これは前から思っていたことで、いまはじめて気づいて書くのではないのだが、言葉というものには言ってはならない限界というものがあり、それを言ったら永久に、神によってさえも、和解は不可能だという、厳しい制限がある。それを、ヤスパースも、彼の、人間どうしの「交わり」の限界状況としての「愛しながらの闘争」(liebender Kampf)の思想において、理解していない、とぼくは思っている。 残念ながら、この制限をわきまえないか、意図的に踏み越える人間はいるのであり、そういう者らは、いわば永久に魂の楽園から追放されるのである。
偉大な哲人といえども、間違っているものはある、という指摘をも意味するこの節を、この意味のために、敢えて「ヤスパース名言集」の枠のなかに位置づけておく。
付言すれば、言葉の限界を越える者は、愛にもとづいてなどいないのである。それを本人も承知しているか、自己了解していないのである。