2020年3月。日本が、いや世界がCOVID-19、通称「新型コロナウイルス」の流行により未曾有の大混乱に陥っていた。
しかし一介の高校生にしてみれば、コロナウイルスの影響なんて些末なもので、俺は何事も無く春休みを謳歌していた。
...なんてな。映画の公開が延びるわ、友達との飯の約束も取り消しになるわで、カレンダーには斜線が大量に引かれてある。
得てして俺もご多分にもれず、天下御免の超暇人高校生なのである。しかし、何もしないまま春休みが終わるのは避けたい。
そうして捻り出した暇つぶしのアイデアが「MAXコーヒー」の布教活動である。
これならMAXコーヒー信者を増やせる(?)うえに、日本経済の活性化にも繋がって一石二鳥だ。拙い文章待ったなしだが、高校生の暇つぶしだと思って目を瞑っていただきたい。

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〈1章〉MAXコーヒーってどんなコーヒー?
『Kさ、人をいきなり呼び出してといて、しかも要件は「珍しいコーヒーの解説をするから適当に質問したりしてくれ」ってどういうことさ?労働の対価は身をもって死払ってもらうよ?』

そいつは実に不満そうに言った。それに最後に不穏なセリフ入ってたぞ...?
ちなみに「K」ってのは俺のあだ名だ。夏目漱石の「こころ」に出てくる「K」が由来という、実に嫌なあだ名である。

まあ、文句垂れながらも付き合ってくれるだけありがたい。んじゃ、本題に入るぞ。
これがMAXコーヒーだ。見た目は黒と黄色で構成された、いわゆる「警戒色」ってやつだな。
『ハチとか、踏切の模様みたいなやつ?』
掻い摘んで言えば、それで合ってるぞ。買うのを躊躇わせるような色使いだが、ここでこのコーヒーの原材料と成分表示を見て欲しい。他のコーヒーとの違いが分かるか?
『うーん...炭水化物が含まれてる、こと...?』
いや、炭水化物含んでねえコーヒーなんてねえよ...。だが、惜しいところを突いてはいるな。コーヒーをよく飲む人なら、他のコーヒーとの違いがもうお分かりだろう。
基本的に原材料名は割合が高い順に表記されるんだ。
_つまり、加糖練乳と砂糖がコーヒーよりも多いのさ。その分炭水化物も多くなる。
ここまでくると、練乳入りのコーヒーと言うよりコーヒー入りの練乳、ともすれば練乳に練乳を加えた飲料の可能性も否定できない。

この強烈なまでの甘さにより、MAXコーヒーはコアなファンをこれまでに数多獲得してきたんだ。
『本当かい?僕はこんなコーヒー見たことないな』
ごもっとも。それもそのはず、地方で出回ることは非常に珍しい。俺だって、修学旅行で関東に行くまで飲んだことはなかったさ。あんまり美味いもんだから箱買い(笑)した。
関東ではよく出回ってんだよ。
『関東って、中国の遼東半島辺りだろ?』
そうそう、日本が日清戦争後に...っておい、早く帰してほしけりゃそういう冗談はやめとくんだな。
_話題を戻そう(ぺこぱ)

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〈2章〉地方で買えそうな場所は?
MAXコーヒーが地方では珍しいのは本当だ。が、思わぬ所で発見されることがある神出鬼没のドリンクでもあるんだよな。その昔流行った「ツチノコ」なんてのがあるが、あの神出鬼没っぷりからしてツチノコはMAXコーヒーだったんじゃねえかってのが俺の持論だ。
『ツチノコってあれだよね、とんねるずのところにやってくるやつ!』
バカ、そりゃガラガラヘビだ。まあそれはともかく、MAXコーヒーが売られてる可能性のある場所を挙げていくぞ。1つ目は「人目につかない自販機」だ。

人通りの多い所の自販機には、大抵名の知れた飲み物しか売られていない。だが、そうでないところならMAXコーヒーがあるだけでなく、とんでもない値段で売られてることがあるんだ。
『そりゃすごい。今度連れてってほしいな』
連れてくのは構わねえけど、こういう自販機は商品の入れ替えが頻繁に行われるからな...。実際、俺が知ってる自販機から缶のやつは無くなっちまったんだ。

そこで登場するのが、2つ目の可能性だ。
『というと?』
ディスカウントストアや薬局さ。具体的な店名は伏せとくが、その手の店で売ってあるところは俺たちの街にもあるぞ。
『ヴィレヴァンとか?』
いやそれ外国の雑貨売ってる店だし...。俺がドクターペッパー飲みたいときに行く店だし...。

〈終章〉
時間取っちまって悪かった。もう用事は終わりだ。俺のMAXコーヒー布教に協力してくれてサンキュな。
『労働の対価は身をもって死払うって約束、忘れてないよね?』
労働、具体的には何をさせる気なのだろうか。
それにしても「死払う」って文字おかしくない?なに、俺はブラック企業で働かなきゃダメなの?そして最期は「K」の如く...。やっぱりこのあだ名は嫌いだ。

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しかし長々と語った割に、随分中身が空っぽな紹介だったな。きちんと自己分析のできる賢しい模範的高校生・俺!
これを通してMAXコーヒーを新たに知る人はどのくらいいるだろうか。仮にいるとすれば、MAXコーヒーはまだまだ有名でないということになるが...。
そう考え、ふとこんな文句が口をついて出てきた。
“あんなに美味しいMAXコーヒーが全然有名じゃないことに俺は納得出来ない。”

〈あとがき〉
こんにちは、かげろうです。実に3ヶ月ぶりの「かげろうさんのにっき」は以前より面白かったでしょうか。以前までと作風が違いすぎて比べようがないですよね...。
「小説家になろう」でやっとけなどと言われそうですが、あそこの読者連中容赦なく叩いてくるもん...。
こんなスタンスだから成長などしようがありません。今後ラノベの主人公目線の書き方をすることはないでしょう。つーか途中セリフなんだかナレーションなんだか分かりにくいところ多すぎな。きちんと自己分(省略)。
最後に、練乳入りのコーヒー云々の例えは渡航氏の「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」からの引用であることを明記しておきます。

AD2020.04.01(水) 了