とても寒い冬


冬はきらいだってつぶやいた


私は、毎日イライラしていた


いつ、学校に行けなくなるのか?

ライブが出来なくなるのか?


私にとって、歌うことは、生きることと同じ


ライブの予定を出来るかぎりいれていこう


次ぎここに帰って来れるのは、遠い先

いつになるか、わからない



私は、病気にかかっていた

それは、体の病気

これ以上数値が下がれば、入院して安静にしなくてはいけなくなる

それまでに、出来ることはしておこう



あたりまえだったことが、あたりまえにできない

スキップして歩くのも、飛び跳ねたりすることも

走ることなんて、もっての他だ



先生・・・私歌ってもいいですか?




静かに歌う分には、問題ないよ

体調には、注意して疲れたら休めるようにして下さい



わかりました・・・




先生は笑顔でもういいですよと言わんばかりだった

次ぎの患者さんが待ってるんだろう

さりがなく、私を診察室から出るのを待ってる



ありがとうございました・・・・



あーこんなことにも、社交辞令発見

なんて脾肉めいた考え方しか出来ないのも

このイライラのせいだ



寒いのは嫌い

外の空気に触れて凍りつきそうな体を動かした




それからの私は月に5~7本のペースでライブにでた

体調が悪くても、穴をあける訳にはいかないいんだから

思ったように、うまく歌えない

自分に言い聞かせる



今は仕方ない・・・・



それでも悔しさは、こみ上げてくる

ここに立って歌う以上私の状態なんて関係ない

これが、私でみんながそれを聞いている

本当はもっと歌えるのに後半には、バテテ苦しかった

それでも、これが私の精一杯


1人でもいいから届いてほしい

少しの時間でも笑顔や元気になってほしい

私が歌い始めた原点だった



サインちょうだい


今度はいつライブやるの?



ファンの人とたわいもない話をする

自然とココロが和らいで

ありがとうございます

心からそう思う



笑顔や元気をもらってるのは、わたしのほうだ

病気への不安も根拠のない苛立ちも

忘れてしまう


ありがとう



季節もそろそろ春を迎えようとしていた

私が歌えるのも、この春が終わるころ

桜が散るころには、このライブハウスにも私はいない



練習のためにカラオケで自分の声を録音して聞く

また歌う。聞くを繰り返す


納得いかない・・・・


もしかしたら、今回が最後かもしれないのに・・・・



このころから、練習時間も3時間ほどに減ってた

前までは、納得いかなきゃ朝まで繰り返し直していったのに、体力がもたない

不完全のまま本番をむかえた


1曲目を歌い終わった時から、体がふらついた

上手く歌えなくてもいい

最後まで伝えたいんだ


途中歌詞が飛んでた

1番の歌詞を繰り返し歌う

無我夢中ってやつは、まさにこの事だ

私の歌を聴いてくれる人がいる

それに答えたい

完全に練習不足だってわかってる

応援してくれるのが、うれしくて今にも泣き出したくなる



最後まで歌いきり「ありがとうございました」

ふかぶかと頭を下げた


数人ではあったけど、ファンになってくれた人達

これからって時なのに・・・・


私はこの日、活動休止を決めた

事務所とマネージャーには、病気のことを伝えたあったので、

よく頑張ったね。ゆっくり休んで元気になってね

って言ってもらえた


「はい。わかりました」


私はゆっくり扉をしめた

元気になった頃、私わを待っていてくれる場所はあるの?

先がみえない



まだ、桜は蕾のままだった





そして、地獄のような日々はこれから始まろうとしていた

うつ病という、えたいの知れないものとの

まさに戦いだった




つづく