理佐side



待ちに待っていたような、それでいてどこか恐れていた土曜日がやってきた。朝から体が落ち着かず地面から常に浮いているような心地がする。



仕事は元から入っておらずオフだったため時間まで家で過ごす。



逸る心臓の鼓動と無意識に上がっていく口角を宥めようと緑茶を淹れてテレビを眺める。集中しようとしても視覚も聴覚もすべて安っぽいバラエティの上をなぞってすり抜けていく。



その時またLINEの通知音が届いた。どことなく投げやりにスマホを引き寄せて通知欄に目をやった瞬間思わず間抜けな声が漏れる。



"小林由依"



──待って待って待って

慌てて内容に目を通す。

「ごめんインタビュー入っちゃって30分くらい遅れてつく💦」



最初に浮かんだ驚きもそれを遥かに凌駕する喜びに飲み込まれていく。どうして私に?と一抹の困惑を胸に宿しながらも言葉にならない想いごとスマホを抱きしめる。



なんて返そう?やっぱサラッとクールにの方がいいのかな?でも冷たいと思われるかな?目まぐるしく頭を回転させていると胸の中のスマホがブブッと何度か震えた。



齋藤冬優花╏了解〜!頑張ってね💪

尾関梨香╏お店先行っとくね!



思考停止した脳が少しずつ冷静さを取り戻していく。LINEを起動させると"1期生飲み会🍻(9)"という名のトークルームの未読件数の数字が増えていくところだった。



バタンと音を立ててソファーの背もたれに倒れこむ。



分かってたことだ、こばが私個人にこんなLINE送るはずがないじゃないか

そう頭で分かっているはずなのに心が冷えていくのが感じとれてしまってイラつく。私以外の7人がスタンプやら一言やらを送ったのを流し見した後、私は何も反応せずトーク画面を閉じる。



トークの1番上にピン留めされてるこばとのトークは卒コンの何日か前の事務連絡で終わっている。卒コンの後に何もやり取りを交わさないのは最強シンメの私たちらしいよね、と意気地のなさを尤もらしい言い分で誤魔化すのも何度目だろう。



気づいたら日も落ち始め、出掛けるのに丁度いい時間になっていた。

切り替えようと小さく息を吐く。さっきので崩れたヘアセットと服のシワを整え、グズる心に喝を入れて家をあとにする。



今日はこばと一言でも話せればそれでいい───。






由依side



朝から個人での仕事が続き、やっと一息つけたところでマネージャーさんに声をかけられた。



「こば〜、この後雑誌の取材入っちゃったけどいける?」



瞬時にこの後の集まりが頭をよぎったが仕事が最優先に決まっている。マネージャーさんに了承の意を伝えてLINEを開く。



トークを開き昨日ふーちゃんが作ったまま使われていなかった"1期生飲み会🍻(9)"を開く。9人の中にいる理佐のアイコンをそっと指でなぞりそっとため息をついた。



「ごめんインタビュー入っちゃって30分くらい遅れてつく💦」



理佐に会える時間が短くなってしまうことは悲しいがどうせ会えても話せないどころか目も合わないことがしょっちゅうだ。ちょっと遅れていく方が理佐の意識には残りやすいかもしれない、などと考え始めた救えない思考回路はきっと、疲れているだけだ。



次から次へと送られてくるメンバーからの励ましに感謝しながらも私が待っているのはきっと1人だけで──。



通知がやんでもまだ淡い期待を捨てきれずに画面を見つめているとパッと"既読7"の文字が"既読8"に切り替わった。



慌ててトークを閉じて待つもそれ以降スクリーンに光が灯ることはなかった。



わざわざ何か返さなきゃいけない内容でもないしな

そんな思考が浮かぶ時点で少なからず自分はショックをうけているのだろう。何年もかけて何も期待しないことに慣れてきたはずだったのに会えない時間が長くなるにつれてどこか欲張りになっていたのだろうか。



弱気になる心を無理やり奮い立たせて呼びに来たマネージャーさんに返事をする。



今日は理佐と一言でも話せればそれでいい───。






この前のTGC、りさぽん前後で思わず声が出ました!🙈
ツーショまだ待ってます、、
これからも更新頻度低めだと思いますがよろしくお願いします〜