★アプト式、レインボーブリッチ、秘境駅、橋梁と「日本一」連続の井川線

【列車番号】201レ
【時刻】アプトいちしろ10:02→井川11:07(遅れていたため実際の運行実績時刻で記載)
【車両】
(先頭から)クハ601+スロフ303+スロフ313+スロフ317+スロフ307+DD203

 
アプトいちしろでは後部に電気機関車を連結する。この先は日本で唯一のアプト式区間かつ井川線唯一の電化区間である。

大井川鐵道井川線 アプトいちしろ駅

↑電気機関車を連結するシーンは車内からお客が一斉に下車。
ホームにはトイレと飲料水の自販機もあって、貴重な休憩時間だ。井川線の車内にはトイレがない。途中でトイレに行きたくなったら、アプトいちしろ駅で済ませるしかないのだ。



↑電気機関車は重連。この区間は電気機関車の動力のみで進む。
90‰と言う超急勾配を登り・降りするために必要な存在で、登りの井川行きは後ろから押す事で前の客車が円滑に前進できるようにサポートして、降りの千頭行きは客車の先頭に電気機関車が立つ事で急な下り坂から滑り落ちないようにするための役目を持つ。
アプトいちしろと長島ダムでは電気機関車の連結と切り離しでそれぞれ4分の停車時間が設定されている。
電気機関車の運用はシンプルで、アプトいちしろを基地にして、長島ダムまでを往復。
アプトいちしろで井川行き列車に連結し長島ダムに着くと切り離して側線に。基本的に千頭行き列車と交換するダイヤなので(201レのように一部交換列車なしの場合も)、今度は転線して千頭行き列車と連結してアプトいちしろに戻る。

大井川鐵道井川線 アプトいちしろ~長島ダム

大井川鐵道井川線 アプトいちしろ~長島ダム

↑アプトいちしろを発車してすぐに90‰の急勾配開始。写真で見るだけで急な上り坂であることがわかろう。

大井川鐵道井川線 アプトいちしろ~長島ダム

↑大井川水系のダムの1つ、長島ダム。中央部分には「しぶき橋」と言う人が歩く事専用の橋があって、ダムから放水される水が間近で見る事が出来る。

大井川鐵道井川線 アプトいちしろ~長島ダム

大井川鐵道井川線 長島ダム駅

↑大きくカーブして長島ダム駅に着く。駐車場(無料)もあるので、クルマで来て井川線撮影、乗車して奥大井湖上へ行く人もそれなりに多い。
長島ダムでも4分停車。この間に電気機関車を切り離す。この時は前述のとおり交換列車なし。
この先のトンネルまでが長島ダム駅構内で、トンネル内部に分岐があって単線に戻った。トンネル内部は陽が入らないためひんやりしていた。

大井川鐵道井川線 ひらんだ駅

↑この先は長島ダムの湖面となる。井川線は長島ダム建設によりこの区間の経路が変更になった。長島ダム駅を発車してすぐに車掌による放送が入り、この付近は川根唐沢駅が沈んでいると言う。

大井川鐵道井川線 奥大井湖上駅

↑右に大きくカーブすると見えてきたのが、レインボーブリッチ。

大井川鐵道井川線 奥大井湖上駅



↑奥大井湖上は井川線の駅ではぜひ訪れたい。天気が良ければ絶景で、静岡県道388号線から駅を見ると、旅行パンフレット等でおなじみの風景と出会う事が出来る。
やはり下車客が多く6割程度が下車した。車内は一気に空席となった。お客の動きとしては、寸又峡で一泊して、翌日は奥泉までクルマや路線バスで出て、井川線に乗り換えて奥大井湖上で観光・・・と言う流れのようだ。

大井川鐵道井川線 接岨峡温泉駅

↑接岨峡温泉では10~15人程度が下車。駅名の通り温泉がある街で観光客が多い。井川線の運行上はこの駅を始発・終着にする列車もあるが、近年は千頭~井川の通しで運行する列車が目立つ。
車内はさらにお客が減って1両に数人程度となった。
この先は2017年3月11日に運転再開した区間。井川線屈指の秘境区間で、次の尾盛駅は「秘境駅ランキング第2位」である。

尾盛駅は井川線以外で行く事が出来ない。道路もない。行ってみると建物は鉄道関連施設以外は皆無で、「本当の秘境」。秘境駅である尾盛駅は私も下車したいのが本音であるが、あえてこの駅は「下車禁止駅」に指定した。
理由はこうだ。近年はクマ・野犬等の野生動物が大変多く出没し、仮に出た場合逃げる事が可能な場所がない。
大井川鐵道のご厚意で元々業務用で使用していた小屋を緊急避難場所として提供しているが、それ以外に逃げ場がない。
いろんな情報を整理すると、遠くから動物の鳴き声は頻繁にあるようで、近づく気配も珍しくない。
実際にクマ・野犬等が目の前に来れば、命の保障はない。携帯電話の電波も届かないので助けも呼べない。
命がけで行く覚悟があれば尾盛駅に行っても良いが、この駅に下車する以上相当のリスクを負わないといけない。
また、車掌も尾盛駅で下車する場合、「なぜ下車するのか?」理由を聞くと言う。下車したとしても「何もない」ので、目的地として存在しないのだ。

大井川鐵道井川線 尾盛駅

↑尾盛に到着。下車は進行方向右側。左側にホームがあるが、現在は線路が敷かれていないので、実質的には棒線駅だ。

大井川鐵道井川線 尾盛駅

大井川鐵道井川線 尾盛駅

↑駅名表と進行方向左側。すると同業者(鉄道ファン)らしき人が左側から下車。ドアは手動である事、車両とホームの段差が低い事から容易に外へ出る事が可能だ。
それに気づいた車掌が慌てて反対側に移り、きっぷを回収した。

大井川鐵道井川線 尾盛~閑蔵(関の沢鉄橋)

大井川鐵道井川線 尾盛~閑蔵(関の沢鉄橋)

↑尾盛を出て複数のトンネルを抜けると、山の高い所に出た。車窓からは山の頂と同じくらいの高さだ。井川線は鉄橋を通過する形で、ここが日本で川面から最も高い所に鉄橋がある「関の沢橋梁」である。
川面からは70,8m。車掌が保線業務でこの橋梁を歩いた事があるが、ものすごく怖く、風が強い日はさらに怖さが増す言う。作業する立場としては非常に神経を使う部分である。
お客としては絶景を期待したが、山の谷の部分にあるので見えるのは川面までの高さを実感するだけ。
関の沢橋梁を過ぎると長い川根本町が終わって、静岡市葵区に入る。







↑閑蔵では千頭行きの202レと交換。井川~接岨峡温泉は土日祝日限定の臨時列車で、接岨峡温泉以南は毎日運転。利用者も限定的で1両に数人だった。
ここで井川線の特徴的な事があった。車掌は「閑蔵で交換する千頭行きに乗車希望するお客はお申し出を」と放送。
閑蔵駅の構造上、井川方の先端まで行かないと反対ホームに行けないので、検札を含めて202レへの乗車案内をするためにお客を誘導。
約5人ほどが202レに乗り移った。
井川線は観光利用が圧倒的に多いので、往復乗車やバスへの乗り換えが当たり前。車内放送では帰りの列車の時刻の案内、周辺の見どころも伝える事が裏付ける。

閑蔵を発車すると最後の一区間。時間にして約18分かかるが、並行する道路は極端に車幅が狭くなる。閑蔵までは片側1車線以上確保されているので、勾配はキツいがそれなりには走りやすい道。
閑蔵~井川は静岡市道になるものの、急カーブが多く落石・倒木も多い「死道」である。
井川線も似たような線形で、前日(8月11日)まで落石で運休していた理由がわかる。落石したような形跡も見られた。

大井川鐵道井川線 閑蔵~井川(奥泉ダム)

↑奥泉ダムは工事中のためクレーン車が目立つ。車内放送によると今年度(2017年度)で終了するため、クレーン車の姿も見納めとの事。
井川線にはこの辺に信号場らしきものがあった。

大井川鐵道井川線 閑蔵~井川(井川ダム)

↑そして最後は井川ダム。これが見えてくれば井川だ。
井川線は実はこの先もあって、井川湖湖畔の堂平駅までの貨物線があった。正式には休止だが、実質的には廃止状態だ。その後がしっかりと井川駅にも残っていた。
そのまま折り返すではつまらないので、井川周辺を簡単に歩いて、午後は寸又峡へ向かった。

3回目に続く。