これはちょっと思いだし、気づいたから書いておくのである。滞欧中、旅行先でオーストリア人の傲慢さに気づいた。これは渡欧以前に日本(東京)でオーストリア人からドイツ語会話の練習を受けた際にも感じていたことであったが、オーストリア本国でも、不愉快なものとして経験することになった(全部からではない)。ようするに、この傲慢さは、田舎者の海外知らずなのだが、フランス人などと比べて、強烈な先入観・偏見が、アジアにたいしてあるのである。民族的なものかと思っていた(それでも、ドイツよりオーストリアのほうがぼくは好きである、というより、比べものにならない)が、近頃、歴史的・地理学的な理由によるのかもしれない、と思うようになっている。なにしろ、東方文明の武力的圧迫にたいして、直に戦い、長い間耐え通してきた地域である。あらゆる比較観念を総動員して、相手にたいして突っ張る自己主張の度が強すぎるほどになるのは、避けられないことだったかもしれない。オーストリア帝国がヨーロッパの外壁になってくれていたおかげで、フランスなどは穏やかな生活をすることができていた。もっともフランス人自身の英知と感覚によって、他の欧州人よりも、意識の修正を積み重ねてきたのも事実であると思う。イギリス人も、そういう、努力して得た公平感覚があるようだ。