アジアの時代、生き抜く力
「21世紀はアジアの時代」と言われて久しい。GDPベースでみると既に中国は日本と肩を並べ、インドにも2025年には抜かれるという(Goldman Sachs Global Economic Paper No152, 2003)。加えて金融危機以前に毎年5%程度の経済成長をみせていたインドネシア、ベトナム、タイといったASEAN諸国も今年の第一四半期では主要国が5%を上回る成長率を記録し、再び成長軌道に乗っている(目で見るASEAN内閣府)。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/asean/pdfs/sees_eye.pdf
成長市場で勝負することが経済成長の定石であることを考慮すれば、もはやアジアを軽視することはできない。
この「アジアの時代」において日本は、そして一個人はどのように生き抜くべきであろうか。「アジア力 日本経済新聞社」に「アジアナイゼーション」という概念が謳われている。具体的には伝統的価値観である「ジャパイナイゼーション」、すなわちアジアを日本化しようとする発想から、日本をアジアの一角に位置付ける発想に転換すべきだと説いた上で、その役割は「アジア全体に経済発展をもたらす知的触媒」であると説いている。この「知的触媒」の観点から日本と個人の生き抜き方について考察してみたい。
まずは日本についてである。これまでのアジア各国の発展を単純化するならば、安く質の高い大量の若年労働力を持つ国が発展する段階だったと言える。製造業の中国、ITのインドしかりである。しかしそういった単純製造業は繊維製造業が中国からバングラデシュに主立地を変えているように、既にアジア内で移転を始めている。先発組のアジア各国が更に所得を向上させて次の段階へゆくには、付加価値を付けなくてはならない。付加価値のある製品・サービスを生み出し、低所得多人口型の経済から高所得内需主導の経済へと移行してもらう必要がある。この移行によって後発組の国々が単純製造業の輸出を通じて発展できるようになり、アジア全体がさらなる経済発展を続けることになる。その過程における日本の役割は、新たな発明とそれによるマーケット創造を切れ目なく続けることである。
中国、インドの発展について振り返ってみよう。中国が得意とするデジタル家電もインドが得意とするBPO、ITOも前段としてそれら自体の発明がある。発明したのはアメリカと日本である。それらの発明が現在の中国とインドの経済発展を支える一つの理由であることは間違いない。そしてその経済発展によって多くの企業が利益を稼ぐようになっている。発明→マーケット創造というサイクルによって新たな収入源を生んだのだ。逆にこのサイクルがうまく回らないと多くの製造業で日本に敗れた後のアメリカや今日本が直面している工場流出問題のように痛みを生むことになる。かといって内に閉じこもることはできない。日本は資源を輸入に頼っており、また少子高齢化で国内需要が減るからだ。我々が雇用と所得を維持・増加させるには、知識労働者集団としてアジア各国の一歩先を走り続けること以外にない。その為には高等教育の強化が最重要テーマである。アジア各国も教育を強化しており、伝授できるものを常に保有し続けるには、国民全体が学ぶことに貪欲で、常に自己否定を続けられるリテラシーを持っていなければならない。
次に個人の場合をみてみよう。自分を例にとる。私はキャリアのほとんどを営業・販促分野で積んできた。つまり「できあがった商品を売ること」、それが私の経験領域である。さらに踏み込めばどちらかというと販促に強みがあり、一営業としてよりも組織的営業において力を発揮する。商品の特徴を踏まえてのターゲティングと直接、間接双方による販促手法の考案、それらのチームメンバーへの落とし込みと進捗管理。これらの業務においてノウハウを培ってきた。よって今の私が「知的触媒」足り得るには、まず私の持っているノウハウがアジア各国の同業者からみて価値のあるものでなければならない。「アイツのやり方を真似れば売れる、指示に従えば売れる。」そう思われるものでなければならない。そしてそれを彼らに伝え、実際に動いてもらうには語学力が必要である。つまり、「仕事ができて」、「語学もでき」、「異なる人々と調和できる」ことが個人における「知的触媒」の必要条件である。無論、仮に一度「知的触媒」足り得る能力を身に付けたとしても、常に研鑽を続けなければそのノウハウが陳腐化することは言うまでもない。
大前研一氏は著書の中で「早晩、プロフェッショナル・クラスが台頭し、日本産業界を揺り動かす」と予言した。隻眼であり、今、製造業に従事する人々がその予言が正に現実になったことを実感している。国も個人も、揺れ動いた結果、その地盤を失うか否かはそれぞれが学び、考え続けられるかどうかにかかっている。
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