dEvEloPing: レタッチャー英国日誌 -3ページ目

労働時間と英国

英国では勤務時間に二言はない。
たとえクリエイティブ、という名を隠れ蓑に、(労働時間的に)悪の限りをつくす写真業界といえどもその例外ではない。終業時間が18時なら18時に終わる。

パックショットファオトグラフィー、ロンドン中心部に居を構え、撮影からレタッチまでこなす、物取り専科のフォトスタジオ。私が英国で最初に勤めた会社だ。*

勤務初日。
隣で撮影するフォトグラファーに助けられつつも業務をこなす。**
緊張の為か、時が経つのも忘れ仕事に没頭していると、彼が言った。
"it's almost quarter to six now"モニター右上に目をやるとデジタル時計は6時15分前を指していた。勤務時間は9時から18時までと聞かされてわいたが、定時刻は帰宅の時間という考えはなかった。
日本での経験上、終業時間より第2ラウンド、まだ仕事は残っておりここから気合の入れ直し。新たなるイメージを開きレタッチを始める、。。。しばらくすと後より声が"What are you doing.It's six o'clock. Need to leave now" 笑いながら、せき立てる様にマネージャーは順々に照明を落としていった。***

それまでもいくつかのスタジオを見聞してきたが、定時が設定され、しかも確り守られている会社は初見。きっちりと六時に皆が帰り、明かりが落とされる光景は驚きを越し、感動であった。****

なぜ英国の写真業界は定時帰宅が可能か、それは広告代理店や雑誌社などのクライアントも定時に終わるから。彼らが作り出した労働システムには過度な残業を強いる概念はなく、それは日本では深夜が常識なクリエイティブインダストリーにも当てはまる。最も感心する事は、この労働時間で平均的に見て日本と大差ない収入を得られ、全体的に見て、これだけの生活環境を築いている事であろうか。*****

私はだからといって、”それ故に英国の方が優れてる”とは言わず、思いもしない、******が、単純に、過度な残業を課さずとも機能する労働システム、安定した経営が出来る社会、それはそれにこした事はない、と思う。

追記
余談だが現在私が勤める会社は10時に始まり6時に閉じる。途中昼休みが一時間挟むので実働は7時間。残業がある日もある。しかし30分以上の残業は稀で過去最長は21時、年に1回あるかないかだ。無論残業代は分刻みで支給される。



*正社員ではなくフリーランスとして。
**パックショットは地下を含めて3階建て。各階にスタジオを有し、ベイスメントに構える部屋が最大。レッタッチルームもあるのだが諸事情で、私はベイスメントでフォトグラファーと共同作業。
***無論この日が特別という訳ではなく、その後もしっかり6時帰宅。
****しかもパックショットは物取り専科。モデル撮影と違い時間的拘束の少ない物取りには終わりはない。無論定時、就業時間という概念は存在しない、というのが私の経験から満ちだされた結論。
***** この数年でポンドの価値が円に対して半額、ドルに対して3/4に下落したため、GDP per Capitaでは日本の方が高いがPPP per Capita では英国が逆転する。住んだ感想としては、同国の生活レベルは同等ではないであろうか?
******英国を含めたヨーロッパの労働問題は複雑かつ根深い物なので、興味がある方は色々と調べてみてください。