歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 Fumi's trek around the world on foot -199ページ目

ある再会

いつもの散歩コース
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-ユネッサン
温泉テーマパーク「ユネッサン」

なんかオーストラリア編書き始めてからコメントがすっかり減ってしまった気がする...

オーストラリア徒歩縦断の旅日記(クーバーぺディ→ポートオーガスタ)
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ある再会
道沿いに巨大な塩湖がいくつもありその一つを見に行った。白い氷原のように見える広大な干上がった
塩の湖の中に立て札があってこう書かれていた。
「軍の爆弾の標的地となるので立入禁止」
....そうですか。

真っ白な塩の平原に爆弾の落ちる様を想像しながら物騒な塩湖を後にして台地の上に出るとそこは砂漠
だった。膝より低い潅木だけが生えている。
2日間長距離を歩いたから今日は歩くのを少なめにしよう。
5時間ほどで予定距離の23kmを歩いたが身を隠す場所どころか一本の横道もない。あきらめて道端で
昼食にする。風があってパラソルが立てられないが日差しがきついので帽子をかぶって椅子に座ったまま
昼寝。そんな格好でも1時間近くは眠ってしまっていたようだ。人間やればできる。
仕方なくさらに進む。どこかでテントを張ってやろうかとも思ったがまだ3時過ぎ。太陽はまだ天頂から
そう離れているように見えない。全く影のない場所にテントを張り、熱すぎて中にも入れずに椅子に
座って暑さに耐えながら日が傾くのを待つ、なんて考えるだけでもぞっとする。
歩いていた方がましか..
木陰はとっくに諦めて横道を探すがそれさえない。距離は30kmを越えた。

通りかかった車の人が手を上げて通り過ぎたかと思うとまた戻ってきた。
「君にあったことがあるよ。ニュージーランドで」
そうだ、確かに見覚えがある。誰だったろう。
そうだ、フランだ。
クライストチャーチから北のチェビオットという町で出会い、片道5~6kmある海岸まで一緒に歩いたの
だった。彼は帰りは脚を引きずっていたが今は大丈夫そうだ。ニュージーランドに住んでいて奥さんは
チリ人だと言ってたな。
仕事は羊の毛刈りだ。オーストラリアにもその仕事で来ていてほんの数週間の滞在だそうだ。今もグレン
ダンボの北のバンバンという牧場に毛刈りの仕事に行く途中らしい。
旅行者以外で他の国で再会するなんてことは滅多にあることじゃない。こんなこともあるんだな。
懐かしい顔に会えて何だか嬉しかった。

ようやく横道を見つけたのは次のロードハウスのあるピンバの手前8km地点。もう2時間も歩けば
たどり着けるんだけど、もう十分だ。3日で105kmも歩けば。
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ウーメラ立入禁止区域

一昨日の夜から天気が悪い。雨だから散歩も休みにしようと思ったが止んでたので短めのコースを歩く。
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-排水溝 歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-湯気立つ沢
温泉町だけあって町のあちこちの排水溝や沢から湯気が立ってる。

オーストラリア徒歩縦断時の旅日記(クーバーペディ→ポートオーガスタ)
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ウーメラ立入禁止区域
グレンダンボを出て歩き始めたが、水タンクで補給してきた水が苦くてひどく後味が悪い。補給する時に
試しに飲んでみたのだがその時は気付かなかった。この水を飲んで何日も過ごすのは耐え難い。水以外の
ものならまだ我慢もできるが水だけは無理だ。
グレンダンボから72km地点に給水タンクがあるという情報を得ているので2日間でそこまで歩くことに
決める。のんびり行くつもりだったのにな。でもそれまではこの苦い水を飲み続けなくてはならないという
ことだ。つらいぞ。
グレンダンボのキャンプ場はテントを張るだけで14.5ドル、今までのキャンプ場で一番高い。設備が
良いわけでもなくテントサイトは赤土のままだし木も少ない。
グレンダンボから北へは253km、南へは115km行かないと何もないという地理的条件があるから
って足元見てるんじゃないのか。
翌日北から走ってきた年配のサイクリストと会って話をしたら、グレンダンボのたくさんある水タンクの
うち雨水のタンクは一つだけで残りのタンクは飲料用ではなかったそうだ。道理でね。
彼は今日中にピンバまで行くからと水のペットボトルをくれた。助かった。やっぱりまともな水ってのは
うまいもんだ。
二日間とも36kmと私としては長距離を歩き水タンクのあるレストエリアに到着。
情報通りにあってくれて本当に良かった。

オーストラリアの地図を見ると大陸中央南部に斜線で覆われたちょっと気になるおかしな空白地帯がある。
ウーメラ立入禁止区域(Woomera Prohibited Area)だ。馬鹿に広くて本州の半分以上の面積だそうだ。
軍の演習場や陸上射撃場、ミサイルやロケットの実験場、衛星の発射場などがあるらしい。
私の歩いているスチュアートハイウェイはその中を通っているが、地図上にはこんな注意書きが。
「道路のみは通行可能だが、道路から離れること、区域内でキャンプすることを禁ずる」
その区域内を一日で歩き通すことはもちろん不可能でどう考えても途中で何泊かはキャンプせざるを得ない。
気にはなりながらも道路から離れてキャンプをする。
さすがに道路脇にミサイルが飛んでくることもあるまい。
しかし大陸を縦断する道路沿いだというのになんだか物騒な場所があるもんだな。
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小田原で買出し

昨日は小田原まで食料品の買出しに行ってた。
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-小田原の海 歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-海と箱根
ついでに海を見に行った。久しぶりの海だ。
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-小田原城
小田原に行くのは3回目だが未だに駅からそう離れていない有名な小田原城には足を向けていない。
そのうち行くこともあるのかな?

ホテルの従業員食堂で食事が出るのは昼と夜の2食なのでもう1食分は自分で用意しなければならない。
部屋に小さな冷蔵庫がついてるのは助かるな。
寮の近所の店といえば15分くらい歩いたところにコンビニがあるくらいだ。
私はコンビニには普段特別な理由がない限り行かない。
トイレ借りるか、マンガ立ち読みするか、どうしてもすぐに必要な物を最小限に買うか、もしくは
付き合いで入るか、くらいでどちらかといえばコンビニ嫌いかな。
今日も職場の人と一緒に帰ったので途中でコンビニに寄ったけど何にも買わなかった。
理由は単純に値段が高いから。便利だから高いなら便利じゃなくていい。私の場合ね。
まあ便利さを求めるならわざわざ歩きの旅なんてやらないわな。

お祝いの儀式

箱根のいつもの散歩道
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-温泉小学校 歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-温泉幼稚園
なんだか温かそうだな。

オーストラリア徒歩縦断時の旅日記(クーバーペディ→ポートオーガスタ)
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お祝いの儀式
「グレンダンボ 住民  羊 22,500  蠅 2,000,000  人間 30」
そう書かれた看板が入り口に立っている。

ようやく長い長い9日間が終わりグレンダンボのロードハウスに到着した。
ロードハウスとは道路沿いにあるガソリンスタンド、ホテル、バー、キャンプ場などが一体となった施設だ。
シャワーがあってビールがある。嬉しいなあ。
ロードハウスにたどり着くと毎回儀式のようにやっていることがある。
テントを張った後にレストランへ行って、ハンバーガーと冷えたビールで祝杯をあげるのだ。
祝杯の理由は強いて言えば無事に次の町まで進んだことに対してであるが、何のことはない、
たとえ一日の距離だとしても祝杯をあげるのだ。一日で次のロードハウスにたどり着けるなんて
滅多にあることじゃない。それだけでも祝杯に値する、とか言って。
ハンバーガーはレストランの料理の中では一番安いが、とにかくでかくてボリュームがある。
大皿に載ってナイフ・フォークと一緒に出てくることも多い。
そして冷たいビールでのどを潤しながら一枚のオーストラリアの地図上の道に前のロードハウスから
歩いた分だけ色を塗る。4~5日歩いていても地図上で進んだ距離は悲しいほどに短い。
1日分だと全く目的地に近づいた気がしないのでまとめてやることにしているのだ。
なんてことのない作業のようであるが、実はこれがなかなか楽しい。
今回は長かった分、塗り甲斐があるなあ。

しかしまた一つ悩みの種ができた。リヤカーのタイヤのスポークが一本折れてしまったのだ。
一昨日適当なキャンプ地が見つからず石のごろごろした荒地に乗り入れた時に折れたのだろう。
とりあえず進むのに支障はないが偏心するのかタイヤがよれて見える。
何事もなく進めるというのはそれだけでありがたいことなんだな。問題が起きた時にだけいつもそう思う。
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最高に長い9日間

昨日の散歩は気分を変えて片道30分くらいの近くにある浅間山(せんげんやま)に登ってみた。
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-浅間山 歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-千条の滝
箱根が見渡せるかなと思ってたが、山頂に至るまでずっと林の中で何も見えなかった。
右は途中にある千条(ちすじ)の滝。

オーストラリア徒歩縦断の旅日記(クーバーぺディ→ポートオーガスタ)
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今日も風が強い。風が強いとパラソルがさせないから影がなくて困る。
たまたまレストエリアがあって助かった。
昼食に野菜スープを作る。途中で蠅が浮かんでいるのを見つけて嫌な気分になる。
蠅を取り除きそんな事実はさっぱり忘れることにした。蠅1匹ごときに昼食をふいにされてたまるか。
狭くて短いベンチしかないのでそれに自分の折りたたみ椅子を足して横になり昼寝する。
またもや強風が吹き始めた。空は曇ってはいるがまだまだ明るい。台風でもないのにこの猛烈な風は
なんなんだ?
なんだか鼻がむずむずすると思ったら鼻の中からぺしゃんこになった蠅の死体が出てきた...
最っ低!!

またも嵐が来た。フライのジッパーは完全にいかれてしまってガムテープで留めておいてもすぐに
剥がれ、風ではためいてすごくうるさい。とうとう雨が降ってきた。あきらめて寝るしかない。
食料の入ったいくつものダンボール箱を濡れないようにテント内に入れてあったので狭くて窮屈だ。
テント側面は風を受けて大きく内側に張り出し、風の音はやかましい。夜中には足元が浸水し始めたので
足を縮めて寝る。
そんな状況でもなんだかんだで寝られるもんだ。

テルモス(魔法瓶)が手に入ってからは毎日そこそこに冷えた水が飲めるようになって助かっている。
もちろん水を冷やす手段などはないので原始的な方法を使う。
夜明け前の一番気温が低くなる時間帯にテントの外に出してあるペットボトルの水をテルモスに移すのだ。
昼になってもぬるま湯を飲まなくてすむのはありがたい。

しかし9日間というには長いな。3日ずつで序盤、中盤、終盤と区切ることさえできる。
こうなるとさすがに楽しんでいるとは言えず、ただ耐えているという感じだ。
3日目、4日目が精神的に一番きつい。3日歩いてかなり歩いたつもりでもやっと序盤が終わっただけ。
4日歩いて120kmを歩いたのにまだ半分までも来ていないのだ。
坂を登りつめて見えるのは今歩いてきたのとほとんど変わらない景色だ。曇っていて太陽の位置がわから
なければどちらから来てどちらに進んで良いのかわからなくなりそうだ。
クーバーぺディを経って6日目。中盤の3日目。
この辺になってようやく次のロードハウス、グレンダンボが近づいてきたと思えるようになった。
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リヤカーさっちゃん

いつもの散歩道コーナー
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-彫刻の森美術館 
箱根彫刻の森美術館。野外美術館でピカソやロダンなどの作品が展示されているらしい。
いつも前や間を通る小道の垣根の間からちらちら見える作品を覗くだけで中に入ったことはない。

オーストラリア徒歩縦断時の旅日記より(クーバーペディ→ポートオーガスタ)
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リヤカーさっちゃん
北からの風が吹いている。追い風だ。
自転車で走ってるならどんどん進めて気分いいんだろうな。
自転車だと追い風と向かい風、上り道と下り道では進める距離が極端に違うのだが、歩きだとさほどの違い
はない。むろん向かい風より追い風、上り道より下り道が歩くのは楽ではあるが追い風で下り道だからと
いって走られるわけじゃなし。むしろ急な下り坂などは制動をかけるのに脚に負担がかかるから嬉しくない。上りや向かい風でも平坦よりはしんどいが自転車ほど極端に違うわけではない。
今吹いてるくらいの追い風ならまあ素直に嬉しい。でも何度も言うが、風が吹いてて一番嬉しいのは蠅が少ないことだな。
珍しく木の生えている場所があってそこで昼食にする。アボリジニがブーメランや槍などの木彫りの道具を作るのに使うマルガという丸っこい形の木で丈はあまり高くない。その木の下の小さな影の部分にマットを敷いて昼寝する。マルガの葉は松葉のように細く、できる木の影は全体として薄い。日向で顔に帽子を載せて昼寝するしかないこともあるからそれよりは余程ましだが風が吹いてないと寝られたもんじゃなさそうだ。

暑い中うとうとしながらふとリヤカーさっちゃんについて考えた。
「リヤカーさっちゃん」は10年ほど前にダーウィンからアデレードまでを歩き、さらにアデレードから
パースへ、そしてカサリンへとオーストラリアを徒歩で半周した日本人女性である。
この253kmの無人区間を歩き通してアデレードに着き、やっと大陸縦断を終えたその後に
次にそこから西海岸のパースを目指して歩き出す?あり得ない!
彼女も最初はダーウィンからアデレードまでの縦断だけのつもりでいたらしい。
しかし気が変わってアデレードを再び出発しナラボー平原を越えてパースまでを歩き、その後いったん
帰国した後パースからカサリンまで歩いているのだ。
トータル10,000km。私の歩く距離の3倍だ...
何を考えて半周も歩いたのだろうか?
人のことは言えた義理はないが、私には到底そんな気力はない。
縦断すればすっかり満足してその先をまた歩こうとは思わない。
しかも彼女がリヤカーを押してこの辺を歩いたのは12月の終わり頃、つまり夏だったらしい。
ダーウィンから3ヶ月で歩いたというから9月頃に歩き始めたということだ。
北部のダーウィン付近は一年中暑いから3ヶ月間ずっと暑い中を歩き続けた訳だ。
11月の初めでこんなにくそ暑いというのに。
しかもキャンプ場ではなくブッシュの中で1週間もの休養をとっていたというから恐れ入る。
いったい彼女が何を考えていたのか聞いてみたい。
焼けつく暑さと常にまとわりつく蠅に耐えながらいったい何を思っていたのだろう。
星や月の明り以外何も見えない荒野の夜に一人何を感じていたのだろう。
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 リヤカーさっちゃんに会ったことがあるとか話を聞いたことがある人がいたら教えてね

雷様!!

いつもの散歩道の風景
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-芸術の森駅
箱根山岳鉄道、小涌谷駅の次の駅「芸術の森駅」

今日も、現在書き進めているオーストラリア大陸徒歩縦断の旅日記の一部をコピーしただけ。
もし「つまんねーぞー」とか「こんなことが気になる」とか意見質問等があればコメントかメールでぜひ。
自分が書いてる文章を他人がどう受け取るかはわからないものだから。
励みにもなるし、多少プレッシャーがあった方が筆が進んでいい気がする。

オーストラリア徒歩縦断旅日記(クーバーペディ→ポートオーガスタ)
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雷様!!
50リットル近くの水と1か月分の食料、それにいつもの荷物を積むとリヤカーの下部はたわみ、タイヤ
はつぶれているのがわかる。
クーバーペディを出発して、今回のルートでの最長無補給区間に入った。ここから253kmの間、道沿い
にはロードハウスどころか一軒の人家もない。水も食料も全て自分で運んでいくしかないのだ。
いつもよりも長く1日に30km近く歩いても9日間かかる計算だ。
タイヤの空気が少ない気がして途中で荷物を下ろして空気を入れる。それでもまた荷物を載せるとつぶれる
のは荷物が重すぎるせいだ。最大積載量をオーバーしているだろう。
昨日まで風はなかったのに今日は強い風が吹いている。風が強すぎて料理ができないので昼食は食パンと
缶詰ですませる。ホテルの冷蔵庫で凍らせておいて朝にはかちこちだった水のペットボトルは昼にはもう
ぬるくなっていた。
道路沿いのどこにも影はない。そんな中でも蠅は顔に群がってくる。風があってまだよかった。

夕方より空が掻き曇り遠くに稲光が光るのが見え始めた。嵐がきそうな雰囲気である。
辺りは膝より低い茂みが所々にあるばかりでそれ以外には全く何にもない平原だ。
大地の起伏も少なく、やきもきしながらほんの少しばかり低そうな場所にテントを張る。
雷がだんだん近づいてくる気配がする。
やばいんじゃないのか、それって。
地平線まで見渡してもこのテントよりも高いものは存在しないぞ!
辺りは一層暗くなり、耳をつんざく轟音とともにあちらこちらに雷が落ち始めた。
おいおい、いったいどうしたらいいんだ?
いつもならテントのすぐ横に置いておくリヤカーを地面が少しだけ高くなってる離れた場所に立てて放置
しておく。避雷針代わりだ。心持ちテントよりは高いが、気休めにしかならないことは重々承知の上で。
雷様、落ちるならどうかそちらに落ちてください!!
広大な台地に比べれば、自分の居るこの場所に雷が落ちる確率なんて低いもんだ。
自分にそう言い聞かせながら運を天にまかせてただただ嵐が過ぎ去るのを待っていた。
テントの中なのに体の位置を低くして寝そべったまま。
意味ねえぞー!
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 ほんとに意味ねえ...
 長く旅を続けているとこういう風に運を天にまかせるしかない事態に必ず遭遇するもんだ。

地下10mに眠る

いつもの散歩道にある風景
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-蛇骨川の牛小屋橋
「蛇骨川」にかかる「牛小屋橋」

オーストラリア大陸徒歩縦断時の旅日記(クーバーペディ)
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地下に眠る
今朝目を覚ますといつものように鳥の声は聞こえず、ひんやりした空気と静寂、そして暗闇があった。
朝なのか昼なのか、全く時間の感覚がない。
そうだ。地下10mにあるベッドで寝ていたんだった。
暗くて静かだと人は長い時間眠られるものだな。

ようやくクーバーペディに到着してRADEKA'S Downunderバックパッカーズというホテルに落ち着いた
のだがそのホテルの部屋は地下にある。
ホテルだけではない。レストランや教会、店や住居などほとんどの施設が地下にある。オパールの採掘で
有名な町だが、強烈な暑さから逃れるため住民のほとんどがオパールの採掘でできた穴を利用して住んで
いるという珍しい町だ。
ダーウィンを出て以来宿に泊まるのはアリススプリングスに次いで2度目で、物資補給と休養のため
1週間以上は泊まるつもりでいる。
滞在の主な理由が休養というのはなんとも気楽なことだな。
既にお気に入りのクーパービール6本と4ℓの紙パックワインを買い込んできていて休養する気は満々。
オパールにもほとんど興味がないから観光する気もなし。

町に着いて5日目、ぼちぼち出発の準備に取りかかろうかとスーパーで食料や燃料の買出しをした帰り道、
荷物を満載した砂埃だらけのオフロードバイクが通りかかった。長距離を走っているライダーやサイク
リストにはやはり親近感が湧く。移動の手段が違うだけで求めているものは同じだと思うからだ。
「どこから来たんだろうな」と思って見ていると、そのバイクからいきなり
「ふみさん!」
と呼びかけられたので驚いた。
よく見るとユララ(エアーズロックリゾート)のキャンプ場で出会ったヨシ君だ。
ハードなダート道ばかりを選んでオーストラリア中を走り回ってるライダーで、ウルル(エアーズロック)
から西のDocker Riverを通り西オーストラリアを回ってナラボー平原を抜けてきたのだ。
途中でチャリダーアキ君とも出会ったという。
そして彼も同じバックパッカーズの、しかも隣のベッドに泊まることになった。若いのになかなかできた
男でしかも料理もうまい。ユララの時みたいに飲みながらゆっくり話ができるのが楽しみだ。
またもや滞在が延びてしまうのは確実だな。
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 結局この穴倉で11泊、毎日飲んでばかりでごろごろして過ごした。
よく飲んでよく寝たなあ。

パンパンパララが鳴いている

散歩コースの途中にある看板
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-いのしし注意
夜仕事が終わって帰る時いのししに出くわす従業員も多い。どでかいのがいるそうだ。

オーストラリア徒歩縦断時の旅日記(ウルル→クーバーペディ)
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パンパンパララが鳴いている
ブッシュの中からパンパンパララの鳴き声が聞こえてくる。
「パンパンパララ(panpanpalala)」はオーストラリアに生息するある鳥の名前だが
ウルル(エアーズロック)に居るときアボリジニのアナング族がそう呼ぶことを知った。
歩いている途中によく鳴き声を聞いていて以前から気になっていた鳥だ。
鳴き声が口笛のようで変わっているし、最後に何だか太鼓のような不思議な音を立てるのだ。
英語名は“Crested Bellbird”
とさかのあるスズドリ(鈴鳥)。面白くもなんともない名前だ。
それに対して「パンパンパララ」はまさに聞いたまんまの鳴き声である。
最初にその名を知ったときは
「ふ~ん、まあ言われてみればパンパンパララと聞こえないこともないな」
などと思っていたが、今聞くと確かに「パンパンパララ」と聞こえる。
いやそれどころではない。
もはやどう聞いても「パンパンパララ」としか聞こえないのだ。
この名を聞くまでその鳴き声をどう受け取っていたのかも思い出せない始末だ。

言葉って不思議だ。言葉の響きはその物のイメージまで変えてしまう。
言語によって世界は違って見えるというがその通りかもしれない。
日本語には日本語の世界があり、英語には英語の、アボリジニにはアボリジニの言葉の世界がある。
本当に他の世界を理解するならその言語から覚えなければならないということか。
ちょっと大変だな。
ただパンパンパララは大昔から「パンパンパララ」と鳴いていたのだ。
そうだ、そういうことだ。
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  強引な締めだなぁ..

小さな茂みの裏で

洗い場の仕事にもようやく慣れてきて少しは効率的にできるようになってきたかな。
でもまあ油断は禁物だね。
昨日の散歩道で危険な1号線を迂回できる道を見つけた。なかなかいいぞ。
コースの半分以上は遊歩道や山道だ。
歩き人ふみとあゆみの徒歩世界旅行 日本・台湾編-お地蔵様
散歩道道端のお地蔵様

オーストラリア徒歩縦断時の旅日記の一部(ウルル→クーバーペディ)
オーストラリアの写真がのっけられればいいんだけど残念ながら手元にはない
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小さな茂みの裏で
昨夜は一晩中強風が吹き荒れていてフライのジッパーが壊れてしまった。まいったな。修理できるかな。
滅多に雨が降らないからいいけど降ったら悲惨だな。
前からの風がきつく帽子を飛ばされそうで歩きづらい。ただ強風の日は吹き飛ばされてしまうのか、
蠅が全然いないのが嬉しい。
途中1台の車が止まりアデレードの”Advertiser”という新聞だけどインタビューしてもいいかと
いうので受ける。新聞のインタビューはダーウィンを出て以来3度目だ。お姉さんにテープレコーダー
でインタビューを録音され、カメラマンに歩いている写真を何回も撮られる。
「思いっきり笑って」
と何度も言われるが、何もおかしくないのにそう何度も「思いっきり」は笑えないぞ。

翌日歩いている時にもよおしてきたので道端にリヤカーを止めた。
低い茂みがバラバラとしかなく隠れにくい場所で、とある小さな茂みの裏側に座り込む。
隠れ場所としては大きさが十分ではなく車が通りかかったら車の動きに合わせて体の位置を移動させない
と丸見えで、同時に両方向から車が来たら万事休すという形だ。
ちょうど1台の車が通りかかったのでそれをやり過ごしてから、事にかかろうと思っていると道端の
リヤカーが気になったのか車はそこに停車してしまった。
行ってしまってくれないかと少し待つが止まったままだ。仕方ないな。
「何の問題もない。ここに居るよ」
って感じで茂みからひょいと姿を現すが、何のためにそんな場所にいるかは明白だ。
事情を察して発車してくれるかと思いきや車から誰か降りてきたので諦めて便意を抱えたまま
そちらに向かう。
よく見ると昨日のインタビュアーのお姉さんだ。
「一つだけ質問があるの。あなたの出身地は日本のどこ?」
記事に必要なのだろう。それだけ聞くとすぐに車は走り去ったので、またあわてて茂みに向かう。
絶妙な間の悪さとバツの悪さであった。
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歩き旅にいつも付きまとう問題で、にがい経験は少なくない。
これくらいだとごく軽いエピソードかな。