上と下は連続した文ではない。ロダンが感得した彫刻の二大原則に触れている高田先生の叙述部分を、重要であるので紹介した。 美術上の「自然崇拝」の意味は、読者はもう充分正確に理解されうるであろう。 

《「これから彫刻をやるときは、形を広がりで見ないで、奥行きで見るんだよ。表面を量体の端と考えるのだ。おまえのほうへ大小さまざまの尖端が突き出ているんだと思え。そうすれば、おまえは肉付け法をのみこんだことになるよ。」》
 このじつに明晰な言葉による、彫刻原則(法則)の教えは、ロダンが《ある装飾屋のところで働いていて、一日六フランしかもらえなかった頃、同じ仕事場》の、《コンスタン・シモンという石膏細工の先輩》によるものだという。
《これこそ彫刻の根本的な基礎である。若いロダンが、長年の実地経験を持った一職人からこれを教わったことは、まさに幸運だった。彼はこれを一生の憲法とした。いまから見ると、ロダンの彫刻道はここで決定的な一展開をしたと言える。彼はこの教訓に常に感謝していた。》