レファレンス業務の存在、必要性、どのような形で、どこまで提供するべきかということは長い間議論されてきました。テキストで紹介されている理論(考え方)の流れを次にまとめます。※カッコ内:テキストで紹介された論文の発表年。
1. ランガナタン「図書館学の五法則」(1932年)
第4項「図書館利用者の時間を節約せよ」は、現在のレファレンスサービスの重要性を指摘した先見の明のあるもの。
2. レファレンスサービスの起点:発生と提供の形
◆ウィリアム・ワーナー・ビショップ(1915年)
図書館の発生時点から何らかの人的援助の形で行われてきた。→大昔からあるってこと。
◆サミュエル・ロースティン(1955年)
歴史的自然発生的なものではなく、社会的背景によって要請された時点で発生。組織された計画的な業務として行われた時を起点とする。→比較的近代的なサービスってこと。
3. レファレンスサービスの定義【人的援助論】
◆サミュエル・スウェット・グリーン(1876年発表)
1)利用者が必要な資料を提供:答えそのものを提供することではない。
2)利用者教育の必要性:質問に対する回答を利用者が自ら見つけ出せるように。
3)系統的な読書相談:読書相談に応じ、図書リストや読書コースを示す。
《位置づけ》人的援助の考え方は多くの図書館に継承され、「利用者援助」と呼ばれた。その後の体系的な参考業務に発展していく基礎となった。
4. レファレンスサービスの定義【保守理論】
チャイルド(1891年)、デューイ(1900年)、ダナ(1911年)と保守理論が展開される。集大成としてビショップの理論がある。
◆ビショップの理論(1915年)
1) 回答や情報そのものの提供を否定。
2) 教育的機能(指導的機能)を重視。
3) 媒体的機能の重視と、そのための図書館的技術や知識の経験の重視。
《位置づけ》図書館業務と利用者の立場を明確に区別。保守理論の集大成。
5. レファレンスサービスの定義【自由理論】
ワイヤーが保守理論を批判して自由理論を初めて提唱(1933年)。ロースティンが自由理論を体系化。
◆サミュエル・ロースティン
1) 図書館員の専門性を尊重し、信頼という前提の基で、情報を直接提供する。
2) 研究者は、情報の入手こそが一番重要であることから、十分配慮して提供する。
3) 提供情報の適切性の観点から、主題専門家としての図書館員の存在が必要である。
6. 現状
現実には、保守理論と自由理論を混合した形で展開されている。どちらの比重に重きを置くか、図書館の館種や規模などによって異なる。高度情報化社会に伴い、ますます主題知識が要求される。
「理論」と言っても自然科学を中心とする数字の世界とはだいぶ違うものだなあと思います。
手取り足取り教えることが利用者に喜ばれる場合とそうでない場合、研究者が特定のデータと出典さえあれば良いという時もあるでしょう。個別対応が当たり前になっている世界から見ると、どちらであるべきかという議論は不毛に感じますが、何かを決める時は基礎的な議論や仮定も必要ですよね。
母「今日の夕食何がいい?」→「カレーとスパゲティとどっちがいい?」
子「なんでもいい〜。」→「カレー!」