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アランの言うように、思想はその最良で不滅の部分は美であるのなら、思想は ただの分析やアイデアからは生れない、ということだ。思想は 魂の本質的なものを証言することに窮極するものである。この意味で真の芸術と等しい。 

 

また、そうであるのなら、思想も、美も、「根源的に歴史的」であることが、その本質を成すのである。ともに、「具体的な根」というものに基づくものである。「魂」がそうなのである。魂が「根源」であるということは、「歴史性」に徹することによってしか真の「普遍」は感得されないということである。つまり、自ら歴史的に規定され固有の秩序を受けている魂が受容しうる美や思想は、それ自体、歴史的に規定され固有の秩序を受けている美や思想のみである、ということなのである(単なる一般的なものに対してではなく、自らの歴史性と異なっても深く歴史的なものに対してこそ、真の魂は共振・共鳴する)。 だから、自らの魂を真に感じている者は、ヒーリング原則などから直接にひねり出された〈美〉などを本気で受け入れることはけっしてないばかりか、ほとんど生理的な違和感と拒絶感を覚えるのである。 

 

これが、形而上的アンティミスムの立場の重要性を示す人間事情である。 己れの「思想」を培うことなしには「人間」は存在しないことを、この立場(立場というにはあまりに根源に徹した境位)は理解している。