経営知能
- 経営知能―リーダーは育てるより、探し出せ!/ジャスティン メンクス
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近年取り上げられた企業における「リーダーの必要条件」にはどのようなものがあっただろう。
随分と沢山あったと思うが、よく耳にするのは、
「構想力」、「指導力」、そして「人のやる気を喚起する力」であろうか。
確かにどれも大事で、かつどれが欠けても「リーダー」は成り立たないと思う。
一番始めにくるのは構想力だろう。辞書によると構想力とは、“物事を体系的に考え、まとめあげる能力”とある。なるほど、構想力なくしては企業の目的を達成する為の組織や業務を考案することはできなさそうだ。
指導力なくしては、どんなに優れた戦略もひとり相撲に終わるだろう。ビジネスは個人スポーツでは無い。指導なくしては実現できないことが山ほどある。
そして、人のやる気を喚起する力なくしては組織を継続することはできない。やらされ仕事は長続きしない。先の二つ、優れた構想力によって練られた戦略とそれに基づいた組織と指導力、これらが揃えば当面の運営に支障はないだろうが、仲間にとっては「与えられた仕事」以上になることはない。やる気を喚起する力なくして主体性は生まれないだろう。そして主体性の無い人間が成長することはない。かくしてその集合体としての企業は、いずれ存続の危機に陥る。顧客は進化するからだ。
そうなのだ。
これらは、企業がビジネスを勝ち抜く上で極めて重要な要素なのである。
だが、違和感がある。
これらの前に、具体的には、構想力の前に来るものがあるのではないだろうか。
おそらくそれは、本書で紹介されている「認知スキル」だ。
私は、“経営知能 = 認知スキル” だと読みとった。
「場の空気を読む力」と言ってもよいだろう。言うまで無くこの「場」は長い時間軸を持つ。
センサーメーカーのキーエンスは、ビジネス書でよく高収益企業の事例として取り上げられる。開発と直販営業に専念したビジネスモデルがその収益を実現している、というのが多くの見解で、よくシステマチックかつ勤勉、そしてユーザーのニーズをヒアリングするのに長けた営業にスポットが当たることが多い。構想力の意味を、先の辞書通りに捉えるならば、おそらくこのモデルを構築する際に、構想力が大いに貢献したのは間違いない。
「センサーで儲ける」という目標を実現する為の競争力の要素とは何か、その要素を実現する為の業務とは何か、その業務は一人でできるか、できないならば、多数にその業務を徹底させるには何が必要か、というような具合にである。
だが、最初にあったのは、「センサーで」という認知なのだ。「センサーは、これからの社会でもっと必要とされる。高度なセンサーがたくさん必要になる」、この認知が正しかったからこそ、キーエンスの高収益ビジネスモデルが生まれたのだ。
荒廃した土地にも植物は生まれる。それは進化だ。そこに生まれることができたこと、そして生存できていること。まさしく進化である。しかし、大きく枝を広げる木が生育できる土地は限られている。ましてや荘厳かつ深遠な森を求めるとなればなおさらである。