田んぼのそばを走る一段高いコンクリートの上を歩いているAくんを、何の前触れもなく突然田んぼに突き落とすボス。「うわぁ~っ!!!」と頭から田んぼに落ちて行くAくんをすぐ傍らで目撃した私。「あっ!」一体何が起きたのか一瞬分からなかった。
グシャグシャーッ!(田んぼに落ちる音)
Aくん:「な、なにするんだよー!いってェー(涙)」
ボス:「す、すまん・・・だ、大丈夫か???」
泥んこになったAくんが田んぼから這い上がってきました。頭から田んぼにダイブするというハプニングにさすがにボスも動揺を隠せず、自分で突き落としたくせに真剣にAくんをいたわっていました。幸いAくんはかすり傷程度で済んだので(収穫後の田んぼなので水は無かった)、ハラハラしながら見ていた私たちもホっとしました。一方で、たまたまAくんが今回のターゲットになったというだけで、もしあのコンクリートの上を歩いていたのが自分だったら・・・。そのことを考えるとゾーっとする。一緒に歩いていたクラスメートの無言の表情にそんな穏やかならぬ心境が見え隠れしていました。
後日クラスの思い出文集の中で、Aくんを田んぼに突き落としたことを明け透けに描写したボスの作文を見つけ、こういう追い打ちをかけるようなやり口に本当にゲンナリしました。「サイテーなヤツ!」と思ったのは言うまでもありません。イベントに参加したくないと言えばどつかれる、参加したら田んぼに突き落とされるという逃げ道の無い選択肢。当時のクラスはいろんなトラブルの温床になっていましたから、「今日もいやなことに巻き込まれるんじゃないか」と学校に行くのが本当に憂鬱でしかたがなかった。子どもの世界における上下関係は職場のそれよりもキビシイなものになったりすることがありますよね。それでもどうにか乗り越えてきたのです。
さて、フルマラソンの距離を歩くというイベントのほうですが、時間の経過とともに私とAくんのコンビは次第に足取りが鈍くなりはじめ、ついに集団から脱落、ゴールに到着する前にすっかり日が沈んでいました。後ほど私は知ることになったのですが、「こう日が暮れてはもうゴールする参加者もいないだろう」と判断したイベント事務局は、会場の撤収作業を始めていたそうです。それを担任の先生が事務局に無理を言って会場の撤収作業を一時中断してもらい、私たちが到着するまで他の父兄らとともにゴール前で待ってくれていました。日没後の暗がり中、照明により明るく浮かび上がったゴール前、歓声とねぎらいの声援の中でようやく私とAくんが到着。なんだかとても照れ臭いような、申し訳ないような。そのときの先生方や父兄たちの温かさ、やさしさを思い出すと、今でも胸に込み上げてくるものがあります。本当にありがたいことだ。
こうして首の薄皮一枚を残してかろうじてイベントをクリアしました。12時間近く歩き続けたのではないでしょうか、予想以上に足の筋肉に負荷がかかっていたようで、イベント終了後一週間ほど両足が棒のようになりました。とくに階段の昇降がキツく、旧式ロボットのようにガクガクした動作になっていました。イベント参加のいきさつからイベント終了まで文字通り山あり谷ありの険しい道のりでした。しかし、この年齢になって回想してみるとマンガみたいでとても懐かしい思い出の一つになっているんですよね。どこかズッコケ三人組の世界に近いのかな?
ところで、この42.195kmを歩くイベントに参加したことでクラスは団結は深まりましたか?
とんでもない!!
(終わり)