3つの目録形態のうちの一つ、「カード目録」が公共図書館から消えて久しいですが、図書館の端末OPACで利用できるデータの作成方法はカード目録を下敷きになっているため、理解しておくことは必要と演習で先生がおっしゃっていました。
【カード目録 card catalog】
a) 利用された中心的な時期:
19世紀後半から1960年代。
b) 時代背景:
・出版数の増加。公共図書館の普及。
・1876(明治9)年、米国の司書カッター(Charles Ammi Cutter)による提唱。
・1901(明治34)年、米国の議会図書館(LC: Library of Congress)が印刷カードサービス開始(終了は1980年頃*)カード目録は主に米国で主流に。
c) 役割・機能:
検索、ファインディングリスト。
d) 特徴:
・米国で書誌記録の中心的な形態。記載内容は、記述、アクセスポイント、所在記号。
e) 標目:
主に、著者、主題。
f) メリット:
・冊子体目録のデメリットである加除修正が容易。
・複数の標目(著者名、タイトル、件名、分類記号など)から作成可能。
g) デメリット:
・カードの配列に手間がかかる。
・カードの増大・劣化で維持費用がかかる。
・カードケースのスペースが必要。かつ運搬困難→図書館に行くことが必要。
h) 作成方法:
・手作業から機械印刷したものの供給を受ける方法に変化(米国では議会図書館が運用の中心)。
i) 作成ルール:
細かい目録記述や記入法については図書館ごとに異なる。
j) 利用者:
図書館でカードを直接見て検索する。
k) 日本の例:特記なし
「利用者の検索の便に応えるにはカード式でどや!」と米国人に主張されても、冊子体を苦労して更新し続けていた欧州の図書館司書はゲンナリしたことでしょう。というわけで(たぶん)カード目録は米国で運用されたものの、欧州での盛り上がりはそれほどでもなかったようです。米国での様子はこちらに掲載の写真です。
もはや執念。これだからやりたくなかったんだよ、と欧州では言っていたに違いありません。
では「日本は?」に答えてくれる記述はテキストにはあまりなく、司書通信の勉強中は調べる余裕もありませんでした。次の論文によると、明治期からカード目録は議論されていたようです。
今野創祐. 明治期日本の目録を巡る学説史. 日本図書館情報学会誌. 2019, vol.65, no.4, pp.147-161.
全文掲載あり:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/toshokankai/71/1/71_2/_pdf