長らく、マルセルに関する叙述を「マルセル ノオト」から外していた。マルセル思想がぼくにとって中心的なものになってきたからである。これも、「マルセル ノオト」という別枠にする必要はないのだが、気が向いたので再びこの枠にするのである。

 

「形而上日記」は、なんとも重要な啓発的著作である。294頁で、やはりマルセルにとって「 intimité 」(親密性)は中心的な意味をもつことがわかる。「愛」と換言できるものである。この非個性化、一般化を、マルセルは徹底して嫌う。「親密性」は、「いっそう広大な生への参与(participation)」なのである。そして彼は、人間の思惟そのものに、われわれの免れ難い陥穽があることに気づいており、このことに意識的であろうとする。