世界が分かる宗教社会学入門 | Man is what he reads.

世界が分かる宗教社会学入門

世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)/橋爪 大三郎
¥819
Amazon.co.jp

宗教、と聞くと“腫れ物に触る”という表現がすぐに頭に浮かぶ。とてもデリケートな話題だと認識しているのだ。接待時の話題としても宗教は、政治、野球と並んでタブーの一つである。




宗教に関心を持つきっかけというのは様々あると思うが、仏教、キリスト教以外の信者と思われる人と相対する場面はその一つではないだろうか。加えれば、仏教、キリスト教の敬虔な信者の人とつきあう場合もそうであろう。

意識するというのは、具体的にいうと「失礼があってはならない」と思うことである。

そう思うのは、宗旨を元にした社会規範が沢山存在することを知っているからだ。ある社会規範を破ったり、一方的に他所と比較して批判したりするのは教養の無い人間の所作であることをわたしたちはよく理解している。そして、世の中にはその規範を大切に守っている人々がいることも熟知している。よって、例えば“知らないと怖い○○教のルール”というような情報が最も実利的である。



 

 本書はそういった本ではない。書店では“宗教を知るならこの一冊”という帯とともに平積みされているが、そのような一夜漬け用の参考書ではない。書名通りの内容の本である。



 

 著者によると、宗教社会学とは社会学の一つであり、社会学とは、社会現象を科学的に解明する学問である。なぜ社会学が必要とされたかというと、社会現象とは大勢の人間の相互行為が複雑に絡み合って起こる現象であり、その複雑さを解明する為に補助線が必要になったからである。その補助線とは、社会構造である。社会構造にはさまざまある。法律、制度、役割、文化、組織、慣習などなど。宗教社会学は、こういった社会構造の一つで宗教に着目し、複雑な社会現象がなぜ起こったのか、これからどのような現象が起こるのかを模索する学問である。




本書の重心は、あくまで宗教社会学にあり、多宗教社会を生きる具体的ノウハウには無い。複雑な社会現象を経てできあがった様々の社会規範それ自体ではなく、それらの規範の元となる各宗教の宗旨、つまり各宗教の基本的考え方とその普及の中で社会全体がどのように変化したかというところに重心が置かれているのだ。例えばキリスト教の項は、ユダヤ教から別れ、使徒パウロの思想と普及活動、国家からの認定、ルターの宗教改革、カルヴァン思想とピューリタンの誕生、といった流れで説明がなされている。



 なので、個人的には歴史読み物のようで非常に楽しめた。おそらくこれを下地にいわゆる“ルール集”を読むと、それらのルールが決められた背景が想像できて面白そうだと思う。だが、どんなに興味が湧いてもそれ以上は深入りしない方がいいかなとも思う。知識を得るとウンチクを垂れたくなるし、他宗教の方との会話の際、不用意に話題にしてしまいそうだからだ。わたしのような素人はあまり知り過ぎない方がよい。


 やはり、宗教というのはデリケートな話題だ。