「混雑日に限り運転」と言う臨時化を推進。
20時以降に発車する一部列車については、発車時刻の繰り上げ、つまり現行ダイヤよりも早い時間帯に発車してしまうので注意。
「今まで通りの時刻で駅に行ったら、今日の最終かもめは発車済みで帰る事が出来ません」と言う”悲惨な事態”に遭遇する事もあり得るので、十分2018年3月以降の新ダイヤを確認するようにされたい。
また、博多~佐賀と言った短い区間だけ運行する「かもめ」も存在していたが、2018年3月以降はこの列車も消えるので注意が必要だ。

写真は用意出来ないが、肥薩線のD&S列車「はやとの風」も減便対象。毎日運転→土日祝日運転に変更される。
D&S列車は平日に乗車出来る機会が減少し、土日祝日のみの運行が主体となるので、特に九州以外からこれ狙いで来る場合は事前に運行日の確認が欠かせない。

JR九州全体では24本/日も特急が削減されることになった。1日でこれだけ特急が減ってしまうのは、かなり大胆だ。
また、JR九州各線で朝始発列車の繰り下げ(始発時刻を遅くする)、夜最終列車の繰り上げ(最終時刻を早くする)をどこも行っているので、十分に注意されたい。

★車掌・客室乗務員完全無配置「ワンマン特急」を「きりしま」(宮崎~鹿児島中央)でも展開


JR九州 787系(ワンマン特急にちりん)

↑実際に見てしまった、「ワンマン特急」の様子。運転士がホームに立ってドアの開閉を実施。

2017年3月のダイヤ改正(この時は「ダイヤ見直し」とは称していなかった)で、「にちりん」(大分~宮崎)の一部でワンマン化を実施。
特急でワンマンである。きっぷを検札する車掌や係員すら乗らず、車内販売も実施しない。乗務員は運転士だけとなる。
D&S列車でも形式的にはワンマンであるが、実態は客室乗務員が乗ってサービスを展開するため、実質的には車掌がいるようなものである。客室乗務員はドアの開閉や列車監視が出来ないため、運行面で言えばワンマンに過ぎない。

だが、「にちりん」のワンマンは”完全にワンマン”。運転士以外に乗務員はいないのだ。
一応車内の防犯対策として、防犯カメラの増設やインターホンの設置等を行っているが、検札出来ないため特急券を買わずに乗るお客も少なくないと思う。特に「18きっぷ」や「ぐるっと九州きっぷ」のような企画券ではやろうと思えば、いくらでも不正(キセル)が出来てしまう事になる。検札要員さえも乗せないと言うのは、JR九州にとってはデメリットで、時期に「特急券を買わずに乗れる特急」として悪い口コミが浸透し、特急券売り上げの減収→余計に首を絞める事になろう。

2018年3月以降も積極的に特急のワンマン化を推進。
第2段は「きりしま」で、報道によれば半分以上の列車がそうなると言う。当然鹿児島や宮崎の自治体は反発している。

★まとめ。妥当と言うしかない今回のダイヤ見直し

今のJR九州の置かれた状況からして、これだけ大胆な見直しはやるしかない。一応上場企業であるが、6割程度は不動産等の副業で儲けており、基本となる鉄道事業では実は赤字体質。
無駄な事を徹底的に排除しており、頑張って黒字化しようとしている。今回はそれをダイヤに反映させた格好で、妥当と言うしかない。
これは単に金儲けではなく、「路線の維持」と言うある意味JR九州の存亡も関わっており、このまま放置するとJR北海道のように会社が倒産する・しないの話になりかねない。そうならないようにするために、出来るうちからやっているのだ。
だから、九州に住んでいるみなさんが普段から積極的にJR九州の列車を使えば、減便にはならない。路線も維持出来る。九州ももっと元気になるわけだ。
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