■これまで以上の緊張感
「恋の罪」で数々の取材を受けた。質問内容に記者の男女差があることに気づき、興味を覚えたという。「男性はいくつもの顔を持つ役柄は難しくないかと聞く。でも女性の場合は『女性はそういうものだ』という共通言語を持って質問してくる。私も、今回の役柄が特殊とは思わないし、抵抗はなかった」
園子温(そのしおん)監督が実在の事件に触発され、3人の女性の“業”を描いた「恋の罪」で、担当する事件に巻き込まれていく刑事を演じた。もともと園作品の大ファン。脚本を読み、一糸まとわぬ姿になるシーンがあることに驚きはあったが、「迷いよりも、出演したい気持ちが最初から上回っていた」と話す。
厳しい演出で知られる園監督との初タッグ。だが、監督は終始、彼女に対して穏やかだったという。「監督のメッセージは、現場や台本の中にあるから。それを私が感じ取って表現で返す。監督とのカメラをはさんだ無言のキャッチボールがとても楽しかった」
監督の想像を超える演技を各シーンで見せたいと思った。アドバイザーの元刑事を質問攻めにした。犯行現場での行動から、遺体の切断面から推理できることなど詳細に聞き出し、イメージを膨らませた。
「現場に着いたら、まず遺体。周辺チェックは後からなんですって。刑事の思考を理解すると自然に動きに反映する」。3年前に母親役を演じたときは街で母親たちの行動を観察した。
ダイエットもした。体のラインを見せる撮影の当日は朝から絶食。「みんなも大変だろうとメークさんに聞いたら、(共演者の)神楽坂恵さんは平気で食べてますよって。私、まだまだだなと思った」と笑った。
そんな彼女の姿勢に触れ、園監督は「非常にプロフェッショナルな女優」とたたえたという。「真剣勝負の場だと思ってましたから。これまで以上に危機感を持ち、準備をしました。監督にダメと言わせるものかと思っていた」
自身も多くの顔を持つ。平成19年、共同主宰する演劇ユニット「プロペラ犬」を旗揚げ。同年デザイナーとして自身のブランドを立ち上げた。執筆業も行い、プロペラ犬の来年1月公演で脚本家デビューする。「何事も、作っていく過程が好き」と話す。
女優業では、長年の夢であるゾンビ映画に出演したいという。「体の動くうちにゾンビと戦いたい。やっぱり女性の方が一度にいろんなことができる気がしますね」(文・橋本奈実)
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