★トーマスが大絶賛運行中なのに、あえて「昭和の大衆列車」普通のSLに乗ってみる

【列車番号】102レ(SLかわね路号)
【時刻】千頭14:53→新金谷16:09
【車両】(機関車)C11-190
(客車)1号車:オハ35-435に乗車。他4両連結。

きかんしゃトーマスに乗るのは非常に難しい。そもそも販売方法が違うのだ。大井川鐵道のホームページにあるSL空席状況を示す内容を見ていると、普通の黒いSLはお盆期間中であるにも関わらず、空席が目立った。それでも毎日と言うわけではなくて、8月12日(土)は千頭行き、新金谷行きとも満席。8月11日(金)は新金谷行きに空席があったので、これをメール予約した。
大井川鐵道から返信されるメールに予約番号が書いてあって、これを乗車当日千頭駅の窓口で伝えると発券出来た。SL急行券は800円。本来は速達性の意味を持つ急行券であるが、今や大井川鐵道の貴重な収入源、粗利が取れる原資、老朽化したSLを維持管理するための原資となっている。
但し、メール予約では座席の希望(窓側、通路側等)は聞いてもらえない。ランダムに発券されるため、どの座席になるかは乗車するまでのお楽しみだ。










↑すでに3番のりばには102レが入線済み。やはりSL近くで撮影する人は多いが、反対ホーム(2番のりば)まで行って編成写真を撮る人は皆無に等しい。意外と簡単にそれが撮影できるので、逆に言えば同業者(鉄道ファン)が少ないと言える。
8月10日、11日に限り「山の日」のヘッドマークを装着。年間でもこの2日間しか見る事が出来ない貴重なヘッドマークである。


↑車内は昭和10~20年代の雰囲気をそのまま残している。(客車内は以前撮影)
今の車両との大きな違いは、天井が高い事。見上げた場所に照明や扇風機があって、荷棚はヒモを組んだ形状となっている。耐久性は決してない思うので、重たい荷物を置く事は出来ない。

昔の雰囲気をそのまま残しているので、エアコンやリクライニングは存在しない。こんなにも暑い夏なので、窓を全開にして扇風機もフル稼働。車内には灰皿があるが、あくまでも昔の雰囲気を残すためにそのままにしてあるだけで、車内は禁煙。発車直前まで薄暗かったが、やっと丸い蛍光灯に電気が灯る。
発車前には名物カレチ(旅客専務車掌)による細々とした案内。停車駅、停車時刻、車内の注意点、この日のSLや客車の特徴まで。
この日のC11-190は昭和15年(1940年)製で、私が乗った先頭1号車のオハ35-435も同年製である。大井川鐵道の客車は国鉄から譲渡してもらったものがほとんどである。

大井川鐵道 千頭~崎平

↑千頭~崎平(大井川橋梁を渡る)

大井川鐵道 崎平~青部

↑崎平~青部

この日はSL撮影している同業者がビックリするほど少なかった。崎平のこのポイントも普段は同業者がたくさんいるもののこの日は皆無に等しかった。普通のSLは対象外なのであろうか?
大井川鐵道本線の電車から見る車窓とSLから見る車窓はまるで違うもの。同じ場所を通っているのに、なぜこんなにも違ってくるのだろうか?

大井川鐵道 駿河徳山~田野口

↑駿河徳山~田野口

大井川鐵道 塩郷駅付近

↑塩郷駅近くの大井川を渡るつり橋。車掌からもその旨の放送があった。そして車外からは多くの人が手を振っており、車内でも多くが振りかえす。

15:30に着いた川根温泉笹間渡。トーマス、ジェームスが停車する事はなく、新金谷行きSL急行特有の停車駅。ここでまとまった下車。近くには道の駅があるので、千頭まで大井川鐵道本線で往復した人のうち、帰りはSL試乗組がそれなりに見られた。
ホームの長さの都合で客車4両分しかドアを開ける事は出来ず、残りの1両はドアカットであった。

大井川鐵道 川根温泉笹間渡~抜里

大井川鐵道 川根温泉笹間渡~抜里

↑川根温泉笹間渡~抜里
再び大井川を渡ると、広大な茶畑。抜里地区に入った事になる。

大井川鐵道 抜里駅

↑抜里駅をゆっくりと通過。地元の人がSLに対して手を振っていたのは、とても温かい。

大井川鐵道 抜里~家山

↑抜里~家山
抜里踏切付近はSL撮影では超有名な場所であるが、この日はやはり同業者が少ない。

大井川鐵道 家山駅

↑家山には15:37~15:42。SL部分はホームからはみ出した状態になる。11レ千頭行き(元近鉄16003編成)と交換。
発車時に力強く動き出す。川根温泉笹間渡、家山から乗車したお客は車内で具体的に乗車位置の証明を受ける事になる。両駅から乗っても急行料金は安くなる事はない。

するとカレチともう1人の歌手が現れた。
沖縄の民族楽器を披露した。静岡では珍しい試み。そしてカレチ名物のハーモニカ演奏。この日は「山の日」なので、山にちなんだ曲と言う事で「富士の山」を沖縄の民族楽器とのコラボレーションが実現。
この歌手は大井川鐵道の制服を着用しており、「何者か?」気になった。後日「静岡新聞」の記事に、この歌手は静岡市の高校生で夏休みの校外活動の一環で「車掌体験」をしていたとあった。カレチに基本的な接客から車内の美化等その他諸準備を習ってから乗務に臨んだと言う。

今や全国各地にいろんなイベント列車があって、いろんなイベントをしてお客を楽しませてくれる。それはその列車のコンセプトに合致した内容を演出してしており、「今流」のものがほとんど。
大井川鐵道のSL車内では昔ながらのハーモニカ演奏に加えて、カレチがお客に「今日はどこから来た?」「どんな曲を演奏して欲しい?」と聞いて、お客との話も盛り上がる。このような昭和の時代に当たり前のように見られた光景が、今や見られなくなっている。「昭和の大衆列車」は良い雰囲気だ。