犀の如く一人林の中を歩め
《たしかに空腹に悩む私の「想像」の中では、異常なものが働き「力」になっていた。これがもしもっと「精神力」といわれる領域で熾烈になったならば、たとえば聖フランシスコのスティグマも可能であろう。けれども私の思考はそこから「奇蹟」や「神秘」には行かず、哲学的反省になっていた。なぜなら「真」に対する実感とか触知の問題が芸術感覚の領域に入り、「創造」とはなんであるかと考えてくる時、私の空腹と夢との間にあると同じ相関性があると思われたのである。》・・・
スティグマ(聖痕)の如き「奇蹟」現象は、「夢」の領域が「現実」に謂わば逆流して起こる、想念具現化であろう。芸術創造においては或る意味でこれと同じことが起こる。直観された純粋感覚の〈作品〉内での表現あるいは象徴的具象化である。その際、直観力は、或る喪失感と表裏であり、〈失われた時〉の非意志的想起(レミニサンス)を巡りこれを回復し留めようとする探求的行動が創造となる。理解を一歩一歩進めてゆこう。