プリズンブレイク | Keyaki

プリズンブレイク

空港内にはもちろん日本人観光客もいて、俺を指差して「ねぇ、あれ日本人じゃない?」なんて言っているのが聞こえる。

うつむく必要もないので、係員に連れられながらも堂々とむしろ威嚇気味に歩いて空港を出た。



空港の外には1台のワンボックスカーが待機していた。

一見普通のファミリー仕様、係員が「頭に気をつけて入れ」といってドアをあけると、中は鉄条網が張り巡らされていた。

箱の中に更に箱がある感じ。



乗り込むと手錠を外された。

ドライバーが「これから別の人間をPickUpするので、宿泊地に着くのは3時間ほど後だ」と言う。

わお!またこれから3時間もかかんのかよ。

今日朝に空港に着いてからというもの、待たされっぱなしだ。

でもまぁ俺が怒ろうが騒ごうが冗談いいながら明るく愉快にやろうが状況は変わらないわけで、オレに関わる全ての係員達もただの雇われた職員で、淡々と任務をこなしているだけなわけで、コレはもう成り行きに任せるしかない。



車に乗り込んでから外の景色を眺めていると、牧場や古い家が見えてきた。

懐かしいな、去年ドライブでグラストンベリーに連れていってもらったなぁ。

そういえば名前は忘れたけどLONDON郊外の何百年前の古い町並みが残るところへも、典子のお世話になっているご夫婦に連れていって頂いたなぁ。

あの鮎のいた小川は綺麗だったな。行きの途中のランチでのビールが旨かったなぁ。

あれが人生初のPUBでのFish&Chipsだったな。



ああ、これからどこに連れて行かれるんだろうな~。

宿泊施設ってどんなとこだろう。空港の係員は”安いホテルみたいなもんだ”って言っていたな。ということは外出はできるのかな。タバコくらい買いに行かせてほしいな。

腹も減ってるし周りにケバブ屋があったら買いたいな。

ケバブ屋でホットチキンウィング買おう!4本入って1ポンドだもんな。そしたら間違いなくビールもいるな。

これまた1ポンドのフォースター買おう!全部で2ポンドだもんな。電話も借りてガク(去年LONDONでのジャンベの生徒であり、友人)に来てもらおう。そしたら飲めるもんな。最悪外出できなくてもそこに来てもらえばアイツに会えるな。

うん、なんとかなるな。




なんて妄想を繰り広げている頃、車はLONDONの街中へ入っていった。

しばらすると見覚えのあるボウチャーチの交差点、ここからガクの家は歩いて1分だ。

ガク、ごめんな、心配してんだろうな。朝空港に着くっていったのにもう夜の9時過ぎだもんな。でも後で電話するからな。

車は見覚えのある通りを進み、テムズ川の下を通る。

あぁここはヒデに送ってもらった時に通った道だな。

ヒデ元気かな。Doblyとセッションしたかったなぁ~。

車は更に進み、テムズ河沿いへ進む。車内の鉄格子の間からロンドンアイが見えてくる。
あぁ、去年はあそこにお世話になったな。影絵のおじさんはまだいるのかな。酔っ払いのチムニーはまだ踊ってるかな。Fredはあ相変わらずナンパしてんのかな。本当なら今頃あそこで演奏してたのにな。

すっかり暗くなったテムズ河は、観光のLONDONバスやら黒タクシーやら、街のライトに照らされて、きらきら反射していた。周囲のレンガの建物達がまた良い雰囲気を出していた。




車は更にすすむ。そのあと更に見覚えのある街のなかへ入っていく。

そして街中の警察署を2件はしごし、車内の護送者は俺を含めて3人になった。

車は再び高速道路に乗った。

LONDONの街から1時間くらい走ったころだろうか。ヒースロー空港の看板が見えた。

ヒースローにいくのか?なんでだ?戻りの飛行機はヒースローからなのか、はたまた飛行機のせられて別のとこにいくのか?


道は暗く広かった。

空港に近づくにつれて、周りには高級そうなホテルが見えてきた。

なんだ?宿泊施設ってホテルか?でもなんでこんな高級ホテル?
あぁ、入国できなかった人に対してせめてもの慰めでホテルに泊めさせるサービスか?





勘ぐる。いろいろ勘ぐる。





すると車はホテルエリアを通り過ぎて、倉庫街のようなエリアへ入っていった。

あたりは今までより一層暗く。なんか不気味だ。

そのうちその倉庫街も通り過ぎる。






すると4階建てくらいの大きな建物郡が見えた。

「降りる準備をしろ」と係員。

一つの建物につく。見上げると壁はフラットで高く、壁の上部には何重もの鉄条網。窓という窓は鉄格子で埋め尽くされている。

鉄のゲートがゆっくり横に開いていくと車ごと建物の中に入っていった。

なかに入り、また次の鉄の扉を抜ける。敷地内はいくつもの鉄のゲートがあり、車にのったままゲートをくぐる。

6回ほどゲートをくぐった後、無機質な扉の前で降ろされた。




車を出て、中に入るように促される。午後11時。建物から漏れる明かりが冷たかった。




待合ロビーのようなところに集められた。他にも同じ境遇であろうもの達が8人くらいいた。

建物内の職員達は全て命令口調で高圧的だった。それぞれ一人づつ看護士の診断を受ける。その後別室に一人づつ通された。乱暴な職員が乱雑に荷物を全てあけ、中のものを小袋に小分けにされた。


荷物を取られ、自分の着替えと洗面用具を持った。ラップトップや携帯はダメだったが、本やノートは所持を許された。


荷物と検診が終わった者からひとりづつ、奥の扉へ消えていく。


俺は列の最後のほうだったのでかなり時間がかかり、自分が奥の扉へ行く頃は深夜2時をまわっていた。




職員に付き添われ、奥の扉をぬけてそこから建物内をかなり歩いた。途中上下したり外に出たり、完全に自力では戻れないと思った。




一つの建物に入った。「ここだ」と職員がいった。




入ると、それはどこかでみたことある光景。



1階から3階まで吹き抜けになっていて、1階はテーブルが並び、その食堂?を囲むようにして鉄の扉が並んでいる。

真ん中に階段が一つあって、そこから上階にいくようだ。

奥には食事は配給するようなカウンター。1階から2階と3階の鉄の扉も見える。窓はなく、白く冷たい電灯が薄暗くひかるのみ。






こ、これは・・・。






プリズンブレイクでみたやつだ!!!










〈続く〉