どうもマルセルの戯曲は、惹かれる一方、好かん、と感じているが、その好かなさは、ぼくのなかにある好かなさでもあると気づいている。つまり似た人間なのである。かれが人間に斬り込む分析的精神は、ぼくのそれと共通した次元をもっている。でなければ惹かれるはずはない。同時に、戯曲においてはそれがやり過ぎになっている作品もある。というより、ぼくはそれでもバランスをとっているが、かれは明白に脱線することがある。この点ははっきりさせておく。 

 

 一言で言って、かれに意外にも節操が欠けるときがあることに、ぼくはおどろいたのだ。