このブログに書かれている内容には一部、実在の企業名・商品名・人物名が登場しますがあくまでもフィクションであり、実際の広告および商品の企画・開発過程とは一切関係ありません。
CocaCola 『つながる瞬間に』キャンペーン Xマスのバトン篇
対象CMは下記URLでご覧いただけます。
登場人物
CD(クリエイティブ・ディレクター)
クリエイティブの方針を決定する人。大手代理店の40歳でこのポジションをGETできたら、優秀かどうかはさておき、運がいいことは確かである。
PL(プランナー)
CDの「こういう広告つくりたいんだよなあ。」の一言で駄案から本命、捨て案まで考える人。実際は企画よりも映画見てたり、ほとんど営業みたいなことしてたりすることが多い。
P(プロデューサー)
地位的には代理店には属さず、制作会社に属する。ヒトと金を動かすのが仕事。『●●さんはいいけどたけぇんだよなあ。他で行くか!』
PM(プロダクションマネージャー)
マネージャーという肩書きがつくが、パシリ。とにかく弁当の手配から掃除、資料集めまでなんでも。マジでつらい。ここで5年耐えれば「プロデューサー」になれる。と言われて日々耐えている。テレビ局でいうとADみたいなポジションか。
某月某日 某代理店 某クリエイティブ局 A会議室にて
CD:でさあ、クリスマスの企画をそろそろ出してくれってCCJC(註1)から言われてんのよ。まあ、「つながる瞬間に」のキャンペーンだけどさ、そろそろこのスライス・オブ・ライフ路線も見てるほうが飽きがくるしさ。シズル(註2)はあるけどね。。なんかクリスマスだしさあ、トクベツ感とかマジック感(註3)みたいなものいれらんねぇかなあ?と思ってんの、俺。
PL:トクベツ感ってあれですか、レイザーラモンHGとかですか?「サンタ、フォー!」みたいな?
P:ハハハーッ!イッすねえ、それ!ハハハー!!あいっかわらず、面白いこと考えるなァ!!かぁーっ!
CD:ちーがうよっバカ。トンマナ(註4)わかってんだろ?俺がいってんのはさあ、こうちょっとしたサプライズみたいなやつ。あんだろ?こうお笑いじゃなくて、共感(註5)+アルファ(註6)がさあ。
PL:あれっすか?じゃあー、なんかわかんないですけどー(註7)、こう家族でサンタを待ってるとー、サ
ンタがー、単身赴任のお父さんをあのでかい袋から出してくれてー、で、子供たち大喜び、みたいな。あとお母さんほほえむ、とか。
CD:んー、袋からお父さんてのはクライアント的にやりすぎだけど、そういうコト。家族を見守るサンタ、って
のはアリだよな?コーラの化身(註8)なんだよな、サンタは。...あ、こういうのどうだ?なんかわかんないけどさあ(註9)、クリスマスシーンのコラージュがあって、最後にさあ家族で、お父さんが子供だっこしてツリーの上に☆(註10)つけてるわけ、あんだろ?あの金とか銀のやつ。でー、カメラが引くとその家の屋根にサンタが腰掛けてコーラのんで、一休みとかは、ダメ?(註11)ねえ。
P:いいじゃないっすか!これぞ王道(註12)って感じでコーラシズル出てますよっ!
PM:(心の中)あっりえねぇぇぇ~~!!!今時お父さんが抱っこしてでかいツリー。。。いつの時代だよ、古っ!!マジ、終わってる。
CD:じゃ、ちょっとそれ、お前、コンテにしといて、おれ別件あってこれから編集(註13)なんだよ。
PL:わかりました。で、できたらFAXしましょうか?
CD:んーん、机の上おいといてくれればいいや。じゃ、お疲れー。
PL:サンタの資料と、あとクリスマスのシーンの資料、ちょっとお願いできますか(註14)?
P:あ、もちろんです。(PMに)お前、帰ったらさがしてあとでお届けしろ。
PM:はい。
(帰りのタクシーにて)
P:しっかしさあ~、いまどき大きなツリーに飾りつけはねえよなあ(註15)。な?ダセェよなあ。
PM:でも、なんでプランナーの方も、言わないんでしょうね?仲よさそうだったけど、あの二人。
P:あー、あのヒトもこのCDと仕事すんの初めてだからさ(註16)、いろいろ気ぃ使ってんじゃん?
まだ若いしさ。
注釈
CCJC(註1)
CocaColaJapanCompanyの略。他にもTDL(東京ディズニーランド) T社(TOYOTA)などいろいろコードはあるみたいです。
シズル(註2)
その商品がもつ特性、世界観、雰囲気などをよくあらわす音や映像、シーンの総称。たとえば、青空、汗、青春なんかはコーラのシズルでした。(今もそうなのか?)
トクベツ感とかマジック感(註3)
つまんない広告にちょっとしたアクセントを加えるときや、クライアントの言いなりになるのが悔しくてなんとか抵抗を試みるときに使う言葉。用はちょっと変なこと目立つギミックを使うこと。
トンマナ(註4)
トーン&マナー。広告の基本中の基本用語。クライアントの持つ好みやイメージ、テイストのこと。
いくら面白くても、かっこよくても相手のトンマナにあってないものは受け付けてもらえない。といいつつ、日本のクライアントはそんなにトンマナについて自分たちでもわかってないので、実はプレゼン次第なのかもしれない。
共感(註5)
よく使われる言葉。視聴者が共感するかしないかがポイントと言われてきた。今、なんのCMに共感してますか?
+アルファ(註6)
で、共感だけだとかなり日常の一コマになってしまうので、ちょっとしたデフォルメをいれたり、用は
広告なんだから、印象に残すようなギミック。
なんかわかんないですけどー(註7)
口頭で身内にアイディアを言うときのヘンな謙遜の枕詞。よく煮詰まっていないアイディアや、コケたときのためにやんわりと「これが自分の100%の実力ではない」と言外に示す言葉。若手プランナーに常習者が多い。
コーラの化身(註8)
タレントやキャラクターなど、その広告のなかで商品以外のキーになるビジュアルになる人物やキャラはたいていこの役割を担っている。(といって、プレゼンを通すのである)
なんかわかんないけどさあ(註9)
最近ではCDも言うらしい。わかんねーなら言うな!
家族で、お父さんが子供だっこしてツリーの上に☆(註10)
2005年のクリスマス、この風景は日本に存在したのだろうか?まさに生徒手帳のようなイメージの押し付けであった。実際のクリエイティブチームの平均年齢が知りたい。
ダメ?(註11)
チームの中で最高責任者のCDがこれを言うときは聞いているわけではなく、『いいだろ?』といいたい場合が多い。しかし、本当に自信のないCDもいる。じゃあ、ダメっていったら下げるのかといえば、たいていは「じゃあ、お前考えろよ!」と逆ギレされることがあるので注意。
王道(註12)
マンネリの別称。大きくあたらないけど、大失敗もしない。クライアントも8割は安心。
編集(註13)
といっても、実際に手を動かすのはエディターさん。後ろのソファで見てるのが仕事。でもたまーにチラッとみて、あとは雑談してるのが実情。
サンタの資料と、あとクリスマスのシーンの資料、ちょっとお願いできますか(註14)?
自分でやれ!プランナーなんだから!
いまどき大きなツリーに飾りつけはねえよなあ(註15)
その一言、わかってるならなぜ言わない?って、言えないんだよね。これが。
このCDと仕事すんの初めてだからさ(註16)
社内でも気を使いあうやさしい業界です。あなたのそのやさしさがつらいの、スケジュール的に。そんな時もありますね。